【こ】

・高架下【こうかした】

ふいに電車の往来が頭上から聞こえて来て
川面に自由が映れば、決まっていつも花火が恋しくなった。
首が痛くなるような広い夏の真ん中、
会話の止まった瞬間のそれを合図に
いつの間にか始まって居た追い掛けっこが懐かしい。

勝敗を競うようにしてなだれ込むコンビニで、
兎に角手当り次第に詰め込んだカゴはすぐにいっぱいになる。
無い袖が振れないのは当たり前だけれど
なけなしの金でも互いにはたき合えば何とかなるもので、
なるべく勢いがあって眩しいものを中心に買い占める。
ちりちりと静かに燃え落ちる線香花火も侘しくて良いけれど、
クラシックや民謡よりも俄然ロックな世代の男子の考えることは
調和より破壊力、お通しの和え物よりメインのステーキ肉、
花火はやっぱり勢いが大切なのだ。

これ絶対最後だからね、勝手にやらないでよ、
煙を吐き出すだけの忍者道具みたいな玉は昔から好き、
せせこましく駆けずり回る花火はスリルがあるね、
ロケット花火は悪さ働く奴らが居るし、うるさいから絶対禁止ね、
打ち上げ系は出来るだけ数を絞って強力なやつを、これ鉄則だよ、
ねえお菓子なんていらないって、食べてる暇ないよ絶対、
あーでもピザポテトは旨いよね、オッケー買いましょう、
じゃあアイスは人数分買うでしょ絶対、
あ、俺、飲み物とあとバケツとか取って来るよ、
とリッチで羨ましい二子玉川在住者の弁。
手当り次第にカウンターに投げ出されたお金は
もうどれが誰の所有物だったかも分からなくなる程で
夏を悲しむ余裕のない僕らの夏が店内で高らかに響く。

何袋にも分けられた買い物袋をそれぞれ持って待つ横断歩道。
信号の青色より待ち遠しいものが確かにあって、もどかしい。
きっともっとずっと前から、
僕達の導火線には火が点いてしまって居たのだと思う。

再び走って辿り着いた夏の高架下は僕らの集合場所で、
車窓からも充分に見えるように充分に見計らって
打ち上げ花火を空にかざしてようやく火を点ける。
空より高く上がる気がして居るものだから、
思いの外に低空飛行な緩い楕円の放物線が可笑しくて皆で笑う。

締めの線香花火はちりちりと妙にリアルだから
想像して居た通りの夏の寂しさで胸がぎゅっとなる。
物足りないなんて分かって居たはずなのに、
分かって居たはずでもおどける気力をなくして
晴れた空がひたすら愛しくてたまらなくなる。
言葉にするのも変だから誰も云わないけれど、
この映画が終わりませんようにといつも願って居たはずなのだ。

小さな太陽が石の上で静かに消えてなくなる。
最後の片付けは酷く面倒臭いけれど、
明日の夜には僕達が電車の窓から覗く番になるなら仕方がない。
1人30本以上のノルマを課して
兎に角手当り次第に詰め込んだバケツはすぐにいっぱいになる。


今でも通り掛かる度、あの頃のように二子玉川のあの高架下に
誰か集まって居やしないだろうかと有り得ない望みを掛けてしまう。

もしも、思い出はなぞれないから思い出なのだとしたら少し悲しい。
あの頃と同じように今年も夏が巡って来て居て、
それが何か少し足りない夏だとしたら少し悲しい。
だからきっとあれからずっと、
夏の夜の高架下には少し悲しい気がして居るのだと思う。

夏の夜の銀河鉄道に緩い楕円で掛かる天の川が見えるといつも
途中下車して存分に仰ぎたい気持ちに駆られてしまう。
きっと最終電車に間に合わなくなっても
締めの線香花火には間に合うだろうな、などと夢想してしまう。


誰も何も云わなかった。
ただ走り出したらそれが合図だった。
本当にたまにだけれど、
あの高架はそんな懐かしい気持ちを僕に呼び起こす。






と云うわけで、「また日記ならぬ月記かよ」な
タナカドリルになってしまいました。すみません。
もう読まないよ、待ってらんない
なんて云わずにそれでも読んで下さった皆様に
心からの感謝の気持ちを送りたいです。
変な贈り物が欲しい方はどうぞコメントでも残して下さいませ。

