変態は料理界においては褒め言葉だ。
常人には理解できないレベルで物事を追求する人を変態と呼ぶ。福岡の『あ三五』の大将が追求するのは蕎麦だ。
聞けば下関で20年以上も蕎麦を打ち、博多に移転しても10年を超えて蕎麦を打ち続ける。
ご主人の飽くなき蕎麦への探究心は、うんちくではなく愛情にあふれた言葉として披露される。
これが食通達の好奇心に呼応するのだろう。
「もり」「かけ」ともに二八、十割、さらしな、さらに季節のそばである「柚子切り」まで用意がある。
全部食べたいなぁなんて悩んでいると、「少しずつ食べる?」なんて素晴らしい提案が!心を読むなんて、こちらのご主人は仙人ですか?
最初は「柚子切り」と「さらしな」。
更科蕎麦とは、蕎麦の実の外側は使わない手間もかかる高級な蕎麦。日本酒でいえば精米歩合が50%をこえる純米大吟醸のようなもの。冷蔵庫からでてくる蕎麦は打ち立てではなく寝かせるのだそうだ。いきなり常識が壊されます。
なんて美しい透明度を誇るお蕎麦だこと!まるで新鮮な大根のよう。その香りのために食感を失いがちだが、適度なコシもあり蕎麦としての完成度が高い。ご主人は「食べれば食べるほど腹が減る」と語るが毎日食べれそうなお蕎麦です。
続いて「十割」と「二八」
食べ比べればその香りの違いと食感の違いは明らか。どちらも違ってどちらもいい。
美味しい二八が出せなくなったら蕎麦屋は終わりというが、まだまだ現役ということですね。
つけ汁は濃厚なのでそれで十分だが、辛味大根を散らして食べても美味い。
最後は「十割」でいただく花巻蕎麦。
海苔がいっぱいに広がった器から香りがいっぱいに広がります。お腹が香りで満たされていきます。
小柱でとった出汁の香りと海苔の風味がたまらない。ご主人はかけのほうが蕎麦の良さがわかるというが、妙に納得してしまいます。よく出汁を関西風とか関西風とか表現するがそんなものはない、蕎麦の出汁に決まってるなんて粋こと言ってました。
いやぁ、まさかラーメンやうどんが有名な福岡で蕎麦の変態に出会うとは思わなんだ。次は夜に蕎麦のお勉強に訪れたいと思います。
あ、看板がオシャレなんでお見逃しなく。
「藍」って書いてあると思ったら「あ三五」って書いてあります。