ニュースの裏読み日記 【頑張れ現代人7】 TPP後編 ~ 明日吹く風は、今日の嵐
いよいよTPP3編のラスト。 本当は前・後編で完結させるつもりだったが、次々と重大なニュースが飛び込んでくるので、ついボリュームが膨らんでしまった。 今回も【NHK白熱教室/大阪大学で】行われた、「科学技術の安全性」の討論会をテーマに書き始めたのは2週間近く前のこと。 ところが連日連夜、腹立たしいニュースが飛び込んでくるものだから、いつまで経ってもまとめることができずに時間ばかりが過ぎてしまう。 例えば次のニュース。【日経新聞の抜粋】 政府税制調査会は6日の会合で、2012年度から『地球温暖化対策税』として「石油石炭税率」を1.5倍に上乗せする方針を固めた。 石油石炭税は、原油・天然ガス・石炭などを採取場から出荷する企業や、輸入する企業に課税される<環境税>である。 増税幅は原油・石油製品が1キロリットルあたり760円など。 最終的にはガソリンや灯油、都市ガスなどの値上げを通じて消費者に転嫁される可能性が大きい。 環境税はCO2排出抑制のための政策に使われ、12年10月から段階的に導入予定。 初年度で約350億円、4年後に約2400億円の税収を見込む。 また政府税調は11年度税制改正で先送りになっていた所得税の見直しのうち、高所得者への課税強化も12年度改正に盛り込む方針だ。 年収1500万円超の会社員らの給与所得控除の上限が245万円に抑えられる。※このニュースを聞いたときは、実に複雑な心境だった。 まず、高所得者への課税強化が、単なる所得控除の抑制案にとどめられ、高度経済成長期のような累進課税の復活には至らなかった点。 我が国の政治にありがちな玉虫色の決着だ。 集票欲しさに、あちらにもこちらにも配慮した風見鶏は、グルグルと空回りばかりしている。 公務員改革も、議員定数削減も先送りにして、消費増税とTPPは強硬に推進する野田内閣。 その背後には企業献金と団体票で、政治を私物化している既得権者がいる。 鈴木宗男氏は仮釈放の記者会見でこう述べた。【産経ニュース】 「消費税の議論をする前に、国会議員の定数を衆議院は100人。<中略> 国会議員給料3分の2カットですよ。500万円のボーナスももらわない。復興が明らかになるまでは返上します。 これやっただけで、ボーナスだけで35億円+給料だけで35億円浮きますよ。 10年間で700億円できるんじゃないですか」 「国家公務員のボーナス今約8500億円です。これ3分の1カットしただけでも約3000億円浮くんじゃないですか。10年間で3兆円出ますよ。 あるいは公務員宿舎4分の1、都内は廃止だとか出てますけども、全部無くすべきですよ。 緊急なものだけ残すといっても、何が緊急なんですか? 何とでも手打ちますよ、官邸もあればですね、衆議院の宿舎もあるんですから」※ここでは政治家や公務員に対する鈴木氏のコメントを紹介したが、会見では新自由主義的な小泉改革が労働環境を破壊したことに触れ、政官の腐敗構造を財界がコントロールしていることにも言及していた。 また地球温暖化対策税<環境税>と称して、政府は「石油石炭税」の増税を考えているようだが、この税率の査定も疑問だ。 まず「石油石炭税」について。【Wikipedia抜粋】 石油石炭税は、原油及び輸入石油製品、ガス状炭化水素(石油ガス:LPG及び天然ガス:LNG)、並びに石炭に対して課される日本の税金。 同法は平成15年度の税制改正により、旧名の「石油税法」から法律の名称が変更され、新たに石炭に対しても課税されることになった。また、LPGやLNGに対する税率も引き上げられた。 この増税の見返りに「電源開発促進税」が減税されたが、この税は大規模安定電源の確保という名目で原子力発電所の補助金だけに使われており、毎年余る電源開発促進税が新エネルギー推進に投入されることはなく、環境政策のための税金というには齟齬がある。 もともと電源開発促進税が原発立地地域への支援を口実にした、建設利権ばら撒きの財源としての性格が強かったと考えられる。※わかりやすく言えば、原発交付金を賄うための税金が「電源開発促進税」ということになる。 