負けない作法

帝京大学ラグビー部監督

岩出雅之

帝京大学准教授

森吉弘共著

集英社刊

2015年3月31日第1刷発行 より引用・転載します

 

作法0(ゼロ) 

常に行う「超基本」

 

「作法」とは何か

  

  大学選手権で結果を残せるようになって6年。帝京大学ラグビー部監督になってからを考えれば、18年もの歳月をかけて、どうしたら勝てるのか、どうしたら強いチームをつくれるのかと、ずっと考え続け、実践し続けてきました。

  そして今、どの大学も経験したことのない、6連覇を達成した現段階で言えるのは、

『負けない』ための方法はある、ということです。

 

  しかし、なかなかそれをやり続けることは難しい。功を焦り、「勝ち」を意識しすぎたとき、あるいはさまざまな誘惑や不安などで自分を見失ってしまったとき、方法はわかっているのに、それを続けることができなくなってしまうのです。

  当然のことです。

  目の前にどうしても手にしたかった勝利が見えてきたり、逆に、解決の糸口さえ見えない問題にぶつかったりしたら、誰でも自分を見失ってしまうでしょう。精神を集中したり、気合いを入れれば、なんとかできるくらいであれば、そのような状態にはなりません。

 

  それでも、『負けない』ためには、どうしても身につけなければならないことがあります。もはやそれは、

ハウツーというより「作法」に近いものです。

  この段階から、学生に細かく指導を入れていくことこそが、

『負けない』ための「超基本」であると、私は考えています。

 

  「作法」とは、どんな状態であっても、そのことはとりあえず横に置いといて、

ともかくも行う決まり事のことです。

自分の調子が良かろうが悪かろうが関係ない。

必ずしなければならない儀式、と言い換えてもいいかもしれません。

 

  決まった方法で、決まった内容を行うこと。

 順番を変えてもいけません。

 

  辛いときや苦しいときはもちろん、うれしくて興奮しているとき、あるいは落ち着いている普通の精神状態のときでも行います。

  つまり、

習慣にすることが何よりも大切だ、ということです。

 

なぜ「作法」が必要なのか 

 

  なぜこうした「作法」が必要になるのでしょうか。

  それは、自分で自分自身を整える術を身につけることが、

『負けない』ための絶対条件だからです。

 

  ラグビーなどのスポーツであろうが、仕事の現場であろうが変わりません。

  人間がよりよく生きていくためのベースには、大切な身体がしっかり守られ、安心して生活でき、命が保たれているといった、安全が確保されていることが前提となります。

  つまり、食べる・眠る・排泄するなどの基本的な動作が、身の危険を感じずに行えることが何より大事なのです。

 

  子ども時代は、親や保護者が私たちの安心・安全を整えてくれていました。あまりにも当たり前のこととして、子ども時代は何の疑問もなく、与えてもらった環境を享受していますが、大人になれば、それを自分で整えられるようにならなければなりません。

  食事や洗濯、掃除などの身の回りのことを、いまだに親や後輩などほかの人に任せている人もいるでしょう。しかし、それではいつまでたっても、『負けない』作法を身につけることはできません。

 

  本書では、この『負けない』作法を、[作法1]から[作法4]まで、大きく4つに分けてわかりやすくお伝えしますが、その大前提となるのが、ここで説明する[作法0]、すなわち、自分で自分を整える術です。

必ず身につけなければならない基本中の基本であるため、あえて「0」とつけました。この、超基本である[作法0]が自分でできるようにならなければ、たとえ[作法1]以降を知ったとしても使いこなせません。

 

[作法0]自分をニュートラルに保つ5つの基本 

 

  本書では『負けない』作法を紹介していますが、

この作法を学んでいく上でとても大切な姿勢があります。

 

自分をニュートラルな状態に置く。

 

  これが、作法すべてのスタートであり、目的だと理解してください。

[作法2]でくわしく解説するので、今は言葉だけを言葉だけを記憶にとどめておいていただきたいのですが、

『負けない』作法の中核となっている

『二軸思考』という考え方

があります。常に物事の二つの面を見ていくこの思考法も、

基準となる自分が中立のニュートラルな状態にいなければ、有効に使うことができません。

  この状態を実現し、『二軸思考』をフル活用していくためにも、

やはり[作法0]が、すべての大前提、基本中の基本である、と言えるのです。

  前述しましたが、目の前に勝利が見えてきたり、解決の糸口さえ見いだせない課題にぶつかったりと、人生にはさまざまなことが起ります。そんなとき、ほとんどの人は、自分を見失ってしまう。目の前の現象に振り回されて、いつもの自分、すなわち自分のニュートラルな状態が崩れてしまうのです。

