ロンドン美術館日記(第二十話)
National Galley “Frans Hals展”
ずいぶん久々の美術館日記投稿になってしまいました。
よく見たら前回このロンドン美術館日記を投稿したのが2年半前。その間もそこそこ美術館には行っていたのですが不精しておりました。
前回投稿時にはロンドンの美術館もまだ事前予約制だったのですが、もう完全に戻っています。
でもNational Galleryは大きな改修工事が始まってしまい、常設展は大分間引きされたダイジェストバージョンになっていて、そんな中で前以上の大混雑。メンバーシップがないと常設展でもかなり並ばないといけない状況です。メンバーになってるので良かったけど、なんかコロナ前の気軽に行けるNational Galleryが懐かしいです。。。
そんな中での素晴らしいエキシビジョン。年末に行ってきたのですが、あまりの素晴らしさにまた行ってしまった。
Frans Hals展
レンブランやフェルメールと同じオランダ絵画の黄金時代に活躍した肖像画家フランス・ハルス
今回のエキシビジョンではそのハルスの作品約50点が展示されるというなかなかの気合いが入った企画
アントワープ生まれのこの画家の肖像画の多くはなんせ笑っているのです。
レンブラントや同じアントワープ生まれのヴァン・ダイク等同時期に多くのビッグネームが肖像画を描いていますが、ここまで笑顔、それも微笑みというよりも笑い顔を自然に描けた画家はいないように思えます。
ハルスの人を観る、それも人の心までも読み取る観察眼と洞察力は、卓越的なものがあったようで、それぞれの作品には描かれたモデルの性格や人柄までもが伝わってくる想いがするのです。
下地を置いたり下描きをせずに直接絵の具をキャンバスに描き込んだというハルスの技法
絵の具が乾かなくてもそこに塗り込んでいったようです。実際、下描き的なデッサンは一切残っていないとか… スピード画法とはいっても、髪や肌のスピード感が感じられるちょっと粗い描写とは全く異なって、モデルの服や素材の描写は繊細そのもの。そこには緻密な作業の痕跡も残っています。まさに天才のなせる技だったのかもしれません。
肖像画展と聞くとちょっと躊躇される方もいらっしゃるかもしれません(なんせつまらない…)。
でも、このエキシビジョンに展示されている肖像画は、当時の富裕層の典型的な権力や財力のデフォルメ含みの”なんちゃって”感は全くありません。
この展示会場は、笑いという一瞬の幸福の奇跡に溢れているのです。
本当に素晴らしいエキシビジョンです。