西野亮廣さんに映画『えんとつ町のプペル』で単独インタビュー!アメリカへの挑戦とは? | 細木信宏の良い映画を観よう!

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フィルムスクール卒業後、テレビ東京の番組「モーニングサテライト」のニューヨーク支局を経て、アメリカ国内枠で数々の映画を取材し、シネマトゥデイ 、映画.com、リアルサウンドに寄稿。自身の英語の映画サイト、https://cinemadailyus.comも立ち上げた。

 

 

 

久しぶりにブログをアップします。

今日は、数週間前に行った西野亮廣さんとの映画『えんとつ町のプペル』での単独インタビュー。

タモリさんに絵を描くことを勧められたことから、クラウドファンディングの苦労、ディズニーを超える発言、アメリカへの挑戦、韓国のエンタメに比べ日本の足りないもの、様々なことを20分程度のインタビューで聞きました。興味のある方は、読んでみてください。

 

こちらは、私の英語の映画サイト。

 

 

 

 

Q)映画内の冒頭部分で、宮崎駿監督の映画『天空の城ラピュタ』を彷彿させる飛行石みたいなシーンや、映画『インディー・ジョーンズ/魔宮の伝説』を彷彿させるトロッコのシーンがありますが、西野さん自身はこの映画を作るうえでで、影響を受けた作品はあったのですか?

 

西野亮廣 :  沢山ありますね。それこそ、映画『インディー・ジョーンズ』シリーズもそうですし、子供の頃に観た映画、アニメは一通り影響を受けていますね。これというよりかは、シーンで覚えていて、例えば、宮崎駿さんがルパン三世をアニメで描いた作品『ルパン三世 カリオストロの城』があって、あの作品を子供の頃に鑑賞したときに、滅茶苦茶ワクワクしました。ルパン三世が屋根の上を走って、屋根がどんどん崩れていくようなシーンで、ああいうアクションが好きで、そういう細かいところに、僕は影響を受けてきましたね。

 

Q : 個人的にそういう発言をすること自体、勇気のいることだと思うのですが、以前に西野さんが「ディズニーを超える」という発言されたことがありましたが、これはやはりディズニーアニメの水準に近いものを作るという自分への戒めみたいな発言でもあったのでしょうか?

 

西野亮廣 : それは何か一つ僕の中にありましたね。自分は芸人をやって、絵本作家もやって、映画も作って、ミュージカルも作って、歌舞伎も作ったりしている人間なんです。けれど、自分と同じように、様々な分野で表現されている方を見ていると、ディズニーは雲の上の存在で、自分たちはその下でやるという感じで、ディズニーにはもう勝てないという形で活動している人が、結構多いんです。それは、僕はファンに対して失礼ではないか?と思うんです。

 

ファンに対して、自分はN0.1のものを見せないと、あるいはそういう姿勢でいないと、「ディズニーよりも面白くないものを見せます、皆さんお集まりください」とは言いたくないじゃないですか。それは言ってはいけないと思いますし、それはちゃんとディズニー映画であろうが、ハリウッド映画であろうが、あるいはシルク・ドゥ・ソレイユだろうが、彼らを競争相手にしないと、アーティストとして僕は不誠実だと思ったんです。だから、これはディズニーに限らず、あらゆる分野で言えることだと思います。ちゃんと一流と競争して、彼らよりも面白いものを作るという、そういう意図があります。

 

Q : アメリカでは、細田守監督の新作『竜とそばかすの姫』がこれから公開されますし、新海誠監督作品も、アメリカでは高く評価されています。日本のアニメは、現在はどういう立ち位置にあるのでしょうか?もちろん、一作品作っただけで、多くは語りづらいと思いますが、どういう形で海外の作品として、アメリカで勝負しようと思っているのか?具体策みたいなものが、西野さんにあるのでしょうか?

 

西野亮廣 : 実は、僕の中ではアニメショーンだけで、海外で勝負しようとは考えていなくて、もちろん、アニメーションも大事だし、ミュージカルも大事ですし、歌舞伎も大事だし、絵本も大事です。素晴らしい作品を作るということは、これは当たり前の話で、議論するまでもなく、クリエイターはそうであれと思います。ただ、ちゃんとビジネスモデルから作らないと、日本の作品を変えたり、海外の作品を超えられないと思います。例えば、『えんとつ町のプペル』でいうと、まずメイキング過程を沢山売りこみました。日本では、台本を早い段階で販売したんですよ。キャストが読む台本を、公開一年前から出したんです。そうすることによって、観客からすると、まず台本を読むことで、観客に『これが映像になったら、どうなるんだ?』という確認作業で、来てくれる観客もいると思ったんです。制作中も、メイキングを売り込んでいたんですよ。

 

Q : ある程度、ビジュアルをクライアント、プロデューサーに植え付ける作業を事前にしていたということですね。西野さんは、クラウドファンディングが世間に未だあまり知られていない、ずいぶん早い段階から行われていましたが、そういった認知されていない段階で始まることで、どういった苦労があったのでしょうか?

