明日の天気がどうしても占いたくて
開けども開けども検索の結果は過保護な物言い。
テレビのニュースも局地的豪雨を示唆してみるけれど
窓の外は風の音もなく艶かしい熱を持つ静かな夜の景色。
何かあってはならないから、
予報はあくまでも予報で
注意を喚起するに越したことはないけれど、
そこに人間の存在を感じられず、逆に不安になる。
本当にそこに人間の感想はあると思えず、
静かな夜、
理科の授業止まりの僅かな知恵を再起動して
ヘクトパスカルと云う単位のよくは知らない数値で
8号の規模をはかってみたりする。
「勢力を弱めて990」と云うと
強大はおろか、
単なる低気圧の一線に置いても支障がないようでも居て
九州地方に被害をもたらしたと云うこの低気圧の渦が
今ここにまで腕を広げて居ないような気がする。

今そこで目に見えないからと云って
存在を認めないのは悪い癖で
これより悪い未来はないような気がしたし、
これより良い未来はいつだって当たり前にやって来る。
でも、この生温く嫌な気持ちのしない凪を
信じて良いような気がした。
窓のずっと奥に流れていく厚い雲がたまに月を映し出す。

今朝の東京はじりじりと照らし出すような
夏の演出に暇がないようです。




メディアを揶揄するのは飲みの席だけで充分、
なんとなく後味も悪いので僕の住む町の話でも。

スーパーの横に併設された銀行ATMに並んで居て、
じりじりと照りつける陽をしのぐように日陰を選ぶと、
出てきた妙齢のご婦人が
「お暑い中ごめんあそばせ」
そう云って脇に止めた自転車に向かっていった。
なんと云う言葉遣い、もとい心遣い。
僕も見習おうと思って、
暗証番号を入力した後の矢印の画面を見つめながら
この心のバトンを繋ぎたくて言葉を選んだ。

婦人言葉はもとより、
丁寧すぎる言葉も違和感たっぷりで、
ちょうど良い言葉はないものか、
そんな思いでうずうずしながら自動扉を出ると、
先程まで居た筈の待ち人は居なくて、
リレー終了の鐘を胸の奥で聞いた気がした。

とりとめもない。



じゃあ、もうひとつ。
別に小話をする気はないのだけれど。

近くにアジアン家具を扱う倉庫があって、
スタッフさんがせっせと手入れをして居る姿を
通りすがりに横目で見るのだけれど、
その鉄筋の屋根の端にツバメの巣があって
数年前から5月が来るのを楽しみにして居たりする。

今は九州にいってしまったうちのカワイコちゃんが
毛色や頭蓋骨のフォルムのみならず性格さえもが
実にスズメに似て居たこともあって
初めは鳥好きと云う訳ではなかったのだけれど、
日をおう毎、鳥への興味が強くなったのだと思う。

5月辺りから出入りを始めたツバメが
ふいに動きを止めたかと思うと
ふるふると蠢く子供たちがキーキーと頭を出すようになる。
毎年それが楽しみで、用もないのに倉庫前に立ち寄っては
いつしか僕の思いすら運んでくれるような心持ちになって
届けてはくれようもない思いを勝手に託して眺めて居た。

今年の初夏になって、
相変わらず倉庫の前に自転車を止めて居たら、
家具を拭きニスを塗るスタッフさんとも話すようになり、
巣から少しだけはみ出したままの黒い羽を憂いたりした。

まったく動かないんですよ…
もしかしたら中で…
めっきりツバメの姿を見てないですし…

梯子を架けて中を確かめましょうか
そんな話にもなったのだけれど、
もう少し様子を見てみましょう、
もう少しだけ
あと1週間だけ。

そのまま僕は少しだけ忙しくなり、
舞台稽古が始まって忘れて居た訳じゃないのだけれど、
あまりに長過ぎる1週間を経て
日常を取り戻す旅を再開した僕が
台風の過ぎ去った町を徘徊すると、

相変わらず黒い羽をはみ出させたままの暗く悲しげな巣から
1羽の大きなツバメが青すぎる空に溶けていくところに
あまりにも偶然に遭遇した。

嬉しくて嬉しくて嬉しくて、本当に感激して
仕事に精を出す倉庫のスタッフさんに声を掛けてしまった。

今、そこから、つばめが!!

ご無沙汰です、そんな挨拶より
伝えるべき言葉はそれだったと思う。
間違えなくてよかった。

隣のレーンにはもう1つ新しいこじんまりとした巣が
知らないうちに出来て居て、
にぎやかな一家が幸福を撒き散らせて居て、
あまりにも元気が良くて子供たちが飛び落ちそうで
巣の下に段ボールをひいてるんです、
お兄さんはそう云って居て、
物凄く正確な位置に柔らかく段ボールが置かれて居た。

新たなお隣さんも愛くるしいけれど、
あの黒い羽の溢れる巣に出入りする人が一人でも居る、
それがあまりにも嬉しくて、
命と云うかこの思いがきちんと継がれて行く期待に
夏のくせに胸が温かい。

