負けない作法

帝京大学ラグビー部監督

岩出雅之

帝京大学准教授

森吉弘共著

集英社刊

2015年3月31日第1刷発行 より引用・転載します

 

 

おわりに

 

今回の反省で見えてきたこと

  

  本書では、私が20年近くをかけて、いや、教員になってからを考えれば、30年以上もの時間をかけて考え、そうして実践していく中で、一つひとつ積み上げてきた選手の強化、チームづくりのノウハウをまとめることにチャレンジしました。

  それを指導法ではなく『負けない』作法として、選手自身、一般の学生、社会人が自ら取り組めるように書き換えてみましたが、いかがでしたでしょうか?

 

  そして今、最後に、この「おわりに」を書いていますが、実は2015年2月に、ラグビーの日本一を決める日本選手権2回戦で、トップリーグの東芝プレイブ・ルーパスに負けたばかりなのです。『負けない』作法を紹介しながら、その最後の締めくくりの原稿を書く前に負けたとは、このタイミングの良さに思わず笑ってしまいました。

 

  本書をここまで読んでくださった方にはわかるはずです。

 

  何度も繰り返してきましたが、勝ち負けとは、相手との相関関係で決まる。どんなことが理由になってもいい。そのとき、相手より自分のほうが少しでも上であったら勝てるし、反対に、自分のほうが実力が上であってもそれを出し切れなければ負けるのです。

  大学選手権で優勝した直後に書いた「はじめに」でも触れましたが、すでに私の身からは、この敗北も離れています。

  勝敗とは単なる結果。それに感情が揺れ続けることはありません。悔しさを感じるのは一瞬。その後は、この試合の振り返りを猛烈なスピードで行っていました。

 

  敗因は、選手のせいではまったくありません。

  単純に、監督である私の力量が、この試合に勝てるまでではなかったということです。

 

  ほかのスポーツでも同じですが、学生と社会人との実力差には非常に大きなものがあります。プレーの技術もさることながら、筋肉量、体格など、身体づくりからフィジカル面でも負けてしまいがちです。もちろんメンタル面も同様です。

  ラグビーにおいては、近年ますますこの差が開いてきており、トップリーグの社会人チームに大学チームが勝利したのは、2005年度の早稲田大学の勝利以降はずっとありませんでした。

  しかし私は、日本選手権でトップリーグに勝つという目標を掲げて、この2年、チームづくりに取り組んできました。

  本書で書いてきたように、楽観的な時期に、悲観的なトレーニングを重ね、さらにチーム運営についても悲観的に検討し、勝てる環境づくり、サポート体制を緻密に整え続けています。

  昨年は結果を出せませんでしたが、今年は念願通り、日本選手権の1回戦でNECグリーンロケッツに勝利することができ、「金星を挙げた」などとメディアに報道されることになりました。

  ところが、それだけでは足りなかった。ここに書き連ねれば、いくらでも修正すべきポイント、次に行うべきことを挙げることができますが、要は、敗因は私の準備不足です。それ以上でもそれ以下でもありません。

  本当にトップリーグに勝ち続けるには、非現実的であろうがなかろうが、日本選手権で優勝するつまり、日本一のチームになること目標に設定すべきなのだということが、今回の敗戦で実感を持って理解できた次第です。

  本書では、負けも未来への準備だと書きました。

  負けることで、「こうすればいいのではないか」「こうすれば勝てるのではないか」という方法がより明確になるのです。

  たしかに今は悔しいかもしれない。しかし、人生はまだまだずっと続いていくのです。

 

この負けが、未来の準備に変わる

 

  とはいえ、まだ若い選手や部員にとって、この負けをそのまますぐに次に生かせるようになるまでには、もう少し時間がかかるかもしれません。

  試合直後は、泣きじゃくる選手たちをねぎらいながら、この負けた経験をどうすれば未来に生かせるのか、未来への準備としてどのようにこの負けを捉えたらいいのかを、しっかりアドバイスしていきたいと思っていました。

 

  一方で、選手たちの涙を評価してくださる人たちもいました。

  ラグビーでの、トップリーグと大学チームのレベルの差を知る人であれば、トップリーグでもさらに上位に位置する東芝に負けながら、帝京大学の選手たちが大粒の涙を流していた、と。「勝つ気でいた」ということに驚かれるとともに、相手チームのヘッドコーチからは「勝てるという可能性を感じさせてしまっていたとしたら、我々はトップリーグのチームとしてその責任を果たせなかったことになる」とのコメントも飛び出していました。

  また、選手たちの戦いぶりにも、監督の私が言うのも恥ずかしいことではありますが、競技場にいた観客の皆さんから温かい拍手とご声援をいただけていたと感じました。テレビ観戦していたという関係者からも、非常に胸を打つ戦いぶりだったと、数多くお声かけいただきました。

 

