■認知症と恋■
平均寿命の差もあるのか介護サービスの利用者は、
男性よりも女性のほうが圧倒的に多いです。
そしてスタッフは男性のほうが女性よりも圧倒的に少ない。
そんなわけで男性スタッフというのは、
女性利用者にとってある意味特別な存在です。
デイで働いてた頃は、
元気な利用者が多いせいか、
本当にそのあたりは顕著でした。
もともと氷川きよしくんに似てるせいかはわかりませんが、
オバサマからオバアサマにはモテやすいです。
(それが良いのかどうかは知らんけどもw)
だからデイに来ているおばあちゃんたちにとっては、
ある意味アイドルのような存在ではいられました。
それは自分が仕事をするうえでは、
やりやすい部分でもあり、
たとえ上司や同僚に認められずとも、
目の前のお客様でもある
ばあちゃんたちが味方でいてくれるのですから、
かなり心強いわけです。
たぶん今の俺に至るまでを支えてくれたのは、
そんなおばあちゃんたち。
おそらく俺だけでなく、
この業界で働く男性は少なからず、
そういう恩恵はこうむっているかもしれません。
自分の気持ちの面でも、
誰かから特別に愛してもらえるというのは
モチベーションにはなりますし。
やはり自分を好きでいてくれる相手を、
なかなかキライにはなりません。
「あなたが迎えにきてくれて今日は朝から最高よ」
とか
「思い出にしたいから一緒に写真撮ってよ」
と言われたら、相手がばあちゃんだってそれはうれしいですよ。
バレンタインにもらうチョコも、
(たいてい賞味期限が切れてるとはいえw)
それだって心情的にはうれしいものです。
とまぁ、こんなことをいきなり書いているのは、
もちろん年寄りにモテる自慢話をするためではありません。
問題は、認知症という病気がそこに絡んでくる場合です。
たとえば上記のようなやり取りというのは、
あくまで双方向のコミュニケーションによって
成り立っています。
つまりそれは微笑ましい、
という言葉で済むような、
ある意味で大人の遊びです。
恋人ごっこ、アイドルごっこのような感じです。
お互いにちゃんとそこは役割をわきまえたうえで、
その瞬間のやりとりを楽しんでいるんです。
AKB関連の日記でも書いたかな。
釣って、釣られてくらいでいいと。
だけど認知症になってしまうと、
そういうことがわからなくなる人もいます。
つまり、本気で恋をされてしまうようなことが
じゅうぶんありえるのです。
たとえば仮眠をしていてふと気づいたら、
あるおばあさんが手をぎゅっと握っていたとか、
就寝介助でベッドに寝かせようとしたら、
「一緒に寝よう」
と抱きついてきたとかね。
けっこう生々しいかもしれませんが、
これもまだ微笑ましい、
可愛いで済むエピソードかなと思います。
というより、この程度ならしょっちゅうですし…
問題は、愛情の強要といいますか、
半狂乱のようになってまで優しくしてくれることを、
望んでくるような方もいたりするのです。
そこまで行くと恋だとかいうより、
強依存なのかなとは思いますが、
「もっと私に優しくしてくれなきゃ自殺します!」
とまで言われたりしたこともあります。
というか、実行しようとする人まで。
いろいろ個人情報に関わるので、
あまりくわしく書けないんですが、
けっこう信じられない状況というのも、
何度か目にしています。
ちょっとストーカー的ですよね…
ストーカーの人の発想っていうのも、
脳の病気なのかなとは思ってるんですが、
認知症も脳の病気なので、
愛情のコントロールは難しいんだろうなと思います。
今回はあくまで男性からの視点で書いてますが、
女性スタッフだってそういう経験をするだろうし、
そしたら女性はもっと恐怖を感じるんだろうなと思います。
もっと露骨なセクハラだってあるでしょうね。
介護スタッフというのは、
いろいろな役割が求められます。
「俳優になりなさい」
と教わったこともあります。
ときにはスタッフ、ときには夫、ときには息子、
ときには恋人…
とくに認知症の方に対しては、
相手の求める役割を演じてあげるほうが、
症状が落ち着くことも実際に多々あります。
だけど相手がどう感じ、
どう変化していくかまでは見えない。
コミュニケーションというのは、
本来は双方向型であるはずなのに、
初めからそれが病気というものに、
阻害されてしまっている。
そういう方々を相手に、
いかに誤解のない愛情を示せるか。
すごく難しいです。