車の扉にSuicaをタッチしてゴーしようとした人はうちの母だ。

自動販売機の前で家の鍵を出して、居合わせた知人に
「中に入りたいの?」と突っ込まれたのが僕だ。

親が親なら子も子、と思えばなんとなく納得が行くけれど、
「昼には雨の予報だったから傘を持って出掛けたら靴べらだった」
と昨日母が電話で云って居たのを聞いて居て、
なんだか頭が上がらないなあ、とぼんやりした。



母のボケっぷりは行動に表れ易く大胆で、
対して僕は、自分で苛々するほどいいまつがい系の小ボケが多い。

夜、ソファでウトウトして居る母に
「もー、寝るなら病院いきなよ」
とベッドと病院をいいまつがってたしなめて無言の空白が出来たり

話題の監督の作品タイタニックが思い出せずに
「あのレオタードみたいな名前の映画」
と主演俳優と作品名を足して2で割って別物にしたりして居る。


云った瞬間すぐ「いいまつがった」と気付く後天的なボケが僕で、
人に突っ込まれるまでは間違いに気付かない先天的なボケが母だ、
と区別して自分を慰めて居るのだけれど、
人からしてみたらドングリの背比べかもしれない。


それにしても親子揃ってよく似てるな、と度々思う。



ある時、持ち物や着て居たパーカーがピンクだったことから、
友達の友達が僕に「ピンキー」と呼び名を付けたことがあった。
ピンクを着てない時もピンキーって呼ばれんだよね、
と母に話したら、
ママも昔ピンクばかり着て居てピンキーって呼ばれて居たんだよ
と親子2世代に渡る因縁の衝撃告白をされた。



似て居るとか似て居ないとかの前に、
もう、なんか、同じことの繰り返しだ。




そんな母もこの前誕生日を迎え、還暦にまた一歩近付いた。
昔と違って、今の60代は本当に元気で活発なので
還暦と云ってもなんだか実感が湧かないけれど、
それでも、もうそんな年齢なのかと思ったりした。

そのうち
母が見知らぬ人に席を譲って貰ったりするようになる。
そう思うと何だか少し締め付けられる思いがして、
まだ現れても居ないその架空の人物に
礼を伝えられないことが歯痒くてたまらない。

僕の小さな頃から知って居る姿と変わらず、
まだまだ元気で、趣味も性格も昔とそう変わらない母だけれど、
そんな日がいずれやってくるようになるのだな、
とぼんやり思った。


出来るうちの親孝行、なんて云い回しがふと脳裏をかすめた。



日頃は、なるべく「出来るうちの」とは思わないようにして居る。
云い回しの奥に潜められて居る消極的なものを
意識しないようにするためかもしれない。

幸い、母も僕もまだ元気なのだし、
常に最大限尽くし合えばそれで充分ハナマルなのだから、と思う。
でも、きっと
意識しないようにしながら意識してしまって居るのだろう。


最近は「親孝行」と云う言葉を都合良く振りかざして
頼みごとを脅迫めいて強要して来る母だけれど、
それも許せてしまって居るのは、それ故、なのかもしれない。


2人でボケ倒してひっちゃかめっちゃかな日常にも
こんな思いがあるのだと気付くと、
日々は時折ゆっくりと過ぎていって、
高校時代、母から貰った手袋が寒空に温かい。





と、告知もだいぶ遅れてしまいましたが。

2月9日(火)27時24分~27時46分放送の
日テレ「夜明けのマルシェ」と云う番組の中のショートドラマ
「princess LOVE 魅せられて」に参加させて頂きました。
http://www.ntv7.jp/valentine/

関東ローカルの放送となりますが御覧頂けると嬉しく思います。

また、奇しくも別地域の皆様にも朗報です。
今回参加させて頂いた作品、なななななんと
本放送に先駆けてweb上でも公開されて居ります。

先に見たい関東の方も含め、皆様どうぞ御覧下さい。

http://cmt.ntv7.jp/contents/valentine/2010/drama/story2/

携帯はコチラ→http://mobile.ntv7.jp/valentine/2010/drama/

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