通信制大学のテキストで紹介されていた作家の読書は続きます。有名でも読んだ事がなかった1人、川端康成です。
テキストで取り上げられていたのは『水月』でした。出征し結核を患って戻って来た夫との生活は妻にとってとても短い期間であり殆どが看病でした。夫は床に伏したままだったので外を眺められる様にと妻は嫁入り道具の鏡台とセットになっていた手鏡を夫に渡します。夫は庭仕事をする妻の様子をいつも眺め、化粧もお洒落もしていない妻を美しいと褒めていました。夫が亡くなった後、その妻は年の離れた男性と再婚します。新婚旅行も外出もできるようになったのに、窮屈だった前夫との生活や前夫を忘れることが出来ません。彼女は前夫と暮らしていた時に、鏡に映った景色が実際よりも美しく見えると感じた事があったのを思い出します......この本に収められている作品は全てオチがありません。不思議な余韻を残しながらお話は終わっています。
このほか特に心に残ったのは『小春日』、『横町』、『離合』でした。第八巻は恋人同士(当時は愛人と言っていたようです💦)、夫婦間のお話が多かったです。『離合』は離婚した夫婦と結婚を控えた娘が再会する素敵で悲しいお話でした。漢字が旧字体だったり表記(悲しいことがあつたんぢやありませんの?等)も昔風であったところが作品をより引き立てていたと思いました。
『川端康成全集 第八巻』
【題字東山魁夷】
株式會社新潮社、昭和56年