舞台「snow flake」が無事千秋楽を迎えました。
劇場に足を運んで下さった皆様、
そして奇しくも体調を壊してしまったと云う方々、
エールや贈り物、お花を下さった皆様、本当に幸せでした。
ありがとうございました。


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今回の作品は3年半前の公演「the long kiss★good night」の
続編のお話と云うことで懐かしく嬉しく喜ばしい反面、
少し戸惑いがあった公演でもありました。

3年と半分。
単語や数字でくくって語ればあっと云う間ですが、
高校生なら入学から卒業までをまるまる飛び越えた期間であり、
大学生なら就職活動も終わりが見えて卒論の推敲期間だったり、
肺呼吸を覚えたばかりの赤ん坊だって迷子を得意技にウロウロ。
そんな期間を経て再びサンダルと云う役を演るのは
なんだか自分の成長を試されて居るような妙な錯覚すらあって
気のおけるコンビネーション抜群のキャストの中にあっても
どこかレースに挑んで居るような心持ちでした。
云うなれば、見栄っ張りの僕が持つ意地のような部分が
目を覚ましてしまったと云うか。
元来、勝負事に疎い性格のくせに。




僕にとって生まれて初めての舞台出演作はこのロンキスでした。
稽古場や劇場で飛び交う舞台用語もよく分からない僕が
サンダルと云う役を演りながら考えて居たことは
どう見えるのか、と云うことだけで精一杯で、
どう見せるのか、と云うことについてはやや無頓着な状態でした。
右も左も上も下も分からないながらに、
必死で一生懸命にサンダルと云う人を生きてから3年と半分。

今だって技巧テクニックは乏しいし、
詰めの甘いところを指摘していけばキリもないだろうし、
でも、それでも、
あの頃と違う何かを獲得して居るはずだ、
それをどうサンダルと云う人物に吹き込んで行けば良いだろう。

例えばここに大きな浮き輪があったとして、
肺活量の少ない子供が必死に膨らませて遊んだ後、
アスリートがやって来てパンパンに息を吹き込んでくれたら
助かるし嬉しいし安心感は増すけれど、
吹き込み過ぎてパンクさせてしまっては元の木阿弥。

だからつまりそう云う意味では
あの頃のサンダルを飛び越えて別人にしてはならない。
詰めの甘い余白の部分は塗り足して隙間なく仕上げるけれど、
その浮き輪を、もといそのサンダルと云う人間で
どれだけ遊び方を増やせるかが大切なはず。
今回、台本を前にしてそんなことをずっと考えて居ました。
もっと何かないか、きっと何かあるはずだ、と
劇場入りしても楽屋の鏡前に座るとアイデアと格闘して居ました。



ある夜に
新宿の浅間神社に立ち寄って報告したことがあって。
「ぼろの出る付け焼き刃ではなく、
 3年と半分が経った豊かな安心感と笑顔を与えたいんです」
語る前も語った後も、風景が変わらないのが良いなと
ネオンの見えない広い空を見上げてみたりして。

年末近くの夜空にはオリオン座が綺麗に輝いて居て、
上に2つ、真ん中に3つ、下に2つ。
最近やたらと気になるのは
3つ横並びの下に、縦に並んで薄く瞬く星の名前で、
視力の良くない僕に見えるのは本当に薄らだけれど
でもあるんだよなぁ、なんて名前の星だろう、
いつかその名前を知るまでは、
なんと呼んでも自由なんだよなあ、
じゃあ何て呼べば良いんだろう、うーん、
と知りたいような知らないままでも良いような。

自由に演じることと自由に演じて居るように見せることの違いが
少しずつ分かってきたりした今更の今。
何周か回ってまた「自由って難しいよね」と噛み締めて居る今。
そんな自分が役に映ると良いな、と思いながらの公演でした。



母は本当に色々な人に迷惑を掛けてしまう人間なので
普段は軽はずみに誘ったりしないようにして居るのですが、
今回の公演はどうしても観に来たいと云ってくれて、
千秋楽はそう云う意味でもちょっとおっかなびっくりな公演でした


家でBeWithさんの過去の公演パンフレットを見ながら、
誰が出るのかとしつこく聞いて来るので
多分見た事ある人が殆どだよ、と答えたら
この人は目が素敵ねーこの人も出るの?と
指さして居たのは進藤学さんで、
いや出ないよ、僕が声だけ出演の月末の舞台では一緒だけど
と答えたら、あからさまにがっかりした顔をしたので
学さん見たいなら11月来れば良かったじゃんよ、
なんて話をして居たのにも関わらず
座席の母は何故か学さんが出て来ると思い込んで居た様子でした。
なんて人。