1974年、創設時の目的は、 「オイルショックにより石油に代わる代替エネルギーを模索し、原子力発電所、水力発電所、地熱発電所等の設置を促進する」 ためであったが、現実には原子力開発にしか使われていないという。 さらに、2003年に石油石炭税法の施行と引き換えに、電源開発促進税の税率を段階的に引き下げているが、本来なら、◆環境税と電源開発促進税は正反対の性質 のものである。 にも関わらず2007年度になると、「電源開発促進税」と「石油石炭税」による石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計が、エネルギー対策特別会計に統合されてしまい、さらに税収額を特別会計に直入することをやめて、一般会計にいれてから必要額を特別会計に繰り入れる仕組みになった。 どう考えても、電源開発促進税が再生可能エネルギーなど、新エネルギーの開発に利用されないことへの批判から、目をそらすためとしか思えない。 また石油石炭税が抱合されたことで、環境保全の目的とは違う方向に税金が流用されてしまう可能性も捨てきれない。実に不透明である。 その疑問にWikipediaはこう答えている。【Wikipedia抜粋】 1世帯あたり月平均約110円を電気料金に上乗せして、「電源開発促進税」は支払われる形になっているが、原子力の研究や立地対策のために使われる「電源開発促進勘定」の半分以上が、経産省や文科省など官僚OBが役員を務める独立行政法人や公益法人、民間企業などに支出されている。 東京新聞の調査によると2008年度は、3300億円のうち、51%の1700億円近くが9つの天下り法人に支払われていた。支出先の9法人には26人の官僚OBが報酬をもらえる役員に就任。うち経産省出身者は半分の13人を占める。 突出して金額が大きいのは、日本原子力研究開発機構の1226億円、原子力安全基盤機構には225億円であった。いずれも4人の役員がいるが、全員天下りで平均年収は研究開発機構が1570万円、安全基盤機構が1860万円であった。※さて、こうなると石油石炭税についても、その使途の不透明さや、地球温暖化対策における効果査定を評価しながら、正しく見直す必要がでてきた。 上っ面だけを書き換えて、その場しのぎのパッチワーク税制改革では、自民党の長期政権となんら変わらない。 抜本的な<税と福祉の一体改革>なくしては、日本の窮状を救うことは出来やしない。 官僚には優秀な人材が揃っているのだろう? IQ150程度の・・・もとい、IQ150もある知能集団を結成して、ぜひ世界の手本となる「政治・行政・産業・税制…あらゆる要素を加味した抜本改革を成し遂げてほしい。 私のような素人(大臣は言わない方がいいw)でも、石油石炭税が単純に、◆採取・取引重量単位当たりに課税される のはおかしいと気づく。 なぜなら同量の化石燃料を使用していても、エコ技術の差によってCO2の排出量は変わる。 CO2排出量で課税が変わるなら、日本のエコ技術は魅力的な商品になるだろう。 なにより、CO2だけが地球温暖化の原因とは言い切れない。 地球の気温は、人類が何の関与もしなければ、太陽からの照射熱と、地球から宇宙に放出される放射熱のバランスに左右される。 だとしたら、火力発電ばかりでなく、原子力発電や、エアコン、車、家電など、あらゆる発熱エネルギーに課税すべきということになりはしないか。 私のような一般人には、そのような膨大な試算はこなせないので、誰かデータ収集が可能な方がいらっしゃれば、産業革命以降の発熱エネルギー総量の変化を、ご教示願いたい。(コメントはブログでもツイッターでもかまいません) 余談だが、アメリカと中国の拒絶により『京都議定書』の実現が危ぶまれている。 一つの打開策として、過去に排出した温室効果ガスの総量に遡って課税する方式を採用すれば、中国にしても拒否する正当な理由を無くすだろう。 ただしアメリカが理由もなく、「いやなものはいや」と突っぱねると、それが新たな中国の拒否権につながってしまう。 イラン対イスラエルや、北朝鮮の核所有問題にしても、中国の軍事力の増大にしても、アメリカだけが特権を許されようとする限り、世界の対立構造は深まるばかりである。 ★ 前回のブログでも紹介した【松島×町山 未公開映画を観るTV】で、これらの問題と関連したドキュメンタリー映画が昨晩、再放送されたので取り上げてみたい。 『FLOW For Love of Water』は、世界の水ビジネスが抱える人道的なトラブルを、広く世に訴えかけることをテーマにしている。 以下は、私がテレビを観ながらポイントを箇条書きにしたものなので、興味のある方はレンタルビデオ店へどうぞ。◆世界銀行が出資者となり、汚い水しか飲めない世界の貧しい国々に水道を整備しよう、と言えば聞こえはいいが、実際は生命維持に欠かせない水資源を独占し、恒久的に搾取する大企業。◆コカコーラ社は「バイオ肥料」だと騙して、「高濃度のカドミウムと産業廃棄物」を投棄した。◆ダムが水の循環を阻害すると、川や海に住む生物の栄養源となるべき<有機質>がダム内に堆積し、腐敗し、メタンガスを発生する。それはCO2の何倍も温室効果が高く、地球温暖化の原因と考えられている。◆雨が降る地域なら、地下に貯水タンクを設け、ハイテク技術を駆使した濾過装置で浄化すれば水はタダで手に入る。なにも遠くに巨大なダムを建設して自然を破壊する必要はない。 太陽光発電などと同じ地産地消の発想で環境は守られる。 昨年の初夏に、Twitterで何度か猪瀬副知事に話しかけたことがある。 経産省がデフレ経済からの脱却の決め手として、鉄道・水道などのインフラ輸出をしきりにプロパガンダしていた時期であった。 猪瀬氏も、東京都の水道技術の優秀さをアピールし、政官を挙げて輸出するべきだと主張していた。 間違いではないが、営利追求ばかりに目的が特化されると、とんでもないしっぺ返しを喰らう気がしてならなかったので、Twitterで猪瀬氏を注意深くフォローしていた。 その答えが映画『FLOW For Love of Water』にある。 多国籍資本グループのスエズ社は、アルゼンチンにおいて水ビジネスを展開していたが、国民の多くが貧しい生活を強いられる当時のアルゼンチンでは、投資に見合った収益を確保しようとするスエズ社の価格設定に対して、住民の反発は激しさを増していった。 結局アルゼンチンの水道は国営化され、2003年1月、スエズ社は開発途上国における水事業からの撤退を決めた。 こうして水の民営化は、世界中で大きな問題になっていることを映画はレポートする。 水はすべての人が持つ基本的権利だ。 公共の利益のために水を管理することは必要だが、命を左右する大切な資源を私有化するべきではないことは、子供でも気づく。 だが資本主義社会では、国際金融機関と多国籍企業が結託して、水の民営化を条件に貧しい国々への融資を行う政策を推進してきた。 『環境・持続社会』研究センターの佐久間智子氏のレポートには、次のような一節がある。 ★ 世界銀行は1993年より、新規融資や債務削減の条件として、それまで自治体が担ってきた水の管理や供給を民営化するよう求めてきた。 欧州復興開発銀行やアジア開発銀行(ADB)など、地域開発銀行も同様の政策を採用しており、ADBは特にアジア地域の水の民営化に深く関与している。 途上国地域で民営化された水事業の大多数は、先進国のほんの数社のグローバル水企業によって運営されており、世界市場の寡占化は加速している。 しかし90年代に、企業による水管理・供給事業は、世界各地でさまざまな問題を引き起こしている。マレーシアやボリビアなど、世界の多くの国で民営化に反対する住民運動が、グローバル水企業を撤退に追い込んでいる。 今年1月には、◆アメリカのアトランタ市で、水質や効率の悪化を理由にスエズ社が撤退を余儀なくされた。 ★ 映画の解説をする町山氏は、次のように語った。 「水は天から降り、川を流れ、海に出る。蒸発して雲となり、雨となって循環する。誰のものでもなく、地球に暮らす全生命体のものだ。 そこへ大企業がやってきて、行政に水資源の利権を約束させ、人々から水を略取し、金に換える」 私が子供心に、素直に感じた意見と同じで、共感できた。 私が松島氏の代わりに収録に参加していたら、町山氏にこう話しかけただろう。 「それは化石燃料や、鉱物資源、漁業権、土地権利にも共通する問題だ。 