  選手たちは、この負けがもたらしてくれたこと、意味の深さを、真の意味でまだ消化できていないことでしょう。

  しかし、本書でも書いています。勝ったもよかった、負けてもよかった、と感じられるときが必ず来ると

  選手たちには、振り返りをすぐに行うこと、しかも何度も行うことが徹底されています。この負けがただの経験になることはあり得ません。この負けが、彼らの未来の準備に変わるのも、そう遠い話ではないと思っています。

 

厳しさだけが、真の強さをつくるわけではない

 

  大学選手権で優勝を重ねるようになると、帝京大学の強さはどこにあるのか、ということをさまざま分析いただくようになりました。

  相手チームの分析、戦術の設計などについては、もちろん努力しています。チームの監督として、勝利にまったくこだわらないということはない。前述しましたが、むしろ今度は日本一のチームをつくるために、あらゆる準備を悲観的に想定しながら再構築することになるのでしょう。

 

  でも、もう一つ伝えたいのは、私はラグビー部の監督であると同時に、教員でもある、ということです。チームが強くなることだけに注力しているわけではありません。

  「はじめに」や本文にも書いたように、最終的に見据えているのは、部員たちの25年後の未来であり、社会に出てからの幸せです。

  帝京大学ラグビー部を訪れた人に、ときどき驚かれることがあります。

  180センチ以上、100キロ近い選手を見れば、ラグビー選手を見慣れていない人たちは驚いてしまうでしょう。まさに巨体そのもの。そんな身体つきの部員たちをまるで我が子のように慈しんでいると。

  また、私たちスタッフと語らう部員を見て、「愛情いっぱいに育てられているのがわかる」「愛されて育っていることが伝わってきた」とおっしゃってくださった人もいました。

  ほめ言葉として、ありがたく頂戴しました。

  [作法1]では「授かる幸せ」「できる幸せ」を存分に感じてエネルギーを蓄えてはじめて、他人のために働くことができると書きました。

  私たちは、彼らの第二第三の保護者、あるいは兄姉として、彼らを大切におあずかりしているつもりです。

  しかし、真の親ではない。楽しく、でも厳しく、そして温かい関係を心がけています。

 

  最後に少し書きますが、今の指導者に足りないのは、こういう姿勢なのではないでしょうか。力を蓄えるには、まずたくさんの幸せを感じられる環境づくりが大切だと思います。厳しさだけが、真の強さをつくるわけではありません

 

  さて、帝京大学ラグビー部は、私だけで運営しているわけではありません。たくさんのスタッフに支えられて、ここまでやってきました。そしてまた、今回の敗戦から、次にすべきことがより明確になり、これまで以上に悲観的かつ楽観的に前に進んで行けたらと思います。

 

  大学当局の皆さん、スポーツ医科学センターの皆さん、コーチングスタッフたち、ゲームや練習で胸をお借りしたトップリーグの方々には、心から感謝を申し上げます。

 

  そのときの勝負に負けても、その捉え方ひとつで、その負けは負けではなくなります。そして、長い人生において、その考え方を持ってすれば決して負けることはありません。皆さんの人生がますます幸せなものになりますように、心からお祈りします。

                                               2015年2月

                              帝京大学ラグビー部監督  岩出雅之

  

 

 

[目次]

はじめに 11

勝ち負けは、結果にすぎない 12

帝京大学のチームづくりは「自分づくり」から 14

 

作法0(ゼロ) 常に行う「超基本」・・・17

「作法」とは何か 18

なぜ「作法」が必要なのか 20

[作法0]自分をニュートラルに保つ5つの基本 21

1 環境を整える 23

2 身体のコンディションを整える 26

3 マインドのコンディションを整える 29

4 振り返りをすぐに行う、何度も行う 31

5 丁寧に日常生活を送る 34

[作法0]では、行動の習慣化をめざすのが目標 37

 

作法1 自分を知り、自分をつくる・・・41

「幸せ」とは何か 42

幸せの第一段階「授かる幸せ」 45

幸せの第二段階「できる幸せ」 47

自己実現こそ「できる幸せ」の究極の形 49

幸せの最終段階「与える幸せ」 51

「自分づくり」は「自分を大切にする」ことから 54

余裕ができなければ周囲が見えない 56

どのように「自分づくり」を進めるか 58

自分の強みと弱みを把握するには 61

自分の「ニュートラルな状態」を知る 63

自分を見つめることは難しい 64

感性をくすぐることから始めよう 66

めざすのは「気骨」のある人間 68

「気骨」に必要なもの 70

[作法1]では、余裕を生むことが目標 72

自分づくりの次は、仲間づくり 74

 

岩出雅之×森吉弘 対談1・・・77

「時代が変わっても、人間の本質は変わらない」~現代の若者像とは?