  ラグビーでも同じです。試合や練習で疲れたり、あるいは興奮しすぎたりしたときには、

疲れてもおらず、また興奮しすぎてもいない

「真ん中に位置している自分」がわからなくなってしまいます。

 

  『負けない』ためには、できるかぎり早く、そのようなアンバランスな状態から脱しなければなりません。いかに自分を二つの軸の中心、つまり真ん中に置けるか。いかに早くニュートラルな状態に戻すかが、鍵を握るのです。

  [作法0]は、

自分をニュートラルにするため

の作法です。自分がアンバランスな状態になったとき、ともかくも作法を手順通りに行うことに集中することで、自分を通常に戻し、整えていくことができます。では、その5つの基本を紹介しましょう。

 

1 環境を整える 

 

  帝京大学ラグビー部を訪れた方の中には、グラウンドはもとより、クラブハウスも寮も、清潔に整えられていることに驚かれる方が多いようです。

  「とても体育会のクラブハウスとは思えない」

  そんな言葉を何度も頂戴しました。

  ゴミ一つ落ちておらず、土足厳禁の玄関先には、選手たちのシューズがいつも整然と並べられていますし、クラブハウスに訪問された方の靴も、帰られるときにはしかるべきところに丁寧に置かれています。

  これはもちろん、選手たち自身が行っていることです。

 

  監督である私が、練習よりもまず先に意識するのが、

環境設定。グラウンドのコンディションを整えることはもとより、周辺のゴミ拾いも徹底します。

  時には、練習をストップさせて、選手たちに掃除をさせることもあります。

  罰などではありません。

  雑然とした環境、たとえば、ゴミや石がその辺りに落ちているような状態では、安心してプレーができないからです。

  ご存じの通り、ラグビーは非常に激しいスポーツです。たった一回のケガで、人生を棒に振るような事態に陥ってしまうこともあります。

  何よりも先に、ケガを防ぎ、安心してプレーができる安全な環境を整えること、それも自分たちで行うこと、が重要なのです。

 

  ビジネスマンや一般学生であれば、それは仕事のデスク回りの整理整頓であったり、自室の清掃であったりするでしょう。社員が使う会議室なども同じことが言えます。

  「散らかっていたほうが集中できる」などと言う人もいるかもしれませんが、必要なときに必要な書類がすぐに見つからなかったり、人前に出るというのにしわだらけの服しかなかったりでは、それは『負けない』以前の話ではないでしょうか。

  雑然としたオフィスの中では、スムーズなコミュニケーションも取れないばかりか、新しいアイデアも生まれないことでしょう。

  勝ち・負け以前に、その土俵にも立てていない状態があることを理解してほしいと思います。

 

  自分の身の回りの環境を自分で整えると、何が変わるでしょうか。

  環境がだんだん整えられていくばかりか、自分自身もきちっとしていく中で生まれる空気感に、清々しい気持ちになれるのではないでしょうか。自ずと自分の気持ちも整えられるはずです。

 

2 身体のコンディションを整える 

 

  疲れているときに、心を集中させるのは難しくないですか?

  痛みがあるときに、気持ちを高めることはなかなかできませんよね?

 

  環境を整えた後には、身体のコンディションを整えます。

  ラグビー部では、定期的に血液検査をして、身体の状態を数値として、客観的に把握することを徹底しています。

 

  体調の良し悪しは、本人の感覚だけでは正確に把握できません。

  不安があったり、焦りがあったりと、精神の状態で、その感覚は時としてブレてしまうからです。

  その点、

きちんと検査をし、数値を測れば、状態を客観的につかむことができます。

  結果、本人が「大丈夫だ」と言っても、数値次第では、安静にしたほうがいい場合もあります。

  しっかりした良い頑張りは、しっかりとした心身の状態から生まれる私はそう考えています。

 

  身体が整うと、マインド、すなわち精神状態も落ち着いた状態に戻っています。

  言い換えれば、マインドの状態は、身体の調子によって支えられているのです。

 

