序の1 Adviser <3>


 「もしも~し、ニワトリく~ん。うちの庭のアドバイザーさんいる~!? 」

 庭に帰るなり呼んでみた。

 「ちょっと聞きたいんだけど~」

 りっちょんさんと話していて、歩み寄りたい気分に少し傾いていた。

 それから、「彼」が姿を見せた時の第一声、

 「あるぞ、伝説の庭」

 素直に「教えて」って言えていたら聞けただろう、続きが聞きたかった。けれど、それでも「ニワトリくん」と呼んでしまっている、微妙にバイアスのかかった思い… 

 スネてたら返事なんかしてくれないかもしれない、そんな不安に染まる気持ちもありながら…

 と、

 「何が聞きたいって!? 

 スネた様子でもなく、ごく普通に返ってきた返事、そして最初と同じく柵に片肘ついた「彼」の姿。それは多分というより紛れもなく Adviser であるからなのだろうけれど、それでも、ごく普通に聞こえるその声の調子と姿は自分でも意外に思ってしまうほど嬉しかった。

 「この前、「伝説の庭」あるって言ってたでしょ。その話を少し聞きたくて… それと、ニワトリくんじゃ、やっぱりあんまりだから… ホントの名前とか、こう呼んで欲しいってないの!? って… 」

 「この庭のアドバイザーである以上、名前はオーナーさんの任意。「ニワトリくん」って呼ばれることに文句言う筋じゃないんだ、ホントは…  姿見せただけで大騒ぎされてその後はマル無視ってのもありがちらしいし。でも、お茶もご飯も自由にしていいって言ってもらえたし、また呼んでもらえた。結構感謝してるんだぞ、これでも」

 「任意って、だって、私の「物」じゃないんだし… ニワトリや牛に名前付けるみたいにはいかないよ~。どうしようかなぁ… 」

 「… うん。あんたならそう言うような気がしてた。対等に扱ってくれる、っていうか話が分かりそう? ま、だからずうずうしく主張できたっていうか? 基本的にアドバイザーはオーナーに奉仕するために存在する。だから、名前はホントに好きに呼んでくれていい。俺のいるこの庭のオーナーになってくれた、その縁を嬉しく思ってるから。  とりあえず「ニワトリくん(仮)」でいいよ、おいおい決めてくれれば…  って訳で、お茶しないか? 聞きたいのは「伝説の庭」の話だったっけ!?」

 「うん。ローズティーならすぐ飲めるように準備出来てるけど、それでいい!? 」

 「な~んでも。クッキーとかあればもっと嬉しいけど。」

 「サクランボのクッキーならある。」

 「じゃ、頼むわ 」

 こんな風に話せたんだ… ちょっと時間を損したような気がする。「彼」が言った 「基本的にアドバイザーはオーナーに奉仕するために存在する」っていう言葉はちょっと気にかからないでもないけれど、いつもここにいてもらえて、話せるのは嬉しいと思う。、話したいことや相談したいことって実際あるから。ご近所さんや水友さんにはちょっと聞きにくいことでも相談には乗ってもらえる… ん… だろうな…!? 

う~ん… 「ニワトリくん」じゃなくて何て呼ぼう。 “篠田さん”は無理として… う~ん… 悩ましい。

 ほかの人は 自分の庭のアドバイザーさんを何て呼んでいるのかなぁ… 名前って付けるもの? … これも聞きにくい相談事ではあるんだけれど、こればっかりは相談にはならないんだろうなぁ…

 お茶とクッキーをテーブルにセットしながら、ティーのバラの香りの中、つらつらそんなことを考えていた。 


                                   <ツヅク>