対談の前に---編集部より 78

人は今も昔も変わらない 79

「今の若者は~」という言い方は間違っている 82

「ハングリーであること」は、人間の本質 85

自然に移行できるような環境を設定する 87

人間の本質は変わらない。ただアプローチが違う 90

 

作法2 『負けない』極意・・・93

『負けない』極意とは何か 94

勝ち負けで大切なこととは? 96

『負けない』状態とは何か? 98

勝ったときでも考える 101

「真ん中に立つ」ことの大切さとは 104

悲観と楽観は同じ線上にある 105

悲観的に準備し、楽観的に実践する 107

気迫と集中力があればいい、というわけではない 109

マニュアルに沿って行動しながらも、マニュアルにとらわれない 111

ピンチを楽しむ心境とは 113

「瞬間」を楽しむ 115

見えないことを気にし始めるとプレッシャーになる 117

過去を手放して、未来を見据える 121

心の体力をつける 123

相手を知る 125

相手よりも少し上をめざす 127

気迫をつくるトレーニング 129

感情だけではダメだが、感情がなくてもダメ 132

 

作法3 『負けない』仲間づくり・・・137

社会が求めることは 138

「仲間のため」の落とし穴 140

その行動は、「献身」か「貢献」か 143

勝者の裏にはたくさんの敗者がいる 146

勘違いするリーダーとは 148

しっかりした行動の手本をつくる 150

余裕をつくる 152

隙間を埋める 155

「リスペクト」を捉え直す 158

尊敬のジャージ 161

楽しく、厳しく、そして温かく 163

意識するのは、仲間との付き合い方 165

 

岩出雅之×森吉弘 対談2・・・171

リーダーに求められるのは「マメであること」~リーダーシップとは?

「俺についてこい!」というリーダーは時代遅れ? 172

誰でもリーダーになれる。なる可能性がある 174

リーダーを選ぶ段階から、仲間づくりがスタートする 177

リーダーに必要な、もっとも大切な能力とは? 180

リーダーの新しい形とは何か? 183

 

作法4 長い人生で『負けない』ために・・・185

「自分で考える」ことの大切さ 186

5W1Hを意識して、行動を振り返る 189

「考える→わかる→できる→楽しい」のサイクルを続ける 191

「想像」と「創造」は違う 193

人生を25年区切りで考える 195

プランニングがあるから「過去」に意味が生まれる 197

勝ってもいい、負けてもいい 200

心の逃げ道をつくる 201

守ることは4つだけ 203

”ねんざ”をしないで生きる 206

誠実な人は、最終的に必ず力をつける 208

 

岩出雅之×森吉弘 対談3・・・213

「未来に続くキャリア」はどうつくる? ~本物のキャリアとは?

20代のキャリアは、40代50代のための”支度” 214

うれしさも、悔しさも、エネルギーに変えられる 217

『負けない』ために必要な強さを身につけるには? 219

必要な自分のできること」を探すこと 221

社会で求められる知性は、計画と挑戦から生まれる 225

 

おわりに 229

今回の反省で見えてきたこと 230

この負けが、未来の準備に変わる 233

厳しさだけが、真の強さをつくるわけではない 235

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大丈夫、なんとかなる 
今日一日に出会った全ての人々に感謝 
いい夢を見て下さい 
おやすみなさい

 

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≪口だけで、描く男。≫

 

 

flatman.『グロブログロググ‐‐タジログ‐‐』

 

脊髄損傷で寝たきり。
首から下がまったく動かない。


 

それでも、
プロの絵描きになることを本気で目指している。


製本職人の祖父の影響で
紙とペンを玩具に幼い頃を過ごす。
言葉より先に絵を描く事を覚えた。
絵を描く事は日常の一部で
欠かす事の出来ない大切な事だった。

幼い頃に父を亡くし、
それ以来、
不安定な精神状態を
落ち着かせるのも絵を描く事だった。

高校生の頃にドロップアウトする。
その間も精神を安定させるために
ただひたすら描き続けた。

しかし、数年後に社会的に復帰してからは
絵に対して真摯に向き合うことが出来なくなった。

描かないままそのうちに
いつか描けるようになるだろう、
またその時に描けばいいと思いながら
大学生活を過ごしていた。

21歳の春、絵と同じくらい自分とって大切で、
生活の中心になっていた
スノーボードの事故で首の骨を骨折し、
脊髄損傷で首から下の体の自由を失う。
いつでも描けるだろうと思っていた絵を描く事が
本当に出来なくなってしまった。

筆を口にくわえて絵を描いている
作家が何人もいるのは知ってはいたが、
もう動く事が出来ないと認る勇気が無く
自分は筆をくわえる事は出来なかった。

寝たきりになってから全く描けないでいたが
最近になって描く事に対する欲求には勝てないと感じ
口だけでPCを操作し描き始めた。

今思う事、『なぜ描ける時に思う存分描かなかったのか。』



 

自己紹介

はじめまして。
flatman.です。
スノーボードによる事故のため、
頚椎部脊髄損傷(C4・C5)
(cervical spinal cord injury)で
首から下の自由を失いました。
病院のベッドで寝たきりです。
それでも口だけでPCを操作し、
絵を描いています。

 

flatman.『グロブログロググ‐‐タジログ‐‐』



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仕事のご依頼を頂けると、とても嬉しいです。
宜しくお願いします。
 

まずはメッセージを頂けると
大変ありがたいです。
   

E-Mail: flatman.art@sj9.so-net.ne.jp
 

 

 

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