■人間には歴史がある■
認知症の周辺症状には、
多くの家族たちが
苦しめられています。
だからとくに初めて家族と
面談したりすると
とにかく何が困っているのか、
そんな話に終始してしまいます。
もちろん毎日苦しい日々を送っている
わけですから、
それを聞いてほしい!
というお気持ちは
よくわかります。
だから家族のケアという意味で
そういう話にもじっくりと
耳を傾けるようにはしています。
しかし、こと本人だけに限った話を
するならば、
そういうことは本人には
何の問題もないことだったりします。
なにせ自分が誰かを困らせている、
なんて意識はないのだから…。
また、その利用者さんの
何が困るかというのは、
実は家族のお話を聞かずとも
入居して数日も経てば、
ある程度わかってきます。
だから初回にそんなに時間を
割かずとも、
我々介護スタッフはどうせと言っては
なんですが…
やがては身を持って
知ることが多いです。
その人がどんな風に困る人なのかは
比較的簡単にわかる、
ということです。
だけどその人がかつて、
どういう人であったかまでは
我々にはわかりません。
ですから、俺が初回の面接で
聞きたいのは、
その人がいま何が困るかよりも、
その人がどんな人だったかです。
困る話より、
困ってなかった頃のことが
知りたいです。
そんなことを知って何の役に立つかと
思われるかもしれませんが、
実は大いに役に立ちます。
なぜなら周辺症状というのは、
その人の性格や生活歴が影響して
症状を引き起こしていることが
多いからです。
例えばありとあらゆる服を
収集する人がいるとします。
その人は認知症になったから、
急に服が大好きになり、
集めたくなったのでしょうか?
違います。
大抵は若い頃に
服飾関係の仕事をしてたとか、
自分で家族に服を作ってあげていたとか、
そんな理由が存在しています。
理由がわかっても症状を
止められないことは多々ありますが、
何のヒントもないよりは、
対策も立てやすいです。
コップの水を床に捨ててしまう人は、
若い頃に外で仕事をしていて、
休憩中、水筒の水を飲んだら
すぐその場で捨てて、
また仕事に取りかかっていた人だった
なんてこともあります。
普通の感覚でみたらおかしいことでも、
その人にとっては、
何もおかしいことではないことも
また多いのです。
もちろん本当に困ることや、
他人に大きな迷惑になることは、
なんとかして防ぐことも大事ですが、
せめてその人がなぜそれをするのか、
それは考えてあげる必要もあると
思うのです。
認知症であっても、
相手は人間です。
人間には自分と同じように、
歩んできた歴史があり、
それは人それぞれに違います。
だからこそ、
その人の歴史、
その人を構成するありとあらゆる情報を、
できるだけ知りたいです。
無駄な情報などひとつもありません。
すべてがその人の歩んできた
貴重な人生の歴史であり、
そこから少しでも認知症を
軽減できる要素が見つかったら
素晴らしいと思います。