いったい誰が、何の権利を持って、その権利を売り買いできるのだろう。 人類が長年、常識として受け入れてきたそのような価値観は不完全なものであると、現代人の多くが気づき始めているのかも知れない」と。 2007年にベネズエラのチャベス大統領が、石油、電力、通信産業などを国営化したことは特異な例としても、世界中に飛び火した「中東の春」「ウォール街発の反格差デモ」「ロシアの反プーチン体制デモ」と、資本に対する価値観の変革の輪は、着実に広がって行くように見える。 ★ ☆ ★ 【5時に夢中】 ジャーナリストの岩上安見氏のTPPについての発言は、地上波ではまずお目にかかれないショッキングな内容となった。12月2日のオンエアなので、ネットユーザーの皆さんはすでにご存じの方も多いだろう。 簡潔にまとめると、米韓FTAによって韓国経済と社会は、取り返しのつかない大打撃を受けるというものだ。 ISD条項+ラチェット規定+NVC条項+ネガティブリスト+未来最恵国待遇+スナップバックと、ありとあらゆる搦め手で、韓国の自由な経済活動や安全保障がアメリカに支配されようとしている。 本来FTAとは、特定国の間に、物品関税やサービス貿易の障壁などの削減・撤廃を目的として締結されるもので、公共投資の自由化、規制の撤廃など、相手国の国内政策・規制・商慣習にまで立ち入る性質のものではない。 ところが米韓FTAは、なぜか韓国の国内法にまで踏み込んで定義されている。 そこには、 「たとえ韓国側がFTA条約を守っていても、米企業が自由な競争に負けたら、なぜか韓国政府は賠償金を支払わなければならなくなるような理不尽な取り決めもある」 と、岩上氏は解説する。また 「アメリカの車が売れなくなったら、アメリカだけは関税を元にスナップバックできる」 「アメリカだけは国内法を優先できて、アメリカ企業とアメリカ人は国内法で守られる」 「アメリカは未来においても韓国の最恵国であり続け、韓国・韓国人・韓国企業の知的財産権の管理・取締りはアメリカが握る」 ‥‥などなど。※このような会話が、東京MXTVの数分間とはいえ、地上波で流された。 少しずつTPPの情報が拡散され、おぼろげに正体が見え始めると、今まで「経済のために参加を」と訴えていた中小企業からも反対意見が目立つようになった。 「TPPに参加した方が、投資・貿易環境が整備されて、大企業が海外に進出しやすくなる」 「TPPを締結すると、価格競争が激化している産業の競争相手が増えることで、より一層価格競争が激化し、国内の経済成長を妨げる」 もうお判りだろう。TPPは日本の経済を再建する目的で考案された通商条約ではない。 元々はシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4ヶ国が力を合わせて、アジア・オセアニア・南米地域での経済連携を目指していたところにアメリカが突然介入し、金融投資など新たな規定を加えて主導権を奪い取ったいきさつがある。 そこに隠されたアメリカの狙いを、国際情勢ジャーナリストの田中宇氏はこう表現している。「オバマ政権のアジア最重視宣言は、時期的に、TPPや米韓FTAと抱き合わせで発せられている。そこから読み取れることは、<米国は、中国の台頭を懸念する日韓豪などアジア諸国の希望に沿い、アジア太平洋から軍事撤退をしない。その代わりアジア諸国は、TPPや米韓FTAを通じて、米企業が儲けを出せるような経済システムに転換しろ>という交換条件だ」 これを私なりに表現すると、 「オバマ大統領は軍産複合体の戦略を利用しながら、雇用対策・貿易赤字解消・財政再建などを進め、再選に向けて支持率をアップさせたいと目論んでいる」 といったところか。 安全保障にまつわる軍事戦略と、通商条約を駆け引きにしているところが多少判りづらくしているかも知れないが、アメリカの狙いは単純な話である。◆中国脅威論は、軍産複合体の営業でしかない。◆21世紀における軍事力とは、通商条約を優位に進めるための道具。 考えてみれば、21世紀の国際社会で、侵略戦争など許されるはずもないのだ。 