  スポーツ選手でなければ、そこまで頻繁な血液検査、健康診断などは不要でしょう。でも、疲労や痛みがあれば、速やかにそれに対応することを意識すべきです。

  体温や体重は毎日、測れるのではないでしょうか。減量などをめざしていなくても、そうすることで、ある程度の自分の健康状態を客観的につかんでおくことはできます。

  睡眠時間や食事内容も意識したほうがいいでしょう。休息の状況や、どんな食事をどれくらい摂っているのかということを記録しておくだけでも、自分の身体のコンディションに意識を向けられるはずです。

 

  自分が「調子が良い」と感じるときは、どのようなときなのか。それを数値で理解しておくというわけです。

  自分なりの感覚も大切ですが、自分が「調子が良い」と感じるとき、それはどれくらい睡眠を取っているときなのかとか、何時にどのような食べ物をどれくらい摂ったときなのか、などという客観的条件をあらかじめつかんでおき、身体のコンディションを整える際には、まずその条件に沿って行動できるようになれたら、コンディションもより調整しやすくなるはずです。

 

  つまり、自分なりの調整方法をつかんでおく、ということです。

 

  物事がうまくいかないと感じるとき、環境を整えた後は、自分の身体をチェックしてください。体調が悪ければ病院に行く、疲れていれば休む。そんな当たり前のことを、誰かに言われる前に、自分で決めて、自分で行えること

  そして、どのようにすれば、自分の体調が上向いてくるのか、その方法を把握しておくこと。

  こうすることで、自らの手で身体のコンディションを整えられるようになると、超基本である[作法0]の半分はできたことになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[目次]

はじめに 11

勝ち負けは、結果にすぎない 12

帝京大学のチームづくりは「自分づくり」から 14

 

作法0(ゼロ) 常に行う「超基本」・・・17

「作法」とは何か 18

なぜ「作法」が必要なのか 20

[作法0]自分をニュートラルに保つ5つの基本 21

1 環境を整える 23

2 身体のコンディションを整える 26

3 マインドのコンディションを整える 29

4 振り返りをすぐに行う、何度も行う 31

5 丁寧に日常生活を送る 34

[作法0]では、行動の習慣化をめざすのが目標 37

 

作法1 自分を知り、自分をつくる・・・41

「幸せ」とは何か 42

幸せの第一段階「授かる幸せ」 45

幸せの第二段階「できる幸せ」 47

自己実現こそ「できる幸せ」の究極の形 49

幸せの最終段階「与える幸せ」 51

「自分づくり」は「自分を大切にする」ことから 54

余裕ができなければ周囲が見えない 56

どのように「自分づくり」を進めるか 58

自分の強みと弱みを把握するには 61

自分の「ニュートラルな状態」を知る 63

自分を見つめることは難しい 64

感性をくすぐることから始めよう 66

めざすのは「気骨」のある人間 68

「気骨」に必要なもの 70

[作法1]では、余裕を生むことが目標 72

自分づくりの次は、仲間づくり 74

 

岩出雅之×森吉弘 対談1・・・77

「時代が変わっても、人間の本質は変わらない」~現代の若者像とは?

対談の前に---編集部より 78

人は今も昔も変わらない 79

「今の若者は~」という言い方は間違っている 82

「ハングリーであること」は、人間の本質 85

自然に移行できるような環境を設定する 87

人間の本質は変わらない。ただアプローチが違う 90

 

作法2 『負けない』極意・・・93

『負けない』極意とは何か 94

勝ち負けで大切なこととは? 96

『負けない』状態とは何か? 98

勝ったときでも考える 101

「真ん中に立つ」ことの大切さとは 104

悲観と楽観は同じ線上にある 105

悲観的に準備し、楽観的に実践する 107

気迫と集中力があればいい、というわけではない 109

マニュアルに沿って行動しながらも、マニュアルにとらわれない 111

ピンチを楽しむ心境とは 113

「瞬間」を楽しむ 115

見えないことを気にし始めるとプレッシャーになる 117

過去を手放して、未来を見据える 121

心の体力をつける 123

相手を知る 125

相手よりも少し上をめざす 127

気迫をつくるトレーニング 129

感情だけではダメだが、感情がなくてもダメ 132

 

作法3 『負けない』仲間づくり・・・137

社会が求めることは 138

「仲間のため」の落とし穴 140

その行動は、「献身」か「貢献」か 143

勝者の裏にはたくさんの敗者がいる 146

勘違いするリーダーとは 148

しっかりした行動の手本をつくる 150

余裕をつくる 152

隙間を埋める 155

「リスペクト」を捉え直す 158

尊敬のジャージ 161

楽しく、厳しく、そして温かく 163

意識するのは、仲間との付き合い方 165

 

岩出雅之×森吉弘 対談2・・・171

リーダーに求められるのは「マメであること」~リーダーシップとは?