 

西野亮廣 : 当時、大変だったのは、人が嫌う瞬間があるじゃないですか、「あれ嫌い!」と思う瞬間が、でも、そういった発言を掘り下げていくと、嫌いなものを嫌いになってくというよりかは、人は知らないものを嫌う傾向があります。それは、恐れなのかもしれません。あの時点では、日本人のほとんどがクラウドファンデイングを知らなかったので、「クラウドファンディングをやる!」と言った瞬間に、日本中から詐欺師として扱われ、日本中から「よくわからない、それは何なんだ?変なお金を集め方をしてやがる」みたいな、今はもうそういったこともなくなりましたが、当時、今から10年前くらいに始めた時は、そういうことがありましたね。

 

それを言った瞬間から袋叩きにあい、先ほど話した台本を先に出すやり方も、当時は「何をやっているか」と日本では理解してもらえず、さらに「そういうことをやったら、映画館に逆に足を運んでもらえないじゃない?」とか言われ、それは業界内外からのバッシングはすごくありましたね。それと「えんとつ町のプペル」でいうと、絵本の発売と共に、全ページをインターネットで無料公開したんです。

 

Q : それは新しいアイデアですね。

 

西野亮廣 : 当時はそうでした。僕の中で、理屈は通っていたんです。子供のお父さん、お母さんは、別にお金に余裕があるわけではなく、絵本を買う時は、基本的にある程度立ち読みして面白かったら、子供に買え与える。一回、立ち読みというプロセスを挟んでいるんです。つまり、(絵本の内容が)ネタバレしているところからがスタートであれば、10人に立ち読みしてもらうよりも、1億人に立ち読みしてもらい、その分母を大きくしたほうが、買うという人が増えるわけです。そういった理屈で絵本も無料公開したんですが、それも無茶苦茶バッシングされました。「そんなことしたら、作品が売れなくなるじゃないか?」とか言われましたね。でも、結果的にこの発想で、多くの方に反応してもらえたと思っています。何か挑戦したり、人が知らないことをやる度に、日本中から叩かれることはありました。

 

Q : でも、それを一つ一つ叶えていって、最終的に『えんとつ町のプペル』はアメリカ公開されて、ディズニー作品とは同じ土俵に立って、オスカーエントリーされている作品にもなったわけですよね。それでも、日本では批判されることがあるのでしょうか?

 

西野亮廣 : もちろん、現時点ではクラウドファンディングも別に言われることもなくなりましたし、絵本を無料公開しても、OKにもなりました。ただ、最初の一手を出す時は、これは日本人の気質かわかりませんが、まずそういった人たちを叩く人がいて、そのために日本人は挑戦しない人も結構いると思います。

 

Q : アメリカだとそういった発想は、こいつ面白いなぁと思われ、その後、実際に行動しやすい部分は、日本と比べてあるかもしれません。今作に話の内容を戻しますが、今作の物語の着想において、日本の芸能人のタモリさんに絵を描くこと勧められて、それが今作を描くきっかけになったという話を聞いたのですが、その経緯を教えていただけますか?

 

西野亮廣 : 19歳の時にお笑い芸人になって、劇場で漫才やって、20歳の時からテレビの世界に行って25歳くらいまでTVの世界で頑張って、言ってしまうとTVですごく早い段階から評価してもらったんです。芸人としてはすごくうまく行き、その時点では追い風も吹き、今このTVの世界にいて、もっと大きな景色が観れると思ったら、そういうのが実際にはなかったんです。ある意味、ルーティンで毎週TVに出て、たくさんの人に見てもらい、チヤホヤもそれなりにされるんですけれど、それほどTVの世界が自分が思っていたほど大きな世界ではなかったんです。

 

そこで25歳の時に、TVを辞めようと思ったんです。そしてタモリさんに、「TVを辞めようと思っています」とタモリさんと飲んでいる時に伝えしました。その時に、タモリさんから「絵を描けば!」みたいなことを言われて、ちょうどTVを辞めようと思っていた時だったので、これから手がける作品はノンバーバル(言語を使わない)のものか、あるいは翻訳をできるものか考えていたんです。なぜなら、漫才にしてしまうと、日本語に依存しすぎてしまい、(作品として)海を超えれないと思ったんです。そんな時に、タモリさんに「絵を描け!」と言われたんで、それまで絵なんて書いたこともなかったんすけれど、そこで「描くか!」と思ったわけです。そこで、タモリさんに「次の日から絵本作家になります」と言ったわけです。

 

Q : 今回、これからアメリカで公開される「えんとつ町のプペル」に関して、西野さんはアメリカの声優の選択にも関わったのか?

 

西野亮廣 : こちらにマネジャーがいまして、その方に一応、提案して頂きましたが、彼のゴリ押しでこの方々が良いということで声を聞いてみたら、本当に最高だったので、是非お願いしますという感じでした。

 

Q : 日本の声優は、西野さんがお決めになったのですか?