終演後に母と話してみたら
母は学さんが見られなかったことを悔いて居て、
そんなことはどうでも良いんですけど、どうだった?と問うと
意外とどうでも良い僕の台詞を拾って覚えて居て、
なんでそんなところが唯一の記憶なの?
と大袈裟に吃驚しつつも、やっぱり少し嬉しかったりして。
3年と半分にこだわって居た自分が少し恥ずかしくて。

そう。
迷子の幼児が1300日前の肺呼吸が出来た瞬間のことなんて
まさか覚えて居る訳もなくて、
ただ興味のある方向に歩いて道に迷うだけなんだよなぁ、
それが成長なんだよなぁ、なんて。

昨日のニュースで、とあるフィギュアスケートの女王が
「いつも通り」を意識して滑るのだと聞いて。
いつも努力して居れば自然と成長は付いて来る、
だから常に努力して居れば、変に片意地張らずとも
「いつも通り」ってやつに成長が付いてくるんだよな、と納得して。

きっとサンダルも僕のいつも通りに応えてくれたんだなぁ
なんて思ったりしたのでした。





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この大きくて優しい人はいつも写真の一番前に居ます。
楽屋ではこの長い足や腕が僕の領域をいつも邪魔して居ましたが、
優しい大人は好きだから良いや、と思って居たら
僕より年下でした。スタイルの良い人に限って年下なんです。
ひかる君は初共演でしたがホントに愉快な人でした。

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MORITAさんは一緒の板の上で過ごした時間が長い人の一人です。
それだけあって、僕が彼を追い詰めようとする表情も
僕の焦りの表情も瞬時に理解してくれる有り難い人です。

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今回は本番中に僕がとんでもないミスをしでかしたのに
ただの台詞のやり取りだけで僕の心を読み取って
大惨事をふせいでくれました。もう頭が上がりません。
そして、今はまだ詳しくはお話できません。
皆様にはいつかその日まで秘密です。
植ちゃんとか成松君に聞いたりしないで下さい。絶対に。
田井さんもバッシーもひかる君も駄目だよ。秘密なんです。

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3年半前は新米刑事だったサンダルにも後輩が出来ました。
署長の息子だと知るまではようやく部下が出来たとぬか喜びでした。
稽古場でも気が付くといつも筋トレして居る工藤君は
蝶ネクタイに眼鏡の出で立ちで、どことなくコナン君。
なあ、事件ドコなん?


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今回、何を思ったか植ちゃんとも成松君ともバッシーとも
2ショットを撮り忘れてしまいました。
植ちゃんなんて楽屋で隣同士だったのに。
物語後半で成松君の示す愛があまりに深かったので
成松慶彦と云う俳優に対し底知れぬ闘志が芽生えました。
もう、なんて素敵な俳優さんに。



そんなこんなで「snow flake」の幕が閉じてからは
来年2月に控えて居る
Bewithさんと美獣のコラボレーションステージ
舞台「灰とダイヤモンド」のスチール撮りをしたり、

今月28日29日に控えて居る
愛する演出家・ホッキーこと保木本真也さん率いる
「トランジェットコメディアンズのコント集」の
稽古場にお邪魔してナレーションを録ったりと
割とばたばたな毎日です。

灰とダイヤモンドは成松君には馴染みの深い作品ですし、
僕も前回ピザ屋でゲスト出演させて頂きましたし、
美獣で純粋に芝居を打たせて頂けるやや初の試みと云うことで
稽古期間がっつり5人一緒なのも初だったりするし、
と早くも年始が楽しみで変にワクワクしてしまう年末です。
何しろ黒い服の似合うメンバー揃ってますからね。
すでに観劇したことがある方々宛になりますが
ルビーもサファイアもトパーズもエメラルドもオニキスも
どれも期待を裏切らないキャスティングです。

「トランジェットコメディアンズのコント集」も
内容を垣間見させて頂いた限りではセンスの光る笑いと間合いで
僕も観劇するのが今からとっても楽しみなのです。


どちらの公演も当ブログinfomation上のリンクから
詳細がご確認頂けますので是非是非クリックしてみて下さい。

と云う訳で
クリスマスは終わっても
2011年はまだまだ終わりません!!
皆さん風邪などひかれませぬように。