■利用者一人での外出の是非■
グループホームに入居している方が
一人で買い物に行きたいと言ったら
どうしますか?
おそらくほとんどの施設がNOと
言うのではないでしょうか。
「そんなことして何かあったらどうするんですか!」と。
危険ですからね、
そう言いたくなるのもわからないわけじゃ
ありません。
でも俺はできるだけ意向に沿ってあげたいです。
研修でもそんな話題が出た時に、
先生は「良いじゃないの」と賛同してくれましたが、
ほとんどのケアマネさんはそれはこわいから…
と躊躇していました。
しかしこの
「何かあったらどうする?」
という言葉、考え方がどれだけ利用者の能力を奪い、
尊厳を傷つけていることか。
外出をして何かある=事故などに巻き込まれる確率は、
まず健常者であってもゼロではありません。
これが高齢者でなおかつ認知症の方だと、
その確率は跳ね上がるでしょう。
だから外へ行ってはいけない?
施設は牢獄なんですか?と俺は思うのです。
一度入ったら二度と自分の意志では
外へ行かせてもらえないなんて
もし自分だったら恐ろしい場所です。
もちろん誰でも彼でも良いとは言えません。
その人の病気の症状、認知症の度合い、
さらには家族の理解、
これらすべてが外出しても問題ない状態と
判断できねば、簡単に許可はしづらいです。
そういう条件を満たせる人が
現実に何人いるかといったら、
正直なところ数十人みてきて
一人か二人です。
でもね、初めから可能性を排除していたら、
その一人や二人すらいなくなってしまうんです。
もちろんスタッフがついていってあげられれば
それが無難なのかなとは思うんですが、
そうはいってもどこも人手が少なく、
利用者一人にスタッフ一名を確実に使われるのは、
正直言って厳しいという施設がほとんどでしょう。
さらには利用者本人が、
「ついてこなくていい、一人で行くから」
ということもあります。
このあたりは声かけの工夫次第でもありますけどね。
「心配だから一緒に行きます」
などと丁寧な言葉で言っていても、
要は利用者からすれば「監視されてる」ことは
うすうすわかります。
でも
「俺もそのお店に用があるから
一緒に行きますか?俺が運転しますよ」
と言えば
「おお、ありがたいね!じゃ一緒に行くかい!」
となるんですよね。
そこはスタッフの技量が問われるところです。
それでもどうしても一人で行きたい人はいるし、
それって人間としては当たり前というか、
誰しも一人になりたい、自分で好きなものを買いたい、
そういう感情があるほうが普通なんです。
そんなときにグループホームとして何ができるか。
先ほど述べたようにまずは、
その方が本当にそれができるだけの力を維持できているか、
ちゃんと判断をする。
そして家族に対しては
「危険もあるかもしれないが、
本人の希望もかなえてあげたい。
それができる能力はあると思います。
しかしそこに生じる危険について、
完全にゼロにはできないことを理解していただけますか?」
とちゃんと伝えて、許可を得ているか。
もしそこで家族がそれは困る、
というのなら無理強いはしません。
何かあって入院になってしまった、
あるいは命を落としてしまったときに、
一番大変なのはスタッフではなく家族だからです。
それでもスタッフの思いを無理やり通すのは、
ただの自己満足でしかありません。
そして一番大事なのは、
地域の協力を得ることです。
いくら現時点では一人で外出できる能力があっても、
認知症というのはある日突然、
昨日できていたことができなくなります。
そのためにもスタッフ以外の人たちの助けが
必要なんです。
グループホームが
「地域密着型=原則、市内の人しか受け入れない」
ことを有効に活用すべきです。
利用者の行きたい場所というのは、
たいてい限られています。
以前、グループホームでも
毎晩晩酌をしている人がいて、
お酒がなくなるとタクシーに乗って、
なじみのお店へ一人で買いに行く人がいました。
その方にどう対応したかといえば、
まず先ほど述べたように
本人の能力をじゅうぶんみて
それができるであろうということを確認する。
家族にも了解を得る。
そしてよく使うタクシー会社や、
なじみのお店にも伝えておくということです。
「○○さん、認知症が出てきて
今は施設にいます。
外出の際は可能なときはスタッフも
ついていくようにしますが、
それでも一人で行かれることもあるかと思います。
その際は、ずっとつきっきりでなくてもいいから、
ちょっと声をかけてあげるようにしてください」
こうして伝えておけば、
イヤだという人も少ないです。
しかし再三述べているように、
見極めは本当に必要ですよ。
たとえば最近、
こんなことがありました。
ある利用者さんが外を一人で歩いているのを
たまたま併設の診療所の事務員さんが
見つけてくれました。
連絡を受けたのでスタッフに確認すると、
「いや~外で布団干したあと勝手に
行っちゃったんですよ」
と。
ハァ?と思いましたね。
確かにその方は足腰にはほとんど不自由もないし、
一見比較的普通です。
しかし入居のきっかけになったのは、
徘徊中に警察に保護されたんですよ。
しかもピック病なので万引き騒ぎを
起こしてしまったこともあるし、
そもそも70代になってからうちの市に
引っ越してきた方なので、
土地勘はほとんどありません。
当然のことながら
「元気な方だから勝手に出ていっても
そのうち戻ってくるでしょ」
なんて通じないんです。
そういう本人の状態や、
生い立ち、入居に至る流れは、
以前にも書いたように俺はすべて記録してます。
スタッフにも自由に読んでいいと伝えてます。
なぜ暗記してその人に合わせて
対応しないのか非常に疑問です。
とまぁこんな感じで、
何もうちの施設がうまくやってるなんて
言えるわけではありません。
それでも可能性を排除しない介護を
できるだけしていきたいと思います。