私の旦那はガラス作家をやっている。
これは旦那と私の合作www
旦那とは、小樽のガラス工房で知り合ったんだけどね。
私が就職して働いていたところに
旦那が後から入ってきて。
私の働いていた工房は、関西の職人叩き上げみたいな人たちが開いたところで
みんな根はいい人たちだったけど
とにかく言葉が荒い。
そして
技術は盗むもの、昔は見習いは一銭だってもらえなかったのだから
みたいな考えの会社でね。
次から次へと人が辞めていった。
何かを作りたいと思っても
生地巻き３年玉取り５年
だったかな？
逆か？(^◇^;)
それすら忘れたけどwww
とにかく下積みを積んでからでないと
技術もない奴が何言ってる
みたいな感じだった。
それを否定するわけじゃないよ。ただ、そーいうところだった、ということね。
そんな中で、旦那は
私がどんな突拍子もないアイディアを出して
「こーゆーの作りたいんだよねー！！」
って言っても
絶対に無理だとか、できないだとか
言わなかった。
「こうやればできますよ。」
「これでダメならあの方法でやってみましょう。」
って、どうやったらそのアイディアが実現可能かアドバイスをくれた。
そして、仕事が終わった後に
アシスタントを買って出てくれた。
これも旦那に手伝ってもらって作ったもの。
一度だけ、私のガラス作品がコンテストに入賞したことがある。
ビアマグランカイというビアグラスのコンテスト。
白樺林の向こうに見える日の光
それを表現したいと思って
透明のガラスの表面を白のパウダーで覆ったグラスに
サンドブラストという技法を施して、表面のガラスを削いで冬の北海道の白樺林を表現した。
白樺林の枝々の向こう
ガラスを削って透明になった部分から
ビールの黄金色が木漏れ日のように見えるグラス。
それは私の技術では到底作り得ない作品で
木の枝葉のスケッチの仕方から
旦那に教えてもらい
出来上がったものだった。
絵で表現するときに
大事なのは本物そのままに書くことでなく
本物に見える説得力があるかどうか。
そんな話をしてくれたことを今でも覚えている。
このグラスを制作していた時
サンドブラストで林の模様を彫り込んだものを
再び電気炉で温めなおしてポンテを取り（ガラスの底にポンテ竿っていう棒をつけて作業すること）
ファイヤーポリッシュという技法で、表面を火で熱して、ガラスの透明感を出す
ということをやったんだけどね。
加工したグラス、二つ用意してあって。
一個目、割れたんだよね。
何日もかけて模様を彫り込んだやつが
パリーン てなったわけ。
( ﾟ∀ﾟ )ちーん。
もーーーーそこでメンタル折れるよね。
ガラスってさぁ、ほんと勝負が一瞬なのよ。
割れたらそこでおしまいでしょ？
メンタルが弱い人は扱えない素材だと思うんだよね。
一個目がピキッといった時、旦那は即座に
「原因はわかってますので、次は多分大丈夫です。」
って言ったんだ。
ポンテ竿の先のガラスと
電気炉で加熱していたグラスの温度差が大きかったのが原因だと。
そして、旦那が言った通り
二つ目は無事に完成した。
「ガラスはお金にならないから」
教員の方が稼げる。私がガラスをやめた一番の理由はそこだったけど
もう一つ理由があってね。
「こんな緊張に自分は耐えられない」
そう思ったんだよね。
一瞬のミスで
全てが０になる。
そのダメージの大きさ。
なんでうまく行かなかったかを即座に吸収して
次に向かえない人には
ガラスやってても
可能性はないと思った。
「自分の思い通りにならない素材だから」
旦那が絵の次にガラスを追求していくと決めたのは
そんな理由だったそう。
木工や彫像なんかはそこそこできると思った。
一番自分に向いてなさそうなものに挑戦しよう
そう思ったんだってさ。
小樽の工房をやめて
地元の神奈川へ帰ってきて
旦那は郵便局でアルバイトをしながら
ずっとガラスを続けてきた。
思うように制作の時間が取れなかったり