たとえ世界最強の軍事大国アメリカであろうと、イラク進攻のためには「嘘八百」を並べたてて国際社会を欺かなければ成し得なかった事実が、そのことを証明している。 後になって、イラクには大量破壊兵器など存在しないこと、全てはCIAが流したデマであったことが明るみに出たが、すでに多国籍軍としてイラク進攻に参加した国々は、アメリカを非難する権利を失っていた。 もしも、あの時、アメリカが単独でテロとの戦いを始め、アフガニスタン・イラクへ侵攻していたなら、世界の勢力図は大きく変貌していただろう。 ★ 話が軍事方面に逸れ過ぎたのでTPPに戻したい。 もう一度、原点に帰って考えてみよう。【あおぞら銀行金融法人部門‥‥抜粋】 TPPはアメリカにとつて「雇用戦略」である。 オバマ大統領は2010年の一般教書演説において、 「今後5年間でアメリカの輸出を2倍に増やす」 という<国家輸出戦略>を提唱しており、 「この先私が結ぶ貿易協定はアメリカの雇用に資するものだけだ」 と発言していることからも解るとおり、TPPはその戦略の一つとして明確に位置付けられている。 サブプライムローンのパブル崩壊で、国内の消費・需要が急速に縮小しており、財政切迫により大規模な公共投資による民間の需要喚起策も取りづらいという状況下、アメリカは輸出主導でGDPを伸ばしていく戦略に明らかにシフトしている。 アメリカに次ぐ世界第2位の消費市場を持つている日本はまさに「垂涎の的」と言えよう。 さて、肝心のTPPの中身であるが、よく「農業 vs 自動車に代表される輸出産業」という構図で語られることが多いが、アメリカの立場からすると、むしろ物品貿易以外の項目=サービス貿易の方が主な「関心事」なのである。 端的に言つてしまえば、アメリカはTPPで 日本の「非関税障壁」を撤廃させ、日本のサービス市場の開放を迫ることで自国の雇用を改善したいのだ。 開放を追られるサービス市場の代表格は「医療」であろう。 TPPにより「混合診療」(保険診療と保険外診療の併用)、及び営利法人の医療分野への参入が解禁される可能性は極めて高く、それらの規制撒廃を契機に市場原理が過度に医療業界にもたらされることにより、◆国民皆保険の崩壊、◆医療格差の拡大 につながるおそれがある。 そして「金融」と「投資」については、TPPのオリジナル(参加国の)P4協定には含まれておらず、アメリカが新たにTPP交渉の中で追加した項目である。 そこから読み取れるのは、アメリカがTPPで狙う<本丸>は金融と投資であるということ。 金融と投資は1990年代以降、『年次改革要望書』で多くの妥協を日本に追つてきた分野である。 年次改革要望書とは、日米両政府がお互いの経済発展のために改善が必要と考える相手国の規制や、制度の問題点についてまとめた文書であり、毎年日米両政府間で交換されている。 アメリカ側からの要望が施策として実現した例としては、◆「建築基準法の改正」や◆「法科大学院の設置」の実現、◆「独占禁止法の強化と運用の厳格化」、◆「労働者派遣法改正」、◆「郵政民営化」といったものが挙げられる。 特に「郵政民営化」は約120兆円に上る簡易保険市場を、アメリカ民間企業がこじ開けるためであつたことが窺え、それは前述の混合診療解禁とも密接にリンクしている。※法科大学院の設置により、弁護士の数を増やそうとした当時の日本政府の説明の裏には、アメリカの要望があった。 同時にアメリカは日本に対して、陪審員制度にあたる「裁判員制度」を日本に求めたことを合わせて考えると、その狙いが見えてくる。 日本政府の狙いは、裁判の迅速化による経費削減。 アメリカの狙いは、アメリカで仕事にあぶれた弁護士が日本市場に進出しやすくするために、アメリカ型の裁判スタイルを日本に求めた、 というのが通説だ。 この「法科大学院」のせいで、司法の道に進むためには高額な学費が必要となり、借金を抱えながら学位・資格を取得しなければならない学生が急増した。 晴れて弁護士に成れたとしても、今度は弁護士が増えすぎて仕事がなく、ヤミ金融と組んで詐欺まがいの法律相談を行う悪徳弁護士が横行し、社会問題化している。 しかし、そうでもしなければ弁護士になるために抱えた借金が返済できず、破産するしかない実情がある。 弁護士の中には生活保護を受給している者まで増え始めているのだ。 