引き続き、H Teede, A Deeks and L Moran: Polycystic ovary syndrome: a complex condition with psychological, reproductive and metabolic manifestations that impacts on health across the lifespan. BMC medicine 2010, 8:41を読んでいきます。
主に西洋諸国のPCOSについてのまとめなので、日本の実態とは少し異なってるところもあります。
<PCOSの生殖的特徴>
1.卵巣機能障害と不妊
PCOSに70-80%が稀発月経、無月経をきたす
稀発月経の80-90%がPCOS
無月経の40%がPCOS
(無月経の場合は視床下部の障害のほうが多い)
稀発月経は通常思春期に始まる。それ以降の発症はしばしば体重増加に関連して起こる。
過多月経は(プロゲステロンの分泌のない)エストロゲンのみの曝露、子宮内膜過形成によって起こることがある。これはまた、肥満によって上昇したエストロゲンによって増悪する。
最新の診断基準では月経が正順でもPCOSと診断されることがある。
(Rotterdam基準では、稀発排卵・無排卵、アンドロゲン過多、多嚢胞性卵巣の3つのうち2つ以上があればPCOSと診断されるので。)
PCOSは無排卵による不妊症の最も頻度の高い原因。
不妊外来を受診する無排卵の女性の90-95%がPCOS。
60%のPCOSは不妊ではない(ベビ待ちを始めて12か月以内に妊娠する)が、妊娠までの期間は正常の人よりは長いことが多い。
PCOSで不妊の人の90%は過体重。
肥満はそれだけでも、不妊を増悪させ、不妊治療の効果を減弱させ、流産のリスクを上昇させる。
2.アンドロゲン過多
PCOSでの臨床的、生化学的アンドゲン過多は卵巣由来のアンドロゲン生産と放出の増加の結果起こる。
高LHと高インスリンがアンドロゲン産生を増加させる。
インスリン抵抗性が高インスリン血症を引き起こし、性ホルモン結合タンパクを減少させ、遊離テストステロンを上昇させる。
アンドロゲン過多と高インスリン血症は卵胞の発育を傷害する。
臨床的アンドロゲン過多:多毛、ニキビ、男性型脱毛
多毛は男性型の体毛の成長と分布のことと定義される。
PCOSは多毛のよくある原因で、約60%に起こるが、人種や肥満の度合いで頻度は様々。
多毛はFerriman-Gallweyスコアで評価する。
ニキビはPCOSの1/3の症例でみとめられるが、特異的な徴候ではない。
男性型脱毛の頻度は少なく、家族性の素因があることが多い。
アンドロゲン過多の特徴としては男性化があるが、陰核肥大を伴い、発症が早い場合は副腎や卵巣のアンドロゲン産生腫瘍の除外が必要。
生化学的アンドロゲン過多はPCOSのほとんどで起こる。