GALLERY OF MY POETRY

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北日本新聞「北日本文芸 詩壇」に掲載された、私の詩

なびくのぼり旗に導かれ

会場に向かうプロムナード

少し肌寒い風も 逸る気持ちで心地よい

 

相手はB1残留を争う信州のチーム

残り三秒 ブザービーター

決まれば 逆転勝利 試合終了のブザー

ボールはリングに嫌われた

みんな天を仰ぎ嘆息して崩れた

 

ずっと地元でプレーしてきた選手が

「悔しいが これが現実」

「残りの試合でブースターに一つでも

多くの勝利を届けたい」と誓った

 

体育館を出ると花散らしの涙雨

昨日のニュースが蘇った

「輪島市の住宅の庭の桜が地震で

地面に倒れながらも花を咲かせ

その姿が住民を力づけています」

 

 

 

2024年5月28日 本田信次 (選評)

選考には残れなかったが、印象に残った作品

墨絵とパステル画の間の景色に

雨露霜雪に耐えて開花を待つ 梅

 

秋桜のころ娘たちが巣立ってから

我が家は

声と音のない空間が広がった

夫婦の声だけが

時間を持て余している

 

妻から貰ったチョコレートを

妻に「食べる?」と聞くと

「じゃあ一つ 貰おうかな」

と応えてくれた

気更来のような誕生日(じかん)だ

 

晴天曇天 雨露霜雪をくり返し

定年に近づいた如月に

更に歳を重ねる 現身

新たな開花を願って

 

 

2024年3月28日  本田信次 (選評)

選考には残れなかったが、印象に残った作品

初孫が生まれ娘の嫁ぎ先に向かった

学生時代は東京まで特急で約六時間

今は新幹線で約二時間

所要時間は三分の一になったが

年齢は三倍になった

豆腐を水槽から掬い上げるように

金魚をポイで掬うように

けん玉を皿に載せるように

全神経を腕や手先に集中して

初孫を抱いた

刻み始めた命の重さを感じる

 

孫と一緒の目じりが下がった

亡き学友の写真を思い出した

 

「おじいちゃん」と妻に呼ばれ

思わず顔を上げてしまった

シャッター音の中に

目じりを下げた私がいる

三つの命の年輪を感じながら

 

2023年6月28日 池田瑛子 選評

特急と年齢の対比。そうでしたか。

初孫との対面、新しい命に触れる厳粛な緊張が面白い形容で伝わりほほえましい

カメラに収まった三つの年輪が健やかに刻まれてゆきますように。