六条の御息所とのトラブルの後、葵の上の枕元に夜な夜な物の怪が訪れ、葵の上を責め苛むようになります。修験者を呼んで加持祈禱させても、執念深い物の怪が離れません。
「少し加持祈禱をゆるめてください。光さまに申し上げたいことがございます」
光が枕元で葵の上を慰めようとすると、
(原文)嘆きわび、空に乱るる わが魂を 結びとどめよ したがひのつま
(現代語) 悲しむあまり空にさまよっている私の魂を、下前の褄を結んでつなぎとめてください。
その歌を詠む顔は葵の上のものではなく、六条の御息所のものだった。
この後、物の怪は立ち去り、葵の上は男の子(夕霧)を生みます。光と葵の上は初めて心を通わせることができましたが、束の間目を離した隙に、葵の上は急死してしまいます。
大和和紀さんの漫画「あさきゆめみし」には初めて光に心を開いた葵の上の名セリフがあるので、ここで載せておきましょう。(その場面の画面ショットもあるとよかったのだけど)
「だれも教えてはくれなかった。人を愛したらどうやってそれを伝えたらいいのか…。愛にことばなどいらないのだ。愛したら、ただやさしくほほえむだけでいい…。それだけのことが、いまやっと…」