まるで<学資ローン破産>が第二のサブプライムと騒がれるアメリカの現状を見ているようで、苦々しい思いだが、現代のアメリカ型ビジネスモデルを模倣しても企業が儲かるだけで、国民社会にとって良いことは1つもない。 また『「郵政民営化」と「混合診療解禁」が密接にリンクしている』の一節は非常に重要なので、その点を留意しつつ続きを見てみよう。【あおぞら銀行金融法人部門‥‥抜粋】 TPP交渉の中でアメリカが最も強く導入を主張し、尚且つ最も危険性を孕んでいるであろうと筆者が考えているのは、「投資」分野における ①「収用と補償」条項と、 ②「投資家vs国家の紛争解決」条項 である。 ①「収用と補償」条項について。 「収用」とは政府が民間企業を国有化したり、資産を強制的に接収することを意味し、「補償」とは、外資系企業が「収用」により被つた損失の代償を求めることである。 ここで問題となるのは、この「収用」の範囲が広すぎて、一般に「間接収用」と呼ばれる部分にまで規制が及ぶことである。 つまりTPPにおいては、政府が直接的に資産を接収したり、物理的な損害を与えていなくとも、現地国政府の法律や規制により外資系企業の営利活動が制約された場合、「収用」と同様の措置とみなして損害賠償を請求できてしまうことになる。 そして、その損害賠償の具体的手段として用意されているのが、②「投資家 vs 国家の紛争解決」条項、通称「ISD条項」である。 訴訟の場は国際投資紛争解決センターなどの第二者機関であり、そこで数名の仲裁人が判定を下すのだが、◆審理は一切非公開◆判定は強制力を持つが、不服の場合でも上訴不可◆判定基準は被告となった相手国の政策妥当性=必要性ではなく◆「外資が公正な競争を阻害されたか否か」の一点 である。 NAFTA(北米自由貿易協定)でISD条項を受諾してしまつたカナダでは、実際に外資がカナダ政府に訴訟を起こす事例が発生している。 ガソリンの添加物として使用されていたMMTという「神経性有毒物質」を規制した法律を、「差別的である」としてアメリカの燃料メーカーが、カナダ政府に対して3億5千万ドルの損害賠償を請求したケース等。 日本がTPPに参加した暁には、国民の生命・財産を守るための必要な規制がこのような形で否定され、損害賠償を請求されるケースが出てくるおそれがある。※このレポートを見て、皆さんはどう思われるか。 これまでの慣習国際法の下では、外国投資家は紛争が生じた場合、当事国となる国内裁定機関や裁判所において解決を図る必要があったが、貿易のグローバル化が進むにつれ、その手続きが煩雑になり、経費も膨らむことから、◆外国投資家は、国家に対する請求を国際機関に直接的に行うことを可能にする新たな投資協定 を求め始めた。 重要な例として、NAFTA/北米自由貿易協定/第11章とがある。 第11章は、当事国(カナダ・アメリカ・メキシコ)の投資家に対して、他の当事国を相手方とする請求を国際的な仲裁廷に直接持ち込むことを認めるもの。 また第1121条は、国内の救済規定に基づく権利の放棄について定めており、この規定に従うと、投資家やその関連企業は、国内救済手続による救済を受ける権利を放棄しなければならなくる。 そこで様々なトラブルが発生した。 前回のブログに記した、「カナダ保健法により、誰もが自由に利用できる保険適用の対象となる医療サービス」が、公平な競争を阻害するとして不服を申し立てた「メルヴィン・ハワードによる、センチュリオン健康事業団及びハワード家の訴訟」の他に、いくつか列挙しておこう。 以下の文章は、ネットで見つけることのできる様々な資料を参考にさせていただいた。◆合衆国の農薬製品メーカーであるケムチュラ社は、カナダ政府が、カナダ保健省を通じて、不当にリンデン含有製品(害虫の発生を抑えるため、なたね、からし種子、あぶらなといった作物や穀物に使用する)に係る農薬ビジネスを終了させたと訴えた。◆2008年8月25日、米企業ダウ・アグロサイエンス社は、「2,4-D成分を含む除草剤」の販売と一定目的の使用を禁じたケベック州の措置により生じたとされる損害について、NAFTA第11章に基づき、仲裁を求める旨の通知を行った。