■報われる瞬間■
以前から時々書いてきた、
入院中に病院で騒いでしまうため
多量のお薬を飲むことになり
ほとんど寝たきりに
なってしまってから
グループホームへ入居した
要介護5の方。
本日、無事に金婚式のお祝いを
迎えることができました。
本当は市で行われる式典に
参加できると一番でしたが、
身体的にそれは難しく、
それでもご主人の
何かお祝いできないだろうかという
希望を僕も何とかしてあげたくて、
市役所に無理を言ってお願いをして、
特別にお祝いを持って
ホームへ来て頂きました。
元々は市長さんが
乗り気になってくださり、
直接来てくださると
おっしゃっていましたが、
どうしても会議が入ってしまい
代理の方になりました。
それでもそのご厚意は
とてもありがたかったです。
この日のために色々と
準備もしてきました。
普段あまり見ないような、
晴れ着に着替えるお手伝いをし、
若い女性スタッフが
お化粧もしてくれました。
それでもご本人はいつものように
「アー!!」
といわゆる奇声のような声を
あげたり、
ご主人に対しても
「こんな悲しい日はないわよー!」
とよくわからないことを
訴えたりしていましたが
いざ市長の代理の方がみえて
表彰してくださると
「わざわざ私たちのために
すみません、
ありがとうございました…!
とてもうれしいです!」
としっかりお礼を述べられました。
その姿を見ていた
他の利用者さんは感動の涙。
そしてスタッフも
「私たちの仕事は、
こんなこともできるんだ」
と涙していました。
ご主人は
「本当に病院を出て、
ここを選んで良かった!
病院にいたときはね、
もう去年の間に死んでしまうと
思っていた。
看護婦さんにいつまで持ちますか?
って何度も聞いたんだよ。
それがこんな日を迎えられるまでに
なるなんて…
こんなに感動した日はない、
ありがとうございました」
とおっしゃってくださいました。
正直なところ、
本当に平坦な道のりでは
ありませんでした。
昨年入居された時点では、
口から食べることが困難なので
病院から出たとしたら
もしかしたら数週間すらも
持たないかもしれないと
医師からも言われていました。
絵を描きたいと
意欲を見せ始めた頃から
やや好転はしてきましたが、
じょくそう(床擦れ)も
出来てしまいました。
じょくそうは介護の恥、
という極端な言葉もありますが、
実際のところはそう単純な話でも
ないのです。
この方の場合には、
心臓が悪いのでベッドに寝ると、
身体の血液が心臓に集まりやすく
なるために、
胸が苦しくなってしまいます。
そのために、
座っている姿勢のほうが
ラクなので、
出来るだけ座っている時間を
増やしてあげたほうが良いと
医師からも言われていました。
ですが、むくみもあって
体重がかなりあったことと
まだ精神薬の影響が残っていて
自ら動くことが難しいので
車椅子に座っていると
特定の場所に負荷が
かかってしまい、
そのせいでじょくそうに
なってしまったのです。
心臓が悪いということは、
血液が栄養をうまく体に
運べないので、
もちろん栄養状態が悪くなります。
じょくそうは栄養状態が悪いと
出来やすくなり、
そして治りにくくなるのです。
せっかくある程度回復してきて
口から食べられるように
なったのに、
実は病院で寝たきりで
毎日点滴だらけにされていた
ときのほうが、
栄養状態が良いという有り様でした。
つまりはこの方は寝たきりを
脱したことにより、
かえって健康状態は悪くなった
というわけです。
これにはずいぶん悩みました。
何を持って「生きている」と
するのか。
ほとんど目を開けることもなく
しゃべらず、
口からは食べない。
けれど点滴で栄養を得ている。
だから実は健康。
しかしそれが生きている姿なのか?
反対にたくさん好きな物を食べ、
会話もし、認知症による大騒ぎも
あるくらいに元気なのに、
実は栄養不足で危険な状態。
生きているのかもしれないが
死に近づけているだけなのでは
ないのか?
単なる僕の自己満足に
なっているんじゃないのか?
僕を支えてくれていたのは
ご主人からの、
「あなたを信じてる。
だからこれがどんな結果になっても
私は満足なんです。
病院では何かを試すことすら
できなかったから」
という力強い言葉です。
それがあったからこそ、
医師ともしっかりと連携をし、
さまざまな方法を試し、
あらゆる工夫が出来ました。
いまではあんなに大きかった
じょくそうはほぼ完治。
血液検査の結果も改善。
もはや言うことなし、
強いていえば大騒ぎは
相変わらずですが、
むしろこれがこの方の個性でも
あります。
もちろんこの方だけに
かかりきりになれていたわけでは
ありません。
その間にも暴力や徘徊がひどく
市で対応しきれずに
困っていると相談を受けた方も
受け入れましたし、
突然亡くなった方もいました。
昨年末頃から5人くらいの
入退居が重なっていて、
いまだに正月休みすら
消費しきれていないのです。
それだけ働いても働いても
本当に様々なことが
毎日起きていますので、
僕一人では何も出来ていません。
すべては協力してくださるご家族、
連携を取ってくださる医師、看護師、
そして僕の目指したいことを
理解してフォローしてくれている
スタッフたちのおかげです。
そうした多くの人たちの
努力と苦労が、
こうやってどこかで実を結び、
ひとつの奇跡が起きる瞬間。
そのときに見せてくださる
本人と家族の笑顔を見ると
本当に報われたな~と感じます。
その瞬間が毎回来るわけでもなく、
すべてのケースを良くできる
わけでもありません。
それくらい認知症介護の現実は
厳しいのですが、
それでもまずは信じることから
始めれば何かのきっかけになり、
誰かが投げずにやり続けることが
奇跡を生むのだと思います。
それが最低限の努力なので、
これから先も全力で続けようと
思います。