 

西野亮廣 : そうですね、そこがベースになっていますね。日本の声優陣の声がベースになっていて、アメリカの声優はそれに似ている人か、あるいは同じ世界観を持った声の人を、そのマネジャーが探してくれて、アメリカ人の声優に声をかけてくれたんです。

 

Q: 今、日本のコンテンツは、海外と勝負するうえで、韓国にすごく負けている気がしていて、韓国は映画では『パラサイト  半地下の家族』がアカデミー賞を受賞し、TVでは「梨泰院クラス』、『愛の不時着』、『イカ・ゲーム』などが世界中で大ヒットし、音楽はBTSが世界を席巻しています。日本はエンタメ業界の投資なのか、システムなのかわかりませんが、どの部分が足りないのでしょうか?

 

西野亮廣 : 僕は二つあると思っていて、一つはお金の作り方ですね。自分たちは、映画だけでなく、例えばミュージカルとか作るときでさえも、日本では国が資金を出していくれる形態ではないですよね。だから、もう日本ではお金を出して手助けしてくれないのは、日本人も理解しているから、だったら、ちゃんとお金を生むというところから再設計しなければいけません。まだ、アメリカにはそういうシステムがあるかわかりませんが、オンラインサロン(月額会費制のWeb上で展開されるクローズドなコミュニティの総称)というものが日本にあって、そこでメイキングをずっと出します。

 

例えば、僕がミュージカルを作っている際に、月額980円で稽古風景とかそこ(オンラインサロン)で見れるというものがあるんです。そこで、メイキング過程である程度まとまったお金を作って、それをコンテンツに使うんです。そうすることで基本的に、製作費でマウントを取られることがあまりないんです。韓国とかは、ドラマでも製作費にかなり掛けたり、そうすることで時間をかけて制作もできたりしています。ちゃんと予算を確保する、そして自分たちで資金を集めて、自前でやること、まずそこから手をつけるのが一つですね。

 

2つ目は、これは日本特有なのかもしれませんが、表現者やクリエイターは制作過程で共感と想像の間ですごく揺れていて、日本はすごく共感が評価される国です。基本的に共感を得ることの方が、アーティストとして食えるんですよ。ただ、それが世界戦になった時は、想像で圧倒的なものを作ることが大事だと思います。でも、日本で想像を(中心に)やってしまうと、人が集まりません。想像的なものを作ると、主婦層の客は、『そんなの知らない?』という感じになってしまいます。でもやっぱり、共感なんか気にせずに、そこで想像で振り切ることで、人が見たことのない作品を作らないと、(世界では)駄目なんだろうなぁと僕は思っています。でも、食っていかなければいけないから、大体の日本人のクリエイターは、ほとんどがワイドショーのコメンテイターになってしまうんですよ。

 

Q : これは黒沢清監督も言っていたのですが、日本には才能のある若手の監督が沢山いるけれど、そう言った監督が日の目を見ないことが多いと言っていました。それならば、西野さん自身が日本のアニメーター、クリエイターを集めて、一つのプロダクションを作って、いわゆるアメリカと勝負するやり方を考えたことはあるのでしょうか?

 

西野亮廣 : 今、僕は絵本や映画をやっている人間ですけれど、うちの会社(西野亮廣エンタメ研究所)では、ミュージカルをやっていて、歌舞伎もやっていて、それで世界に打って出るというのは考えています。ただ、クリエイトをどこから考えるかが重要で、今の既存のルールの中でクリエイトしたところで、たぶん予算がないとか、そんな中で才能が消費されていくのは勿体ないと思うんです。それこそ、改めなければいけないのは、クリエイトはちゃんと予算を作るところからやらないと、何も変わらないと思います。でも、日本人はお金の話をすると、「もうやめて」とか、お金の話をする奴は汚いみたいになります。クリエイターがお金の話をしたがらない。すると叩かれてしまいます。でも韓国は、国のエンタメの戦略として、ちゃんとそこに予算を割いてやっているわけです。だから、そこから行かないと、何も変わらないと思いますね。

 

Q : 今、興味深いと思ったのは、一つの会社に様々な分野に携わる人々がいて、例えば、アニメ作品にしか関わらない他のプロダクションと違って、会社内で刺激し合っている部分が多いのではないでしょうか?

 

西野亮廣 : それは、ありますね。みんな仲は良いですけれど、当然、それぞれの分野が意識し合っていますね。映画作っているチームと、ミュージカルを作っているチームは違います。ただ共有できるところは、いっぱいありますね。

 

Q :では、そんなやり方をアメリカに腰を据えて、やろうとは思はないのでしょうか?

 

西野亮廣 : あります、あります。うちのミュージカルチームが、この間、日本でミュージカル終わって、今、アメリカにいるんですけれど、次、ブロードウェイでやることが決まっていて、それに合わせて、自分もしばらくアメリカに住んで、いろいろやってみようと思っています。