新しい職場へ向かう途中
遊休農地に黄色いタンポポが
白い綿毛を見上げている
白い綿毛は青い空を見上げている
薫風にチョウが綿毛と戯れている
私はこれからの人生を思い描いた
蝉時雨を浴びて義母が大往生した
間際に奇跡的に開いた目は仏眼に見えた
かんかん照りから一転の涙雨
花の顔は別れ花よりも美しかった
娘が義母に手紙を添えたとき
私は袖時雨になっていた
初秋風に
たくさんの「飛ぶ田んぼ」が戻ってきた
きっと 納骨の義母を送りに来たんだ
「あれぇ のぼるさん どいがいね
もういいがけ 食べられ 食べられま」
義母の声が蘇った
2025年9月28日 本田信次 選評
初夏から初秋にかけてのあふれるばかりの季語に、死者への敬意や
尊厳さが表象されている。