色々な物を取り零しながらの季節は冷たい風を運んできて
人の笑う冬の装いを正義にせざるを得ない。
ゆっくりと落ちてきて包み込む柔らかな陽の光が
何か語ってくれればもう少し、もう少しだけ
僕も何か変わって笑顔が咲いて居ただろうに、と心の弱い時の僕が云う。
人は未来に向かって歩きながらいつも過去に縛られて居る。
大丈夫、そのままで、と云う人が明日も笑顔ならそれがとりわけ良いに決まって居る。



少し前にとある芸能界の訃報を受けて
突然、ノブもお酒少し控えなよと割とよく云われる意外な返答があって、
ああ、居なくなっても心に残る人でありたいと思うようになった。
この職種を選んでから役として残りたいと思うことは数多くとも
自分自身を振り返って貰うことを第一に考えたことは少なくて、
そもそも日常の切り売りは苦手だし、
自己顕示欲は付いて回っても、
身の丈を自分で測って知って居るつもりだから
何につけてもありがち程度がきっと調度良い、そう思って居た。
それを許さない人々のことは理解して居るつもりでも
過不足は想像力で、と他人行儀。

正座して座って居る姿が庭園美にあって美しければそれで良い、
しびれを切らして居るのか、小さな頃からの慣れっこで屁でもないのか。
知りたい人の気持ちより、様になって居ることの方に重きを置きたい。

とは云いつつもタナカドリルにも
何度となく書き連ねて来ては居るけれど。




今だから話すと云うつもりもないのだけれど
国内で僕が対面した2度の震災のことを最近またよく考えるようになった。
どちらの震災の件も比較的近しい人の口から聞いたせいかもしれない。
朝方に母がテレビの前に齧り付いて居た阪神は
父の誕生日で正直遠いところで起きて居る出来事だと錯覚した。
犠牲者の数が速報で増えるたびに母は肝を冷やし、
余震や2次災害なんて単語を知らない小学4年生の僕は
大袈裟に騒ぎ立てて居るな、と思って居たのだと思う。
大袈裟に騒ぎ立てて居るな、と信じられないことを思って居たのだと思う。

報道で語られる数字は続々と数を増し、
3日後の母の誕生日には4桁目の数字をまた更新した。
母はずっと肝を冷やして何も術を持たないままにただただ行く末を眺めて居た。
折角のママの誕生日なのにな、なんてことを思って居たと思う。

そんな数字だけを眺めて居た少年の視線の先に
ある時ふいに家屋が倒壊する瞬間の映像が映し出されて
思わず顎が上がってしまうような何かぱちんと弾けるような衝撃があった。
この悲しみや痛みや辛さが何千個も今積み重ねられて居るのだと突然実感した。
数字だけにしてはいけないことが今遠く離れた場所で起きて居る。

震災から実に3日が経過した時だった。
僕が何か偲んでも何も変わらない、何も出来やしない。
今日学校に行ったら明日は土曜日。
いつも通り四谷大塚で勉強するだけだ。

ただただやるせない気持ちだった。



2度目はまだ冷えの残る晴れの日だった。
だいぶ大人になった僕は舞台稽古のために稽古場に居て、
目の前で棚が倒れるのを見て、
携帯はつながらず、
稽古場の震えるコーギー犬を抱きかかえるようにして駅前に避難した。
続々と集まってくる共演者やスタッフ陣の中で
まだ何が起きて居るのか事態の掴めない状態でまた揺れた。
凄く揺れた。

ロータリーには自販機があって、
誰かが倒すために後ろから押して居るのではないかと思うくらい大きく揺さぶられて居て
咄嗟に離れてください、早く、早く、と叫んだ。
その場に居る人の注目を一身に受けてしまって恥ずかしかった。
自販機は倒れなかった。
大袈裟に叫んでしまったことが僕はやっぱり恥ずかしくて、
一緒に集まって居るキャスト陣にも申し訳ない気持ちが芽生えた。

でも今改めて思うとあの場で恥ずかしいことなんて何事もなかった筈なのだ。

夕刻過ぎて皆で一斉に移動をした。
これから避難所に向かうのかどうしようか、途方に暮れながら歩いた。
ふいに近所の友達から連絡があり、
僕の家の辺り一帯が断線して停電中だと知って
遅れ馳せながら母の心配をした。
友人や父が様子を見に行ってくれたお陰で母の無事を知れた。
やっぱり何も出来やしなくて歯痒かった。

文化放送さんの誘い掛けで義援金の呼び掛けもさせて頂いた。
自分に出来ることはもっと別の場所にあればもっと違う筈なのに、と
僕は直前までぐずぐず迷って居た。
何も出来ない僕を何かする僕に変えたものは何だったのだろう。
僕のあの壁を取り除いたのは何だったのだろう。
物凄く大切なことな筈なのに、今ふいにその記憶が思い起こせずに居る。



そう云えばニューヨークでテロが起きた時もそうだった。
目の前で足を挫く人の杖になりたくとも、僕には何も出来ず歯痒いのだ。
その術のないことがこんなにも歯痒いと知って
今も
明日僕が何を出来るのかいつも探して居る。

炊き出しの為に赴く人々が居た。
アイドルの子逹が歌って声を掛けて握手をして居た。
遠く離れた場所からでもとメディアから声援を送る人々が居た。

今も
明日僕が何を出来るのかいつも探して居る。



人は色々なことに慣れて生きてしまう。
忘れてしまうことも沢山あって、
だから誰にでも明日があるのだけれど、
それでも記憶は確かなのだと思う。

それぞれのあの日を境に自分の生き方を考え選んだ人が世界にはきっと沢山居る。
それぞれのきっかけ。

僕は芝居を素敵だと思ったあの日を忘れない。




とまあ。
久しぶり過ぎるタナカドリル。
しんみり。
秋も深まってますので。ね。


秋の味覚にも興味は尽きないのに
なんだかタナカはすっかり痩せこけて居りますが、
冬に向けてもう少し蓄えて皆様とお会い出来るようにせねば。
そうなんです。
アンテナビンビンに張り巡らせている方はとっくにご存知のことと思いますが。
イツツメキセツのDVD発売を記念したイベントがあるようなのです。

出演キャストはこれから増えるかもですが、取り急ぎ皆様にお知らせいたしますね。









イツツメキセツDVD発売記念イベント&X’masイベント

≪日程≫ 2015.12.23

≪場所≫ 代々木muse(東京都渋谷区代々木1-31-2)

     http://www.muse-enterprise.com/music/contents/rental-space/fee/



≪time≫

1回目  13:30OPEN 14:00start

2回目  17:30OPEN 18:00start

**受付:開演45分前

**開場:開演30分前より



【チケット発売日】

11月14日(土)11時~



≪チケット申し込み≫

https://ticket.corich.jp/apply/69743/

【ticket】前売り¥5000-/当日¥5500-

【出演者キャスト】

猪野広樹 (二部のみ) 

大島崚

田中伸彦  

成松慶彦

鬼束道歩

小林智絵  

月城ひまり

天野哲也【PUPA】

中村祐志【PUPA】

佐久間比呂美【PUPA】

千紗子【PUPA】

板橋康人【PUPA】

小川隆将【PUPA】



[お問い合わせ]

pupa.stage.info@gmail.com

主催 SHOW-BZ  PUPA







あなたのクリスマスを
絶対僕にください。