「俺についてこい!」というリーダーは時代遅れ? 172

誰でもリーダーになれる。なる可能性がある 174

リーダーを選ぶ段階から、仲間づくりがスタートする 177

リーダーに必要な、もっとも大切な能力とは? 180

リーダーの新しい形とは何か? 183

 

作法4 長い人生で『負けない』ために・・・185

「自分で考える」ことの大切さ 186

5W1Hを意識して、行動を振り返る 189

「考える→わかる→できる→楽しい」のサイクルを続ける 191

「想像」と「創造」は違う 193

人生を25年区切りで考える 195

プランニングがあるから「過去」に意味が生まれる 197

勝ってもいい、負けてもいい 200

心の逃げ道をつくる 201

守ることは4つだけ 203

”ねんざ”をしないで生きる 206

誠実な人は、最終的に必ず力をつける 208

 

岩出雅之×森吉弘 対談3・・・213

「未来に続くキャリア」はどうつくる? ~本物のキャリアとは?

20代のキャリアは、40代50代のための”支度” 214

うれしさも、悔しさも、エネルギーに変えられる 217

『負けない』ために必要な強さを身につけるには? 219

必要な自分のできること」を探すこと 221

社会で求められる知性は、計画と挑戦から生まれる 225

 

おわりに 229

今回の反省で見えてきたこと 230

この負けが、未来の準備に変わる 233

厳しさだけが、真の強さをつくるわけではない 235

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大丈夫、なんとかなる 
今日一日に出会った全ての人々に感謝 
いい夢を見て下さい 
おやすみなさい


 

 

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≪口だけで、描く男。≫

 

 

flatman.『グロブログロググ‐‐タジログ‐‐』

 

脊髄損傷で寝たきり。
首から下がまったく動かない。


 

それでも、
プロの絵描きになることを本気で目指している。


製本職人の祖父の影響で
紙とペンを玩具に幼い頃を過ごす。
言葉より先に絵を描く事を覚えた。
絵を描く事は日常の一部で
欠かす事の出来ない大切な事だった。

幼い頃に父を亡くし、
それ以来、
不安定な精神状態を
落ち着かせるのも絵を描く事だった。

高校生の頃にドロップアウトする。
その間も精神を安定させるために
ただひたすら描き続けた。

しかし、数年後に社会的に復帰してからは
絵に対して真摯に向き合うことが出来なくなった。

描かないままそのうちに
いつか描けるようになるだろう、
またその時に描けばいいと思いながら
大学生活を過ごしていた。

21歳の春、絵と同じくらい自分とって大切で、
生活の中心になっていた
スノーボードの事故で首の骨を骨折し、
脊髄損傷で首から下の体の自由を失う。
いつでも描けるだろうと思っていた絵を描く事が
本当に出来なくなってしまった。

筆を口にくわえて絵を描いている
作家が何人もいるのは知ってはいたが、
もう動く事が出来ないと認る勇気が無く
自分は筆をくわえる事は出来なかった。

寝たきりになってから全く描けないでいたが
最近になって描く事に対する欲求には勝てないと感じ
口だけでPCを操作し描き始めた。

今思う事、『なぜ描ける時に思う存分描かなかったのか。』



 

自己紹介

はじめまして。
flatman.です。
スノーボードによる事故のため、
頚椎部脊髄損傷(C4・C5)
(cervical spinal cord injury)で
首から下の自由を失いました。
病院のベッドで寝たきりです。
それでも口だけでPCを操作し、
絵を描いています。

 

flatman.『グロブログロググ‐‐タジログ‐‐』



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仕事のご依頼を頂けると、とても嬉しいです。
宜しくお願いします。
 

まずはメッセージを頂けると
大変ありがたいです。
   

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