私が受け持っている4つの大学での講義において、

リポートの提出は、すべて万年筆で書くを必須条件にしている。

 

これは、私の万年筆の師匠、足澤公彦氏に教わった、内言語を鍛える方法。

 

深く考え、的確な言葉を、誤字脱字なく

万年筆で紙に清書することは、学生にとって大切な脳の訓練であると、足澤氏。

 

本を黙読したり思考活動をしたりするときなどに心の中で用いられる具体的発声を伴わない言語を「内言語」という。

その一方で、音声を伴う言葉を「外言語」という。

 

万年筆で、間違えないように手書きすることは、思考活動につながる内言語を鍛えるのにとてもいいということで、数年前から取り入れている。

 

思考停止しがちな現代社会で、これから社会を支えていく若者たちに、ちゃんと考えて表現する力を持って社会に出て欲しい。

 

 

毎年、教え子たちに

「リポートは万年筆の手書きです。」というと、一度も使ったことがない学生が多いこともあり、最初は、エーーーーっとびっくりされる。

しかし、ボールペンより安価なものもあることや、また親御さんが持ってらっしゃるかもしれないので、借りてみては、、という話をすると、教え子たちの反応は、毎年予想以上に良い。

 

学生は、概ね文房具が好きだ。

そして、大人文具の代表格である万年筆を経験すると、ほとんどの教え子たちが、万年筆初体験を喜んでくれる。

 

親御さんから万年筆を借りることができた教え子は、

皆嬉しそうに、私に見せに来る。

そこには、万年筆にまつわるそれぞれのドラマがある。

お母様が、就職した時に初めてプレゼントされたというパイロットの万年筆。

お父様が長年愛用しているというモンブランの万年筆。

などなど、様々なエピソード付きで、教え子一人一人が

私に万年筆を見せに来てくれる。

 

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ちなみにこれは、青山学院女子短期大学の教え子が

「母から借りました」と見せに来てくれた

パイロットのヴィンテージ万年筆。

その凜とした佇まいに惚れ惚れする。

 

万年筆の貸し借りを通して、家族で生まれる会話の数々、、そんなことをも想像しながら目を通すリポート、

トータル何百枚で、読む時間も膨大ですが、なんとも温かい気持ちで仕事に臨める。

 

私の講義を履修してくれる学生たちに感謝、

さらに万年筆にも感謝の時間である。