年輪 | GALLERY OF MY POETRY

GALLERY OF MY POETRY

北日本新聞「北日本文芸 詩壇」に掲載された、私の詩

初孫が生まれ娘の嫁ぎ先に向かった

学生時代は東京まで特急で約六時間

今は新幹線で約二時間

所要時間は三分の一になったが

年齢は三倍になった

豆腐を水槽から掬い上げるように

金魚をポイで掬うように

けん玉を皿に載せるように

全神経を腕や手先に集中して

初孫を抱いた

刻み始めた命の重さを感じる

 

孫と一緒の目じりが下がった

亡き学友の写真を思い出した

 

「おじいちゃん」と妻に呼ばれ

思わず顔を上げてしまった

シャッター音の中に

目じりを下げた私がいる

三つの命の年輪を感じながら

 

2023年6月28日 池田瑛子 選評

特急と年齢の対比。そうでしたか。

初孫との対面、新しい命に触れる厳粛な緊張が面白い形容で伝わりほほえましい

カメラに収まった三つの年輪が健やかに刻まれてゆきますように。