さてさて「こ」です。
候補が本当に沢山あって、
「孤独」とか「子供」とか「恋」とか「極楽」とか
「言葉」とか「コネクター」とか「怖い」とか
兎に角、「こ」については書きたい単語が沢山在って、
あえて、今回はその中で一番悩む単語を選んでみました。
そう、高架下。
この文中に出て来た二子玉川の高架下は本当に思い入れが強くて
アトリエ時代にはアトリエ主催の初夏のバーベキューで
足に釣り針の塊が何本も刺さってエグい絵面をさらしたり、
初めてワンコの散歩をした場所だったりと、
かつては高校時代の大親友の住んで居た本当に近くなので
沢山の思い出がある場所だったりします。
開発が進んで少しずつ見晴らしが変わって来ると寂しくて、
駅のロータリーの変化ですら巧く馴染めず居場所を失う始末。

それでも、みなとみらいと同じくらい
二子玉川は僕にとっての特別な場所だったりします。
あ、みなとみらい自体が初耳だって?
それはまたいずれお話し出来たら。




月記のせいで色んなことがご無沙汰になって居ります。
今日は、せめてもの御詫びに、
「日記用」だった画像の一斉大売り出しを。
(ブログを書く気はあったんだな、と思って頂ければ幸いです)


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5月には草津に行って参りました。
画像は岡本太郎さん設計の湯畑の前にて。
今からすれば少し肌寒い季節ではあります。



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とは云え、国道最高地点の景色はまさに雪景色。


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上着を着て居ても本当に肌寒くて山肌には真っ白な雪でした。


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肝心の草津では、
憧れだったサトーちゃんに乗ったりしてはしゃいできました。

草津の湯質は強度の酸性らしくピーリング効果があるとか。
画像にはおさめて居ませんが有名な大露天風呂でもある西の川原は
大空の下ここまで裸で良いのかってくらいなのに、
羞恥心をすべて掻き消す気持ち良さでした。




そして先月は箱根にも。
箱根ではあまり画像収集に躍起にならずに楽しんでしまったので
画像には治めて居りませんが、
箱根神社近くの湖畔の鳥居は圧巻。
生憎の霧に包まれたショットですが、逆に神秘的。


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僕の足下50センチ先は水浸しな世界です。

帰りに懐かしのみなとみらいの土地を踏めばこんなショット。


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中華料理の熱気とアルコールの力を借りてしまいました。
近くに居たカップルの皆様には、
ムード壊し屋ですみません、とだけ謝っておきます。



と、つい最近には
bewithさんの「blood heaven~第7天国~」も
観劇させて頂いてこんなショット。


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大好きな福山聖二君、成松慶彦君、高橋優太君、篠谷聖君、
などなど大出演のbutterfly effectの世界観に繋がる大きな世界観に
圧巻されてきました。
MORITAさんも田井和彦さんは勿論、
ロミジュリでお馴染みのナラーズも本当に良い味を出して居て、
横で一緒に観て居た植ちゃんと2人して
「嫉妬するわマジで」と繰り返して居りました。
ヴィンセントとワルディーのエピソード素敵だったなぁ、
と今でもまだまだ肩入れして居る次第です。


そう、画像でお気づきの方は居るのでしょうか。
居ないでしょうね。
居ますか?そう。そうなんです。
タナカさん、ようやくついに、ロン毛を脱出しました。
と云っても皆さんにロン毛なタナカを存分にお見せしたことは
あまりなかったと思うのですが、
(ずっと後ろでお団子にして隠してました)
ばっさり。

えりあしばっさりです。
涼しいー。
省エネー。









え、画像ないのかよ。って思ったでしょ。今。
大丈夫見せますよ。

いつかね。
月記を脱しますから。(いつもすみません)

さて!
今日はね、告知が1つあるんです。


少し先のお話しになるのですが。
2011年11月18日(金)~20日(日)
のトータル5公演と少なめの公演では在りますが
「落下の王国~the fall kingdom」の再演が決まりました!!

先にもお話しした大好きな福山聖二君や
良い声ナイススタイルな進藤学さん(毎日曜朝に拝聴してます)
お馴染み安心感の大御所MORITAさんとの共演とあって
5ヶ月も前からやや興奮してます。


そして、他にも今少し動いて居るようなので、
そちらもどうぞご贔屓にして頂けると幸いです。

が。

なにはともあれ、11月の公演チケットは、
9月の一般発売を先駆けて
7月3日(日)朝10時~18日(月)20時の先行発売だそうです
秘密のプレゼント付きとのことなので、
タナカの変な贈り物よりも期待が持てそうですね。


詳細はどうぞ
http://www.bewith-gogo.com/newstage.html   まで。
(コノURLは予告なく変更となる場合が在ります。
 その際はhttp://www.bewith-gogo.com/ より
 落下の王国対象サイトを御覧下さい。
 なお、携帯不適です。)



この夏は皆で節電だー!!!!!!


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(手書きです)