◆多国籍たばこ企業は、オーストラリアと香港間の二国間投資協定中の条項に基づいて、オーストラリアが行った、禁煙を目的とするたばこパッケージ規制法案に対する補償を求めた。 当該法案は、差別的なものではなく、重要な公衆衛生問題への対処を目的としたものであるにもかかわらずである。 このように、民主主義的な政治により制定された◆「公衆衛生、環境問題、及び人権に関連した改革や立法・政策方針」 に対し、ISD条項が及ぼす悪影響について、深刻な議論が起きている。 たった3か国のNAFTA加盟国でみても、政府を相手方とした係属中の案件は60を超え、2009年の調査ではISD関連の案件のうち、訴訟額が10億ドルを超える請求は33件、最も高いものでは500億ドルに上り、その他の100件については100ドルから9億ドルが請求されている。 政府を相手方としたこれらの請求は、そのほとんどが認められずに終わっているが、不思議とアメリカが訴えられたケースで、アメリカが敗訴した例は見つけられない。 国際機関と呼ばれるものが、すべからくアメリカの影響下にあることが伺える。 また、仲裁に巻き込まれることによって生じるコストも尋常ではない。 まず仲裁機関に支払うべき費用が、仲裁の申立てに2万5000ドル、仲裁判断の解釈、修正、取消しに1万ドル、管理費用と、仲裁人のための日当が1日あたり3000ドル、その他諸々の支払いが必要となる。 加えて、多額の弁護士費用の問題もある。 (ここで「法科大学院の設置」「企業のための弁護士活動の国際化」の必要性が関連してくる) 仲裁に要した費用は、原則として負けた当事者が負担することとされているが、事案の性質等を考慮した上で、弁護士費用も含めて当事者双方に分担して支払わせることも可能とされている。 また、時間的なコストについても併せて考える必要がある。 紛争解決までに要する時間は、平均3~4年。最長事例になると、最終的な取消決定まで13年を要している。 こういった莫大なコストは行政の財政を圧迫する。それは私たちの税金だ。 さらに悪循環として、投資家からの請求を恐れた国や地方行政が◆規制の立法化を事前に見送った とされる例がいくつもある。 投資家(企業)の利益追求(コストカットや規制撤廃)のために考え出されたISD条項は、結果として国民の「環境保護」や「健康維持」に対する当たり前の権利を、著しく阻害するものでしかない。 ★ ☆ ★ TPPが国民の健康を阻害し、環境を破壊することを多くの識者の言葉を借りて記してきたが、それでは具体的に、なぜそうなるのかを解説するスペースは、どうやら今回も足りなくなってしまった。 まるで「やるやる詐欺」の汚名を着せられた民主党のようだが、この続きは次回「TPP後編の後編」(笑) で必ず。 「混合診療の解禁」の問題や「国民皆保険の崩壊」の他に、薬価高騰や診療格差など、医療環境が著しく傷つけられる可能性も高いが、なんと言っても「食の安全性が脅かされる」問題は、健康被害に加え「主権支配」といった「国家存亡の危機」に関することなので、じくりと考えてみたい。 ★ 浅田真央さんが、お母さんとの死別の悲しみを抱きながら、日本選手権への出場を決めたと聞く。 おそらく彼女は、亡くなられた母のために精一杯の笑顔で演技に挑むだろう。 たとえそこに涙がこぼれ、思うような演技ができなかったとしても、世界中のスケートファンが彼女の演技を見守ることで、彼女を育てた素敵な母親に弔いを捧げることになる。♪イヤリングを外して 綺麗じゃなくなっても まだ私のことを 見失ってしまわないでね♪フリルのシャツを脱いで 痩せっぽっちになっても まだ私のことを 見失ってしまわないでね♪カーラジオが嵐を告げている 2人は黙りこんでいる 形のないものに 誰が 愛なんてつけたのだろう ‥‥教えてよ♪もしも明日 私たちが何もかもを失くして ただの心しか持たない 痩せた猫になっても♪もしも明日 あなたのため何の得もなくても 言えるならその時 愛を聞かせて 前回に続いて、中島みゆきさんの名曲『あした』で眠ります。 TPP後編の後編は、やっぱりあの曲かな‥‥中島みゆき/大吟醸【b_2sp1102】¥2,436楽天