イベントで全然売れなかったり
レンタルしていた工房のガラスの質が変わって、思うように制作ができなくなってしまったり
本当にいろんなことがあった。
老舗の器展から展示のお誘いがあった年があってね。
旦那にとって、それは大きなチャンスだった。
そこに向けて準備をしていた最中
震災が起きた。
展示は中止になってしまった。
工芸品なんて
災害時に最も必要にされないものの一つかもしれない。
そんなことを話したこともあった。
いろんなことがあったけれど
それでもガラスを続けてきた旦那。
それは好きだから楽しんだやる
って感じではなくて
やめようとしていたこともあったけれど
やめられなかったんだよね。
旦那を見てて
本当に好きなことって、やめたくてもやめられないんだなって思った。
お金にならなくても
タイミングが合わなくても
それでもやめられないこと。
旦那にとっては
好きなこと
なんて
あっさりくくることすら難しいのかもしれないね。
それとね、
すごいな、と思うのは
旦那のご両親。
いつも適度な距離を保って
応援しながらも
子ども達の決めたことには反対はしない
そんなスタンスのご両親なんだよね。
旦那が絵をやっていく、と言った時も
ガラスの学校に入り直すと言った時も
きっと心配もされていたと思うけれど
そんなことはおくびにも出さず
いつもサラリとエールをくださるような、素敵なお父さんとお母さん。
旦那の「光の模様のペーパーウェイト」という作品が
ツイッターで評判になり
いきなり予約が300件とかになって
ネットに出せば毎回数分で完売
イベントにはオープン前から人が並ぶ
というわけのわからない状態になったのは1年ぐらい前だったか。
その後、その余波で
旦那のところにはいろいろありがたいお話が舞い込み
今、目黒雅叙園というところの有形文化財「百段階段」というスペースで
「和のあかり×百段階段2017」
というイベントに参加させていただいている。
生け花の方とのコラボ。
以下、イベントホームページ和のあかり2017より
↓↓↓
昨年、百段階段史上最高の9万人を動員した恒例企画。
東京都指定有形文化財「百段階段」を舞台に全国から
「祭り」「アート」「職人」「アクアリウム」
のジャンルを中心に30を超える出展者が一堂に会します。
毎年恒例、文化財の一部屋にダイナミックに展示されるねぶたのインスタレーションをはじめ
日本各地の作品が、あかりを落とした文化財を優しく照らします。
先日、お義母さんとハル&ヒロと、見に行ってきたの。
もー笑いあり涙ありの珍道中だったけどそれ書いてたらおわんないから省略。笑
それでね。
私が一番感動したのはね、旦那の作品展示じゃなくて
作品に魅入ってくださっている方々の後ろで
「ほらほら！家族なんですって言ってきたら！」
って言ってたお義母さん。
「いやいや、お母さんこそ『息子の作品なんですー！』って言ってきたらどうですか！」
なんて話して。
「いえいえ、そんなそんな。」
って言いつつ
最終的にはお客さんに声をかけててさ。
本当に嬉しそうでさぁ。
お母さんはね。
きっと旦那がこんな風に大きなイベントに出展しなくても
ツイッターで評判にならなくても
そんなのは関係なく
ずっと見守って応援してくださったんじゃないかなって思うんだけど
それでもやっぱり
すごくうれしかっただろうなって思って。
「これ、全部の作品の中で一番好きだわー私。」
すばらしい数々の作品展示の中で
最上階の隅にある旦那のスペースを見て
そんなふうに話されていたお客さん。
その言葉をお母さんに聞いてもらえて
本当に良かったなって思った。
本当に好きなことって
やめたいと思ってもやめられないこと。
☆*ﾟ ゜ﾟ*☆*ﾟ ゜ﾟ*☆*ﾟ ゜ﾟ*☆*ﾟ ゜ﾟ*☆*ﾟ ゜ﾟ*☆*ﾟ ゜ﾟ*
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