細木信宏の良い映画を観よう! -6ページ目

細木信宏の良い映画を観よう!

フィルムスクール卒業後、テレビ東京の番組「モーニングサテライト」のニューヨーク支局を経て、アメリカ国内枠で数々の映画を取材し、シネマトゥデイ 、映画.com、リアルサウンドに寄稿。自身の英語の映画サイト、https://cinemadailyus.comも立ち上げた。

 

こちらが僕の英語の映画サイト、下記をクリックして読んでみてください。

 

 

先日、ニューヨークのジャパン・ソサエティーで毎年開催されている北米最大の日本映画祭、ジャパン・カッツで、日本でも話題になっている映画『サマーフィルムにのって』を鑑賞しました。映画『ニュー・シネマ・パラダイス』のような映画の中に映画愛が詰まった作品で、ずっとニコニコしながら鑑賞していました。そこで、ジャパン・カッツの広報に頼んで、映画『サマーフィルムにのって』の松本荘史監督とのインタビューをセットアップしてもらいました。こちらが、そのインタビューです。

 

 

 

Q : 今作は、主人公のハダシが、勝新太郎の時代劇が大好きな少女で、同級生が製作するキラキラ恋愛映画を毛嫌いしていますが、どこか、それは監督自身がこのハダシと似ている部分があるのでしょうか?同級生のキラキラ映画ががある意味、最近作られている日本映画で、何か日本映画に対する不満が燻っている部分がハダシに投影されているのではないでしょうか?今作には、淡い恋心はあるものの、最近多く作られている日本の恋愛じゃない青春映画という点がそう思えました。

 

(松本荘史):「サマーフィルムにのって」を企画した2018年頃は、日本ではキラキラ恋愛映画と言われるジャンルの一大ブームがあって、当時の高校生たちはそれらの映画を観に映画館へ足を運んでいました。ということは、きっと同級生たちと「好き」を共有できず悶々としてる高校生も日本のどこかにいるのではないか?というのが着想の一つでした。なので、僕の不満をハダシに投影したわけではありません。

 

 

Q : ハダシ役に伊藤万理華さんを配役した経緯は?彼女は元乃木坂46の出身で、どういった部分に彼女の感性がこの役に適していると思われたのでしょうか?僕はYoutubeで彼女の楽曲「はじまりか」を聴いた時に、すごく表現力のある女性なのかな?とは思えました。

 

 

(松本荘史):伊藤万理華さんが在籍していた乃木坂46では、メンバーそれぞれを主役にした「個人PV」と言われるショートフィルムが定期的に作られていました。その中で伊藤さんが主演している作品はいつも群を抜いて面白く、俳優として元から注目していました。「はじまりか」で見せた表現力も決め手のひとつです。更に伊藤さんは個展を開催したり、雑誌でクリエイターと対談したりなど、モノづくりに関心がある方だと知っていたので劇中のハダシと通づる部分があると思い、オファーしました。

 

 

Q : テーマは、ハダシの映画愛みたいなものが主軸にあるように思え、その周りを囲む仲間たちも魅力なのですが、共同脚本家の三浦さんと、ハダシとその仲間たちの関係性をどう構築していったのでしょうか?

 

(松本荘史):映画愛というよりは「何かを好きになること」それ自体のパワーや尊さこそがこの映画のテーマです。ハダシの時代劇への愛が周りを動かし、一丸となって夏を駆けていきます。ハダシの仲間たちは、僕と三浦さんとでアイデアを出し合って一人ずつ生み出していきました。そしてなるべく男女の境目がないようなチームを目指しました。

 

 

Q : 何もかも初めての体験となるハダシと仲間たちの映画作りで、共同で作る楽しさ、未体験のための困難などもしっかり描かれていますが、過去の自身での実体験なども反映されているのでしょうか?

 

(松本荘史):脚本を修正していく苦しみ、撮影の時の焦り、撮った素材を仲間と観る時の幸福感、編集の魔法のような時間、実体験は結構反映されているかもしれません。

 

 

Q : 今作では、ほぼハダシとその仲間たちの間に、親や担任の先生などの大人がほぼ介在していないのが、少年少女の内面を中心に捉えられていて面白いと思ったのですが、それはどこか意識的に気をつけていた部分なのでしょうか?

 

(松本荘史):まず映画自体を90分台の尺におさめるというのが自分で課したミッションでした。語るべきものは語って、あとは徹底して省略していきました。なので脚本を作る初期段階から大人の存在や家庭の描写は削っていきました。また大人が出てこないストーリーにすることで作品全体をうっすらとファンタジーで覆いたいという狙いもありました。

 

Q : 周りが高校生に近い年齢の俳優さんがキャスティングされる中、板橋駿谷さんのキャスティングがなんと言っても魅力でした。どこか、そういえばクラスに一人ぐらい老けているなぁと思った学生がいたような記憶を読み替えさせてくれる部分がありました。

 

(松本荘史):そうですね。老けた友達が普通にいるおかしさを狙いました。世界の映画祭でも「老けた同級生がユニーク」というような感想がいくつかあって、この感覚は万国共通なのかもしれないと思いました。

 

Q : 本作は、世界中の映画祭に出展されていますが、どこの国のどの映画祭の観客の反応が良かったのか、あるいはあまり日本では受けないリアクションだったのかを教えてください?

 

(松本荘史):まだ各国のレビューをあまり読めてないのでなんとも言えないのですが、日本でのリアクションとの違いは意外と少ないと思いました。コロナ禍の今と映画の未来を重ねる感想も多く、それは今ならではのシンクロなのかなと思ったりしました。

 

Q : 一度、コロナ渦で撮影が中断したそうですが、映画のモチベーションを保ったまま、どのように撮影を再開させたのでしょうか?

 

(松本荘史):中断期間に、それまでの撮影素材でオフライン編集をしました。順撮りで撮影ができていたので、オフライン編集は映画全体の輪郭をつかむきっかけにもなり、中断期間はむしろポジティブな準備期間となりました。ラストがあまりにも現実とリンクしてしまったので、ラストを書き換えるか悩みに悩んだのですが(このあたりも劇中のハダシとシンクロしてます)意図しないリンクがむしろ映画にプラスの影響を与えると信じてラストは変えないまま撮影に臨みました。

 

 

Q : この映画の撮影を通して、何が一番印象に残っているのでしょうか?思い入れのあるシーンなどはあるのでしょうか?

 

(松本荘史): 初日に、ビート板とハダシがお互いの名前を呼び合うシーンを撮りました。お互いの名前を呼び合うその声を聞いたとき、「いい映画になる」と確信しました。あとはラストの別れを言い合うシーンも印象深いです。俳優もスタッフもその場にいた全員が集中しきってて、濃密で特別な空気が漂っていました。

 

 

Q : どの程度、この作品を制作している段階で、海外での公開も意識していたのでしょうか、それと海外の観客には、今作を通してどんな部分を感じ取って欲しいのでしょうか?

 

(松本荘史):海外の公開はあまり意識してなかったです。海外の映画祭で多くの人がこの映画を観てくれているという事実が未だに信じられません。これは創作についての作品であり、「何かを好き」という感情の持つパワーや尊さを信じた作品でもあります。