この前の日曜日は、埼玉県熊谷市の貸棚本屋「太原堂」で開催された読書会に参加しました。
課題本は、「風が強く吹いている」三浦しをん著です。
1月なので、箱根駅伝をテーマにした小説にしたらしく、アマゾンの書評でも「感動した!」と高評価な作品でした。
実は、僕は中学高校時代は、陸上部の長距離に所属していて、高校駅伝もやっていました。
大学では文化部に入り、また長距離走をすることになるとは夢にも思っていませんでしたが、
自衛隊に入ってから、長い間、自衛隊内の駅伝大会に出ていたので、自分の知っている分野だと期待して読み始めました。
と言っても、箱根駅伝に出られるようなすごいランナーでは全くありませんが・・・
【以下、ネタバレあり、これから読む人はご注意ください】
読む前は、箱根駅伝を目指すけど、毎年、ギリギリ出場できないくらいの大学の陸上部が、頑張って箱根駅伝を目指すというような物語かなと想像していました。
しかし、読み始めてしばらくして、竹青荘というおんぼろアパートに住む、ほとんどが陸上競技未経験者の大学生たちが、9カ月で箱根駅伝を目指すという物語だということが分かりました。
10人のメンバーのうち、2人は高校まで長距離走ですごい選手なんですが、ほかの人たちは運動すらしたことがないような人もいます。
無理!絶対に無理です・・・
調べると、作者は運動部の経験のない方らしく、箱根を目指す大学の陸上部を取材したと書いていましたが、取材先に素人が9カ月で箱根を目指す小説であるということは伝えていたのか疑問です。
作中、長距離走は才能もあるけど、努力の割合が多い競技だと書かれていてその通りなんですが、
作者は、キロ3分ペースで約20キロを走るためにどれほどの努力が必要か分かっていません。
長距離走における努力には、掛ける時間が必要です。時間は月日でなく、年月です。
そして、それだけの走り込みが出来る、才能、資質が必要となります。
そのレベルの選手を10人も集めるのが、どれほど大変か、たまたま揃った残り8人がそのレベルだとは説得力も何もありません。
作者もその辺は分かっているようで、最初、陸上経験者の主人公に、「全くの夢物語だ」と言わせていますが、結局、飲み会のノリで挑戦することになり、
練習を開始したら、一人も脱落することなく、みんなありえないほどタイムが上がっていきます。
きつい練習をしてと書かれていますが、きつい練習は、箱根を目指すどの陸上部も、選ばれた人たちが何年もしています。
長距離走の経験がない大多数の読者は、そんなものかなと思うのかもしれないけど、それでいいんだろうか疑問です。
書くだけだったらどうとも書けるので、そこに説得力を持たせられるかどうかなんですが、やっぱり陸上競技は厳然としたタイムがあるので、難しいと思います。
あと、競技をやっていたものとしてあり得ないのが、補欠を置かず、ギリギリの10人で駅伝をするということです。
長距離走に限らないと思いますが、運動にはケガ、故障がつきもので、ましてやこの人たちは大半、素人がいきなりハードな練習をするわけで、ケガをしない方がおかしい状況です。
誰か一人でもケガをしたら、もうそこまでで、挑戦さえも出来なくなるわけで、本気で競技に取り組もうとしているとは到底思えません。
メンバーが10人しかいないので、大会当日に高熱を出した神童という選手は、無理して大会に出場します。
高熱を出している様子なのは明らかなのに、他のメンバーは熱を測ろうともせず、本人が走るというのでそのまま走らせてしまいます。
神童が走ろうとするのは、自分が走れなければ、みんなのこれまでの努力が無駄になるわけだから仕方ありません。
周りのチームメイト、監督、コーチは止めないと・・・、ここで走らせるなんてありえません。
監督は役に立たないので、特にコーチ役のハイジ!完全にコーチ失格です。作中では名コーチみたいに描かれているけど・・・
当然、こういうことがあるから、補欠の選手を用意するわけですが、補欠を用意しようともせず、それなら「ここで潔くあきらめろ!」と声を大にして言いたいです。
現実には、出場したとしても、とても走り切れる状態ではないでしょうが、神童は、高熱でふらふらになりながら20キロ以上をそこそこのタイムで走り切ってしまいます。
しかも一晩寝て、次の日にはピンピンしているし・・・
作者が、高熱の登場人物を無理に走らせて、小説の盛り場を作るため、ギリギリの10人にしたんだろうけど、それでいいのか・・・
実際の大会を題材にしていて、青春のすべてをかけて走っている実際の選手がいる中で、箱根駅伝という題材を利用しているだけと言われても仕方がないような気がします。
大半の読者は、「実際のところは」何て気にしないだろうから、駅伝の宣伝になり、長距離走に興味を持ってもらえる切っ掛けになればいいのかもしれませんが・・・
アマゾンの評価もいいので、小説としては成功しているんだろうと思います。
チームの中でもともと長距離の選手だった2人が走る、9区、10区の描写は、僕も素晴らしいと思います。
僕がこれまで長距離走を走って来て、言語化できなかったような想いが、描かれていて、すごいと思いました。
だからこそ、「大半素人が、10人きり、たった9カ月で箱根を目指す」などという、キャッチ―さなど狙わずに、もっとリアルな形で長距離走を描いてくれたら、と思わずにはいれません。
小説では、9カ月どころか、6カ月で予選会突破して、箱根駅伝出場権は得て、3カ月後の本番でシード権まで獲得してしまう訳ですが・・・
敵役のチームのこととかもっと書きたいことがあるけど、長くなったので辞めます。
以上は、僕の感想ですが、僕としてはどうしても、実際に自分がこのチームに入ったらという視点で読んでしまいます。
この小説は、走ることについてはとても真摯に語られていて、また青春群像劇としての側面もあります。
読書会では、それらの側面や、登場人物のキャラについてや、恋愛要素なども話題にになりました。