3年前に翻訳を読んだ本を今度は原書で読んでみました。本はイギリスの古書店にネットで注文しました。ハードカバーの中古ですが状態はとても良いもので満足でした。

 

 

以前感じたのと同様に英語でも素敵なお話でした。乾いた寂しさが感じられる短篇集です。決してハッピーエンドではないのですが、トレヴァーが登場人物をどこか冷めた目で描写しているので感情移入し過ぎず、そう感じるのだと思います。

 

通信教育で勉強を始めた年は語学系の科目を中心に学習しました。英文リーディングの中でトレヴァーの作品が使われていて、その時に初めて素敵だと感じました。私の中で主人公の女性はカトリーヌ・ドヌーヴのようでしたが、他の通信生が「湯婆」と書いていて不思議に感じていました。その人と私は課題の時期が違っていたので、私はトレヴァーの作品が課題ではなかったのですが、その人は和訳の課題がいつまでも合格せずにSNSで不満を漏らしていました。

 

その作品は翻訳された本の中には収められていなかったのですが、古い雑誌で翻訳が載っており、その後国会図書館に行ってその雑誌を読んでみました。すると......英文で読んだ作品は主人公がカトリーヌ・ドヌーヴなのに対して、翻訳のイメージはまさに「湯婆」だったのです。何故その人がなかなか合格出来なかったのかが判った気がしました。添削の先生は和訳が読み手にどのようなイメージを与えるかが判っていたのだと思います。ちょっとしたニュアンスでこれほど主人公に対するイメージが変わるのかも驚きましたし、卒論指導の先生が原書に拘る理由も判った気がしました。

 

3年前に読んだ翻訳版はその点では大きなギャップはないと思います。ただやはり原書を読んで良かったと思いました。

 

Trevor, William

A Bit on the Side

The Viking Press

New York: 2004. Print.

 

---------- 以下2021年1月の日記 ----------

 

課題の為にテキトーに探した中の1冊でした。

レポートに使えるものではなかったので提出締め切りが終わってから読みました。

 

 

短編集で最後のお話のA Bit On The Sideに「密会」と言う邦題がついていますが、不倫関係の話集ではありません。

 

この本に載っているお話は全てハッピーエンドではありません。サンフランシスコ・クロニクル紙のコメントに「トレヴァーの小説は、物悲しいと同時に美しい。そして常に変わらず誠実である。」とありました。確かに物悲しく、美しいお話ですが、救いようがないと言うわけではなく後味が全く悪くないのです。私的にはかなり好きなタイプの作風でした。

 

他にどんな作品を書いているのかと著作リストに目を通してみたら...........通信教育テキストに載っていたA Meeting in Middle Age(邦題:中年の出会い)の作者でした。もう手に入らない作品なのでコロナが収まったら所蔵している図書館まで出向いて読もうと思う位に気になっていたものだったので、驚くと共に妙に納得してしまいました。