世田谷パブリックシアターでダンス界注目のアーティスト、橋本ロマンスの新作「饗宴/SYMPOSION」初日を観劇。

 

橋本と作品についてこちらから↓

単独インタビューで詳しく語ってもらった。

 

 

舞台機構がわかるほど丸裸にした舞台には2段の別れたステージが作られ、下のベースの舞台の背景にはガザ地区にイスラエルが建設した分断の壁が。そこにダメージのオーバーオールジーンズにサングラス(cute)の唐沢絵美里がガムを噛みながらグラフィティを足していく。彼女は時にカメラを通してそこの様子を舞台に設置された大スクリーンに映し出していく。

上段ではテーブルを囲んで商談のようなことが行われている。話しながらの赤いドレスの女(湯浅永麻)の身体は次第にバラけていき、男(野坂弘/池貝峻)はピアノに向かう。”笑える話をしましょう”と観客に話しかける男(野坂弘)の話に笑っていて良いのか、と自問しながら、壁の前で逃げ回る(ダンス)人々を観続ける。

 

通常は舞台セットの搬入用であるリフトも作品の中で使用、舞台上で撮影される画には客席に座る私たちも映されハッとさせられる。

 

80分のステージは一瞬たりとも目が離せない緊張感とライブとしてのリアルが充満している。そして、それぞれの動き、シーンにははっきりとした意図があり、そこに無駄が入る余地は一切ない。

そしてとにかく一貫して美しく、coolでカッコいいのだ。

コンセプト(富による一方的な侵略を黙認していて良いのか、という訴え)、力強い篠田ミルのリズム音楽、美術、衣装、さまざまな手法による映像、演出、、そして集まったバックグラウンドが違うキャストたち、、それらの輝かしい要素が橋本の手によってまとめあげられ、構成されたダンスの枠をはみ出した、というか超えたこのパフォーミングアーツは今観るに値する傑作であると断言する。

 

今このメッセージを受け止めて、みんなで考えなければこの先どうやって進んでいけばよいのか?という橋本の叫びが聞こえてくるよう。アーティストがそれを発信しなければ誰がするの??と問いかけられているように感じた。

 

リンクしたインタビューの中で次回作は?と尋ねたときに”熊がでるような作品?”と答えていた橋本だったが、今作ですでにその熊はしっかりと登場していた!!

 

唐突な等身大の熊ちゃん、、を見て昔観た映画ジョン・アーヴィング(80年代にとても流行ったのですよ)原作「ホテル・ニューハンプシャー」の中での美女ナスターシャ・キンスキーを思い出した。熊にならないと恥ずかしくて人前に出られない少女が絶世の美女ナスターシャというのがなんともステキで忘れられないキャスティング。

 

今週末まで上演しているので、ぜひとも世田パブへ、今の若者が表現するダンスを目撃してほしい。