帰宅時を思うと昼間の温む風にも信頼を置けず、
外出時、コートを片手に持つ日常を漸くやめられそうな4月末。
不安症の僕の右腕に畳んで垂れるコートはだらしない。


風弱く、匂いも心なしか変わると僕は26になった。

ただ過ぎていく日常にも数字はめくられ、歳を重ねる。
算数や数学のノートを閉じてしまえば
四捨五入なんて言葉はもう使わないと思って居たけれど、
歳が一つ増えるときには次の代を意識するのに大いに役立つ。

四捨五入して30、を過ごしてとうに一年が経っても
この期に及んで20代前半意識がまだ抜けず、もう後半戦。

今日の4月は静かな雨。
いっそ隙間を埋めるほど雨が降って居たなら、と少しだけ思う。
余計なことなど考えなくて済むくらいに。




プロフィールに書けない
自己紹介で申し上げる程でもない
「実は…」的な、些細で微妙な特徴と云うのが人にはある。

例えば、
歌が好きと云ったら「巧いのかな?」と思われてしまうかも、とか
天然なところがあると云ったらエピソードを期待されるかも、とか
ちょっとだけ花粉症だけど、市販薬で充分落ち着く程度だし、とか
上には上が居るような可も不可もなく取り立てる必要のない特徴。

そう。

割とざっくりして居ると思われて誤解されるのだけれど、
僕はよく知らない人の前では萎縮するタイプで
市民権を得る程でもない程度の人見知り人間だったりする。

幸運にも最近は
よく知って居るお馴染みのスタッフやキャストに囲まれての
お仕事が続いて居たせいもあって忘れかけて居たのだけれど、
今回の「シブヤ×アキバ」の稽古が始まった頃は、
ヒトミシリストとしての自分を痛感して居た。

3月に一緒だった福山聖二君とか、
去年1月に一緒だった矢ケ崎一樹君が居なかったら
打ち解けるまでもう少し時間を要したかも知れない。

このカンパニーでの初顔合わせの時、
人数の多さのせいもあってか、高校時代を思い出してしまった。
兎に角皆の仲が良くて、その輪の中に入って行く感覚。
それは転校生の気分にも少し似て居て、甘苦い気分だった。



高校3年生の最初の始業式のベルは新しい学校で聞いた。
新しい担任の先生が迎えに来て、廊下で少しだけ待つと
教壇から促されて新しいクラスメイトの前で自己紹介をした。
新しい学校には制服がなくて私服姿なのは変な感覚だったけれど、
この40人が僕を知らないことや、
僕がこの40人を知らないことの方がもっと、変な感覚だった。

何から伝えれば良いのか分からず不安だったので、
まずは無難に、と真面目になって気が付いた。
小中高と同じ顔ぶれに囲まれて育ったせいで知らなかったけれど、
僕は人見知りをするタイプだったらしい。

これからの1年が始まる期待は甘く、でも不安な思いも交錯した。
映画やドラマで描かれる転校生が
教壇から席に移動するまでのあの10メートルの闊歩には
そんな甘苦い気持ちが混ざり合って居るのだ、
そして今自分はその渦中に居るのだと、その時思った。

小さなため息と一緒に席につくと、
窓の奥の白い桜や青々とした景色があって少しだけ安堵した。



あれから8年が経って、まだ初対面に臆するのかと落胆しつつも、
あの時気付いたばかりで自己紹介の一つにも出来なかったことを
今はこうして受け入れて云えるようになったのだから、
少しは進歩、だと思うことにする。



かくして
人見知りも落ち着いた「シブヤ×アキバ」の稽古も後半戦。
都内のampm店頭や、雑誌JUNONでも宣伝がされて居るようです。
機会がございましたら是非是非ご確認くださいませ。
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チケットの方もまだ若干の御用意があるようです。
画像の通り、今までにないタナカが御覧になれるかと思いますので
ご予約がお済みでない皆様は是非是非ゲットして下さいね。


「シブヤ×アキバ~カノジョはボクの青い鳥~」
2010 年5月
 19(水)19:00
 20(木)19:00
 21(金)14:00 19:00
 22(土)13:00 19:00
 23(日)12:00 17:00
http://shibuyaxakiba.com/top/




最後になってしまいましたが。
沢山の誕生日のコメントやプレゼント本当にありがとうございました。
ただただ嬉しいです。感謝感謝です。
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