■認知症を知ろう5■
前回までで認知症の人には
必ず起こると言われる
「中核症状」について説明しました。
今回からは
「行動・心理症状」、周辺症状、BPSDと
呼ばれるものです。
こちらは認知症になった全員に
起きるものではなく、
その人の持って生まれた気質や、
その人を取り巻く環境などによって
引き起こされると言われています。
「中核症状」
「行動・心理症状」
という文字だけを見たら
「中核症状」のほうが大変そうって
イメージを持ちませんか?
でも実は違います。
たとえばおばあちゃんが
徘徊して行方不明になってしまった。
おじいちゃんがすぐに
暴力を振るう。
そうした具体的な症状は
ほとんどが「行動・心理症状」に
当てはまります。
中核症状と行動・心理症状というのは、
リンクしている部分があって、
たとえば
「見当識障害」という
「中核症状」がある人が
「徘徊」という
「行動・心理症状」を起こしやすい。
といった具合です。
うつ病との関連性
認知症の初期の頃というのは
うつ状態になる人がけっこういます。
それまで元気に外出していた人が
突然閉じこもり気味になったり、
何もしなくなってしまったり。
原因には二つ考え方があると
言われています。
ひとつは
「物忘れなど自分の能力の低下を自覚し、
将来を悲観してうつ状態になる」
もうひとつは
「元気や、やる気が出ないということも
すでに認知症のひとつである」
どちらも正しいのかな、
とは思います。
気をつけなくてはいけないのは
「誤診が恐ろしい」
ということです。
閉じこもりがち、
やる気が出ない…
そういう症状の患者さんがきたら
お医者さんはまずうつ病を疑います。
そうするとうつ病の薬だけが出て、
認知症の薬は出ないということも
じゅうぶんありえるのです。
実際にそういう方がたくさんいました。
もっともこれだけ認知症が
話題になっているのですから
患者さんが80代とか高齢ならば、
医師も認知症かな、と
思ってくれるとは思います。
しかし認知症には
「若年性」というタイプがあって
50代でも60代でも、
なる人はなりますからね。
おかしいかな?
と感じたときは専門医や、
ある程度認知症への理解がある
医師を探して受診することをおすすめします。
将来の望みを失うと
本当にうつになる
誤診などではなく、
認知症をきっかけに
本当にうつを併発してしまう方も大勢います。
先ほど述べたように、
自分の能力が低下してくるというのは、
とても恐ろしいことです。
認知症の人は自分が認知症なんて
思ってないでしょ?
気楽なもんでしょ?
そう思う人が多いかもしれません。
確かに中~重度の認知症の人は
そういう傾向も強いです。
しかし初期は違うのです。
「あれ?最近、自分が変だぞ?
物忘れが多くなりすぎてるぞ?」
それに一番最初に気づくのは
知人でも家族でもありません。
本人自身です。
おそらく僕も、
これを読んでいる方々も
もし将来自分が認知症になるとしたら
その症状に最初に気づくのは
自分だと思ってください。
今までできていたことが
じわじわとできなくなり、
覚えていたことを忘れていくんです。
残酷な病気だと思いませんか?
気のせいかな?
良くなるかな?
なりません。
むしろ悪くなっていきます。
認知症かな?
いや違う!
そんなはずない!
自分が間違ってるはずがない!
まわりのほうがおかしいのでは?
と思うようになるかもしれませんし、
「こんなことでは生きてる意味がない」
と落ち込んでしまうかもしれませんね。
将来に望みを失って
うつ状態になってしまう人は
たくさんいるのです。
ですから周囲の人たちは、
できるだけ本人に恥をかかせないように
してあげる必要があります。
「できること」「できないことの見極め
「できることをやってもらう」ことは
非常に大切です。
そうすることで自信を取り戻したり、
少しでも自尊心を維持することができます。
しかし「できないことをやらせる」のは
大きな間違いです。
何ができて、何ができないか。
難しいとは思いますが、
慎重に見極める必要があります。
たとえば「頭のためだから」と言って
小学生用の計算ドリルなどを
認知症の方にやらせたがる人がいます。
確かに頭を使うことは大事なんですよ。
だからそれが間違ってるとまでは言いません。
しかし小学生レベルの計算が
当たり前のようにできる人にとっては
「こんな程度の低いものをやらされて…」
と自尊心が傷つきます。
反対に小学生のドリルが
できない人にとっては
「こんな簡単なものもできなくなった…」
とやはり自信を失います。
以前にDSの脳トレで有名な
川島先生が認知症の研究も
されているということで
講座を受けたときにも、
先生もおっしゃっていました。
「やらせればいい、
ということではない。
できないものをやらせたら
逆効果になってしまう。
できるかできないか、
ギリギリできる!
そういうものをやらせることが
達成感と共に自信の回復につながる。
その見極めは本当に難しいんです」
と。
周辺症状の具体例と対応
行動・心理症状のひとつわかりやすい例として
「排泄を失敗して失禁してしまう人」
がいるとします。
おそらく家庭で介護していて、
もっともオーソドックスかつ、
一番困るというかつらいのが
排泄のお世話です。
「またお漏らしして!」
なんて怒っちゃうのも、
わからないではありません。
回数が多いですからね、
人間の排泄は食事よりも
多いのです。
そのたびに振り回されるのは、
すごく大変だと思います。
さて、排泄を失敗する人というのは
主に3つの理由があります。
・トイレの場所がわからない
・衣服を脱ぐのに時間がかかり漏らしてしまう
・尿意や便意がない
理由があるということは、
解決法もないわけではないということ。
「トイレの場所がわからない」
↓
「目印となるようなものを作る、
夜間であっても電気をつけておく」
「衣服を脱ぐのに時間がかかる」
↓
「脱ぎやすいゴムのズボンなどにする」
「尿意や便意がない」
↓
「時間で声をかける」
あくまで一例であって、
これではおさまらないという人や
もっと別の理由があったり
それが解決困難な人も当然いるでしょう。
万人に有効な手段はありません。
ただし考え方として
「原因を探る」
「原因となっている部分を取りのぞく」
という思考を介護者は
身につけておいたほうが
あらゆる症状に対して
あわてずに考えられるようになると思います。
つづく