近畿コカ・コーラボトリング美原工場は、1966年1月に近畿コカ・コーラボトリング第二工場として大阪府南河内郡美原町(後の堺市美原区)に建設された。当初はレギュラーサイズ×2、ホームサイズ×1の3ライン設置することを想定。このうちホームサイズ製造ラインは大阪工場1号ラインから移設、レギュラーサイズ製造ラインは当時世界最高速度を誇る750BPMのマシンを設置。美原工場を訪れた当時のCCECファーレー会長は「ワンダフル」、「ベリーグッド」を連発しながら満足気かつ熱心に工場を視察するほどであった。美原工場開設後もコカ・コーラの需要増加は止まらなく、1967年に1号ラインと同じ750BPMのレギュラーサイズ専用2号ラインを設置し、翌1968年には3号ホームサイズ製造ラインの機器を500BPMのものに入れ替えた。
1970年にはレギュラーサイズ専用・1200BPMの高速ラインを導入。この時点で美原工場の製造能力はレギュラーサイズで2700BPM、ホームサイズで500BPMとなっていた。「近畿コカ・コーラボトリング(株)M」の王冠は美原工場製造を示す。
京都工場、明石工場が操業を開始し設備を拡充させると当初は最新鋭だった美原工場の設備も見劣りが出てきた。そんな美原工場を独自路線に変える契機となったのが、リットルサイズの登場である。操業を開始してわずか6年で停止した4号ライン跡に460BPMの製造能力を持つボトラー最高速のリットルサイズラインが竣工。さらに2号・3号ラインを撤去し、パストライザーも備えた新2号ラインも完成させた。この時点で、美原工場は大型サイズ製品を生産する拠点という地位を確固たるものとした。その一方でレギュラーサイズとホームサイズの生産は停止。2号ラインは1984年に1.5リットルPETボトル兼用設備に改造。これは300BPMとやはり当時の最高速ラインであった。ちなみにライン竣工初日に製造された1.5リットルPET製品はメローイエローである。また旧1号ライン及び3号ラインが廃止されたこともあり、旧2号ラインを1号ライン、旧4号ラインを2号ラインに呼称を変更した。
1989年には2号ラインも1.5リットルPET製品の生産を開始。年々縮小していたリターナブル壜の1リットルサイズは、1993年まで生産されその役目を終えた。近畿ではPET製品は段ボール箱で梱包され出荷されたので、上の写真に写っている赤いケースは全てリットルサイズのものである。93年に大阪を訪れた際、最終製造品と思われるコーラやファンタを買ってきたのを今でも覚えている。
バルク状態で搬入されるPET容器。
フィラーで次々に充填されていくコカ・コーラ1.5リットル。そのスピードは1分間に300本であった。
1992年には1号ラインに茶葉抽出装置と調合設備が追加され、ホット充填による烏龍茶製品の製造を開始。HI-Cの2リットルPETの生産も開始した。HI-Cは今でもQooで見られるような1.5リットルのホット充填用ボトルでの製品が一般的であったが、今のアクエリアスの2リットルPETとほぼ同じ長角ボトルに入ったHI-Cは珍しい。1996年には500mlサイズも対応し、設備が整ってない他社にも製品を供給した。
時代の流れであろうか、生産拠点の集約化の流れに飲み込まれ美原工場も閉鎖されることとなった。その際、多くの品種に対応し機能も高かった1号ラインの設備を、京都工場7号ライン(元々350ml缶専用ライン)に移設。現在も大型サイズ中心を生産をしている。ワンダフルでベリーグッドな工場のDNAは完全に絶えることなく京都の地で生き続けている。
◎近畿コカ・コーラボトリング美原工場の変遷 (製造所固有記号:M→???)
2000年まで稼働していたので3桁の製造所固有記号があるはずだが未確認。順当に行けば近畿美原の略でKMIになるはず(明石はKAK、京都はKKYだった)。
1号ライン
66年開設 レギュラーサイズ(750BPM)
83年 撤去
2号ライン
83年 撤去
2号ライン
67年開設 レギュラーサイズ(750BPM)
78年 撤去
78年 撤去
新2号ライン→84~5年に1号ラインに改称
79年開設 リットルサイズ(460BPM)
84年 1.5リットルPET対応(300BPM)
92年 抽出及び調合設備を増設し、烏龍茶1.5リットルPET対応
9X年 2リットル長角ボトル対応
96年 500mlPET対応
00年 京都工場7号ラインへ移設し閉鎖
3号ライン
84年 1.5リットルPET対応(300BPM)
92年 抽出及び調合設備を増設し、烏龍茶1.5リットルPET対応
9X年 2リットル長角ボトル対応
96年 500mlPET対応
00年 京都工場7号ラインへ移設し閉鎖
3号ライン
66年開設 ホームサイズ(150BPM)
67年撤去 閉鎖→仙台コカ・コーラへ売却
67年撤去 閉鎖→仙台コカ・コーラへ売却
新3号ライン
68年開設 ホームサイズ(500BPM)
78年 閉鎖→撤去保管後に京都工場4号ワンウェイ壜ラインに
78年 閉鎖→撤去保管後に京都工場4号ワンウェイ壜ラインに
4号ライン
70年 レギュラーサイズ(1200BPM)
76年閉鎖
76年閉鎖
新4号ライン→84~5年に2号ラインに改称
77年開設 リットルサイズ(460BPM)
89年 1.5リットルPET対応(300BPM)
00年 撤去
写真引用:近畿コカ・コーラボトリング30年のあゆみより
77年開設 リットルサイズ(460BPM)
89年 1.5リットルPET対応(300BPM)
00年 撤去
写真引用:近畿コカ・コーラボトリング30年のあゆみより