1973年12月14日、誤った内容の噂により豊川信用金庫に対して20億円の取り付け騒ぎが発生しました。
女子高校生が「信用金庫が危ない」という内容の冗談を友人らとしたことが発端で、「豊川信用金庫が倒産する」といったデマが広がり、預金者が殺到することになったものです。
女子高生3人の雑談がきっかけで、以下のように言葉がデマに変化していきました。
・「信用金庫は(強盗が入ったりするから)危ないよ」とからかう
→・「信用金庫は(経営的に)危ないのか?」(ここで危険の内容がすり替わる)
→・「豊川信金は危ないのか?」(ここで信用金庫名が特定される)
→・「豊川信金は危ないらしい」(ここで憶測が入る)
→・「豊川信金は危ない」(ここで断定調に言葉が変化)
ここから主婦の間で話題が広がり、そこにアマチュア無線愛好家が無線を用いて噂を広範囲に広めてしまいます。噂を聞いた預金者が信金窓口に殺到し、12月13日~14日の2日間で約4,890人の預金者が訪れ、合計で約26億円もの預金・積金が引き出されました。窓口は払い戻しを求める人々で大混乱に陥り、一種のパニック状態となりました。この時に「職員の使い込みが原因」、「5億円を職員が持ち逃げした」などの二次デマがさらに発生し、混乱に拍車を掛けました。
事態を重く見た大蔵省(現・財務省)や日本銀行(日銀)が、「豊川信用金庫の経営に問題はない」との公式見解を発表するなどして混乱を鎮め、公的機関による介入や報道によって信用不安は次第に解消され、事態は収束に向かいました。
しかし、その後も「3人のうわさ話がここまで大きくなるはずはない。裏に組織的な陰謀があり、警察発表は政治的なものだ」などと主張する者が現れたりして、デマが完全に消滅するのには時間が掛かりました。
[現代のデマ]
当時は口コミのみの伝搬だったのですが、近年はSNSの発達により拡散スピードが非常に速いという特徴があり、真実よりも6倍速く広まるという研究結果もあります。特に問題なのは「災害時のデマ」「(コロナウイルスなどによる)健康被害に関する虚偽情報」「政治・選挙に関するデマ」の3点が挙げられます。人々の不安や「許せない」といった強い感情に訴えかける内容が多いため、騙されやすく、拡散されやすい傾向にあります。情報の真偽を確かめる習慣を身に付けることが重要です。
1. 一次情報・発信元を確認する
2. 複数の情報源を比較する
3. 情報が感情的かどうかを見極める
4. 拡散する前に本当に正しい情報かを確認する
5. 「事実」と「意見」を区別する
この5点を肝に銘じてデマの拡散防止に努めたいですね。