年末合宿は大晦日の昼に解散する日程で3泊4日だ。

あの日、僕と西条が同じ布団で寝た時から僕は彼女のことが気になって仕方がなかった。

そうだ、僕はもう彼女に恋をしている。これだけは、間違いないだろう。

友達だった人のことを急に好きになるということはよくあることだと聞く。

僕もそのパターンなのだろうか。

 

あの日、布団の中で西条が、寒いし、私、冷え性だからと言って僕の手を握ってきた。

彼女の手のひらは、彼女のボーイッシュな見た目からは考えられないほど柔らかくてまるでマシュマロみたいだった。

僕は、決定的に彼女が好きになってしまった。

 

朝、同じアラームで目を覚ますまでその手は繋がれたままだった。

 

彼女は僕のことをどう思っているのだろうか。

どんな思いで、僕の手を握って生きたのだろうか。

ひょっとして、僕のこと………

頭の中にいろいろな考えが巡っては消えてゆく。

その中心には常に西条がいた。

 

そして、明日から年末合宿だ。

僕は、いつも通り、彼女にこうメールしていた。

「合宿の前日の晩、泊めてもらえるかな?」

そして、いつもと同じ返事かかえってくるだろう、ほら

「いいよ!」

僕はバイトをしていたから、彼女の家に着くのは大体23時くらいになる。

行き道のコンビニで弁当を買って彼女の家の電子レンジで温める。

ずうずうしくもシャワーまで借りる。

まったく、自分でもよくわからない関係だ。と思う。

僕がシャワーから出てくると、彼女はパソコンに向かっていた。

無表情でキーボードを叩いている。

「忙しそうだね、宿題?」

濡れた髪の毛を手で乾かしながら僕は西条に問いかけた。

「うん、レポート書いてるの。大晦日までに先生に送らないとなんだけど、合宿中はこんなことやってる時間ないだろうから今晩中に終わらそうと思って」

「へー偉いね。僕なら諦めちゃうけどな、提出」

「そういうわけにはいかないよ。単位落として留年しちゃったら大変でしょ」

「留年かー。確かに留年を繰り返して人生狂っちゃう人もいるもんな」

「うん。だからできることは頑張らないと」

西条はキーボードから手を放し、僕の顔を見つめながら言った。

同じ同級生なのここまで意識の違いを見せつけられると、さすがに参ってしまう。

僕は話を合宿のことに逸らした。

「でも明日、朝早いよ。大丈夫なの?」

「大丈夫じゃないかも、私が起きなかったら全力で起こしてね。物部こそ今日は早く寝なさいよ。物部、朝弱いんだから。」

「うん、了解。じゃあお先に寝ようかな」

「うん。あそこに敷いてある布団使っていいよ。電気はこのリモコン使って消せるから。おやすみ」

こうして、僕は西条よりも先に寝ることになった。

布団に寝転んでリモコンで電気を消すと、パソコンの明かりに照らされた西条がぼんやりと見える。

部屋にはキーボードのカタカタという音だけが響いている。

僕は西条を横目に見た。

これが僕の好きな人か。と頭の中で思った。

一緒の部屋にいるだけでなんだか幸せな気持ちになる。

僕はいつの間にか眠りについていた。

今日が西条の部屋に遊びに行く最後の日になるということも知らずに。