来年はどうぞこの2つの世帯に
また新しい命が紡がれますように。
僕の探すのは青い鳥じゃない。

青く遠い空に溶けたツバメが居る気がして
その姿めがけて自転車のペダルを漕いだ。




そんな訳で
日常を取り戻す旅の途中のタナカです。

大好きな作品がまた一つ幕を閉じました。
濱田真和と云う作演出家は
僕より少し年下のでも3回に1回くらい
本当に格好良い名言を吐く不思議な男です。

僕のように苦労話を酒の肴に終わらせたりせず
全てを身にして生きて居る素敵な男子です。

今を生きて居るという言葉には2種類あるんじゃないかな、
今回作品に携わりながらそんなことを思いました。
ヒトの脳には過去を振り返る能力があって
僕の脳は基本的に今を今振り返ることで今を認識するタイプで
僕の尊敬したり好きだと思う俳優さんや演出家さんは
今起こったことを考える間もなく
次の瞬間に爆発させて今を表現する、
そんな人が多いように思います。
考える能力が欠如して居る人も居れば
あえて考えることを止める人も居て、
どれも異種格闘技戦、皆素晴らしい。

人は考える芦ですが、
人のくせに考えない芦も居て、
でも考える芦より魅力的だったりして、
結局何が正しいのかなんて
判別がつかなかったりするものなのだなぁ、と。



今回、本当に久し振りにダブルキャストで役に携わって
同じ役の同じ台詞を別々の人間が吐くと云う機会で、
1つのカンパニーの中にまったく異質の別の世界が
存在するのを目の当たりにして、
実際に公演が始まってから、
公演前、客席開場間近の鈴チームの円陣に
参加出来ないこととか
一緒に緊張感を感じられないことが苦しくて、
諸井と云う人間を独り占めできないのが実は凄く寂しくて。

でも、相手チームの諸井役の中口翔君は
僕にはないパワーや勢い、フレッシュさで
生き生きとその瞬間の今を生きて居て、
彼と接する度に学ぶことも多くて、
翔くんになら託しても良いし、
彼は僕を置いてどこかに行ったりしないと
信じることが出来たのでした。

同じ演出家の同じ作品、同じ言葉選び。

これほどまでに両チームの特色が顕著なのも
珍しいのではないかと。

どこかの著名な評論家は作品を一本化出来てないなんて、
そんなことを云うかもしれません。
この充分に戦える両作品を観て云うのならば仕方のない話で、
評価なんて良いから、
それぞれで感じたことを
それぞれ分聞いてみたいと思うのです。
僕も翔くんも同じ作品の同じ役を演じましたが別人です。

翔くんがその時々で感じたことを僕が体現することはできません、
それを演じろと云うのなら出来るかもしれません、
でも真和の作品においてそれが必要だとは
やはり思えないのです。

僕は真和の作品にある「今」より
「整然とした今」の方が得意です。
でもやっぱり真和の作品は好きなのです。

全員MVPのとっても良いカンパニーでした。






お花ありがとうございました。
毎朝の劇場入りに元気貰います!!



大好きなあまにー。
ぱいせん、からちゃん!!
ここに真和いればカケラルーム




ご存知の方は何を今更、でしょうが
相方とも云える中口翔くんは実はめちゃくちゃマッスル。
この握手で右手が粉砕骨折しましたが、
本人は本当に愛くるしい奴です。




打ち上げでのんでます。危険です。
画質が良い画像は本作のヒロインでもある
弥香ちゃんの力作たちです。



打ち上げのスピーチで勝手に喋って勝手に泣く人。
お酒足りてないんだよ、と照明部さんにお酌までさせて
まだ飲む人。
多分、良いこと云ったんだけどなぁ。




ノブが居るから絶対寝ない、
そう豪語した作演出黒猫の濱田先生は2次会で撃沈。
マジックを粉砕骨折中の右手に携え、
キャンバスを前に創作意欲の湧くタナカ画伯。
ここら辺あまりおぼえてません。




今回、本当に素敵な俳優に出会いました。
JPこと島田惇平先輩。
どんな個性的なキャンパスも
アルコール血中濃度高めの画伯の前ではキャンバスです。
反省してます。ごめんね。



起きてる。
時系列がわかりません。
大好きな真和。



稽古も序盤らへんの頃。
終電も近いのにわざわざ観光してきました。
撮ってくれた観光客の女性方。
バカですみません。




本当に日和佑貴が僕の相方で良かった。
十鬼の絆では
稽古場では一緒にabcのテーマを歌ったりもしましたが
本編では絡みもなく、ちょっと遠かった存在。
でも、本当に相方が君で良かったよ。
芝居に対して真面目なのは当たり前のこと、
こだわりだとか変化を誰よりも着実に毎日感じました。
素敵な俳優さんだと思うのです。
可愛い眼差しでじっと見つめてきたかと思えば、
次の瞬間、男らしい貫くような視線を送ってくる。
言葉を交わさない間柄の役所なのに、
いつも佑貴の声が聞こえてくるような気がしました。

一緒の写真があまりなくて、でも、
鈴チームの大千秋楽が始まるロビーで花を持って
一緒にとりましょうよ、っていってきた
あの時の佑貴の表情が忘れられません。
今、まさに諸井の気分です。





ご観劇くださった皆様、お手紙、プレゼント、
本当に感謝をしてもしつくせません。
またお会いしましょう!!


アディオス