ムソルグスキーの『展覧会の絵』を10種類聴き比べてみました。その感想です。

今回は
8.ギター版
9.シンセサイザー版
10.プログレロック版
です。


8.山下和仁編曲(ギター版):山下和仁 演奏

多重録音かと思ってしまいそうな演奏で、普通の6弦とは違って10弦とかの多弦ギターだと思っていました。しかし使っているのは6弦のガットギターで、多重録音もしてないとのこと。まず認識間違いを謝っておきます。高音と低音を同時に弾いているので多重録音かなと思ったのですが、これが山下さんの超絶技巧なのですね。「テュイルリーの庭」での高速パッセージなんて、クリス・インペリテリが聴いたら真っ青になりそう(←何故ここでメタルギタリストの名前を出すのか?)(笑)。ピアノ原典版が持つムソルグスキーの荒々しさがここで表現されていると感じました。「キエフの大門」の出だしがスロー過ぎるかな、とは思いましたが、後半部分で細かい音が連続する部分での弾くスピードを考えたら止むを得なかったのでしょう。


9.冨田勲編曲(シンセサイザー版):冨田勲 演奏

出だしの「プロムナード」。人の声のようなコーラスサウンドで始まります。この音が本作のキーサウンドになっています。今ならシンセの機種によってはプリセットで搭載されていそうな音ですが、当時のシンセサイザーは和音が出ませんでした。つまりこの作品全部、和音の所はもちろん、全ての細部に至るまで多重録音での制作となっています。しかもシーケンサーもない時代なので音を重ね合わせるのが大変。めっちゃ手間暇掛けてるのが分かります。完成までに7か月だったとのこと(←冨田さんは「『月の光』は14か月を費やしたので大幅にスピードアップした」と言っておられたようです)。他にもビヨヨヨ~ンなどのシンセサイザーならではのユニークなサウンドや、「テュイルリーの庭」でのピコピコサウンドなど、後のテクノサウンドに繋がる音もあります。「卵の殻をつけたひなの踊り」ではヒヨコとニワトリ(+ネコ)の追いかけっこを表現するなど、シンセの可能性を広げる作品になったと思います。編曲に関しては、ラヴェルが編曲したものから大きく逸脱したものがなく、オーケストレーションという意味でラヴェルを参考にしたかな?とも思いました。とにかく、サウンドに関しては未来の音を作っていたと言っても過言ではありません。


10.エマーソン&レイク、パーマー編曲(プログレロック版):EL&P 演奏

このヴァージョンを外すわけにはいきませんね(笑)。熱狂的歓声から始まるライブ盤。冒頭の「プロムナード」はホールのパイプオルガンを使用。その他の部分に現れる「プロムナード」ではキーボードを使っていて、サウンドチョイスにこだわりを持っていることを示しています。パーマーのドカドカドラムがいかにもロック的で、楽曲にパワーを与えています。エマーソンのキーボード演奏は巧みで過激。大胆なサウンドエフェクトはクラシックでは得られないものですね。ご存じの方も多いでしょうが、オリジナルで作った曲が入っています。3曲。その中の「The Sage(賢人)」はレイクのアコギで歌われる曲なのですが、私はつい最近まで「何故ここでオリジナル曲を挟むのだろう?」と訝しく思っておりました。この曲、原曲の「ビドロ(牛車)」とコード進行が同じなんですってね!「Blues Variation」は原曲の「古城」の変奏曲で、「バーバ・ヤーガの呪い」は言わずとも分かる「バーバ・ヤーガの小屋」の引用。結構、原曲を意識していたんだなと認識しました、今頃ですけど(笑)。ラストの「キエフの大門」でのレイクのシャウトやエマーソンのノイズプレイは鬼気迫るものがあります。このアルバムは日本のオリコンチャートで2位を獲得しており、プログレロックはもちろん、クラシックの入門的作品になったと言えるでしょう。


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