2021年のプロ野球は、

燕軍(東京ヤクルトスワローズ)が20年ぶり6度目の日本一に輝き

全日程を終了した。




 

日本選手権シリーズ(日本シリーズ)で覇権を争った猛牛軍(オリックスバファローズ)

 

対戦成績は4勝2敗。第六戦での決着となったが、

第七戦までもつれ込んだような、観る側からすると”お腹一杯”

と思えるような。見どころ満載の、近年まれにみる大激戦だった。

 

今季の燕軍は。

 

昨夜、日本シリーズMVPに輝いた中村悠平捕手の攻守に渡る大活躍。

昨年まで”弱体”と言われた投手力の整備に成功。

大きな飛躍を遂げた奥川恭伸投手、髙橋奎二投手。

2シーズンぶり・自身5度目の30HRを達成した山田哲人選手。

ホセ・オスナ選手、ドミンゴ・サンタナ選手の加入、そして大活躍。

遊撃手のレギュラー争いで”一日の長”を見せつけた西浦直亨選手。

そして。39本塁打&106打点で、主砲としてチームを牽引した村上宗隆選手。

 

他にも優勝の原動力は、挙げればきりがないほど、今季の燕軍は”チーム力”の底上げが一気に推し進められたように思う。




 

その中で。筆者が特に目を奪われたのが、1番・中堅手に定着した塩見泰隆選手の活躍だった。



 

燕軍は、2番の青木宣親選手から7番のドミンゴ・サンタナ選手(シーズン終盤はホセ・オスナ選手)まで一発を秘めた破壊力を有する強打者が居並ぶ強力打線を誇っていた。それだけに。

打線の点火プラグとしての役割を担う1番打者の固定が急務とされていた、と推し量る。

 

シーズン開幕当初は坂口智隆選手や山崎晃大朗選手がリードオフを務め、

塩見選手は5番か6番に入ることが多かった。

転機は5月22日の浜星軍(横浜DeNAベイスターズ)戦@神宮球場。

 

この日、5月14日の恐竜軍(中日ドラゴンズ)戦@バンテリンナゴヤドーム以来、

今季5回目のリードオフに起用される。

結果は4打数0安打だったが、翌日のゲームでは5打数1安打ながら1得点をマーク。

先発のアルバート・スアレス投手が立ち上がりに1点を失うも、その裏、すぐさま3得点で逆転に成功。

その口火を切るレフト前ヒットを放ったのが塩見選手だった。

リードオフとしてしっかり出塁すると、続く2番・中村悠平選手の二塁打で快足を飛ばして一塁から生還。

流れを一気に引き戻し、このゲームを10-5と快勝した。

 

以降。シーズンを通してほとんどのゲームで1番を務めた塩見選手。

 

昨年までの3年間は。

104試合出場で267打数60安打 打率.225 9本塁打 28打点 41得点 17盗塁

俊足好打そして強肩の外野手として期待を集めながら、故障がちだったこともあり、思ったような成績を残せなかった。


しかし今季は。

140試合出場で474打数132安打 打率.278(自身初の規定打席到達)

14本塁打 三塁打7本(リーグ1位) 59打点 80得点 盗塁21 出塁率.357

目覚ましい活躍を遂げ、1番CFのポジションを不動のものとした。

 

筆者が最も記憶に残っているゲームがある。

10月5日(火)から始まった兎軍(讀賣ジャイアンツ)、猛虎軍(阪神タイガース)との

”天王山”6連戦。その3つめの兎軍との一戦。

エース菅野智之投手に苦しめられた燕軍。

6回まで無安打、走者は四球、死球の2人のみ。

3年前のCSファイナルで、菅野投手に喰らった無安打無得点試合が脳裏をよぎった。

しかし。菅野投手はこの試合、何らかのアクシデントで6回で降板。

7回以降はルビー・デラロサ投手、畠世周投手とつなぎ9回はCLのチアゴ・ビエイラ投手がマウンドへ。

8回を終わって依然ノーヒットの燕軍だったが。

 

9回一死後から1番の塩見選手がチーム初ヒットをマーク。




継投ながら兎軍投手陣の前に”No-No”を喫する寸前で、最大のピンチを阻止すると、2番・青木選手の打席で盗塁に成功。

二死後、山田哲人選手のショートへの当たりを処理した坂本勇人選手が一塁に悪送球(記録は内野安打)この間に塩見選手が生還し、1x-0でサヨナラ勝ちを収めた。

 

ゲームの展開上、今季レギュレーションから燕軍の負けはなかった状況だったが、

無安打で終われない!という執念が打たせた塩見選手のチーム初安打。

相手が落胆?したわけではないだろうけど、すかさず盗塁に成功し揺さぶりをかける。

そして。山田選手のショートへの当たり(記録は内野安打)で相手のミスを見逃さず決勝のホームを踏んだ。



 

文字通り。塩見選手のバットが点火プラグとなり、中軸の一打で勝利を収めるという、理想的な点の取り方を象徴したかのようなゲームだったように思う。

 

昨日の日本シリーズ第六戦も、延長12回、二死からレフト前ヒットで出塁すると相手バッテリーのミスで進塁。

代打の神様・川端慎吾選手の決勝打で生還。チームに20年ぶりの戴冠をもたらした。

 

現在28歳の塩見選手。プレーヤーとして一番脂が乗り切った旬の時を過ごしているように思える。

 

昨年までのケガに泣かされ続けた3年間を肥やしに、おそらく今季はケガをしない体づくりをテーマにキャンプ、オープン戦を過ごしたのではないだろうか。ポテンシャルは超一流。誰もが羨む身体能力。

しかし。それを発揮出来ぬまま過ぎ去った時間に、一番忸怩たる思いを抱えていたのはご本人なのは想像に難くない。

 

どこをどう強化して、また改善してケガを克服されたのか?

ご本人にお話を伺いたいのだが、筆者はその資格を有するほど優秀な記者・アナウンサーではない。

ここで記述してきたことは全て想像の域を出ず、また個人の感想によるところが大きい。

 

しかし。塩見選手がリードオフに定着できたことで、2番・青木選手の卓越した打撃技術が活き、山田哲人選手、村上宗隆選手の長打力が威力を発揮し、ホセ・オスナ選手、中村悠平選手、ドミンゴ・サンタナ選手の”第二クリンナップ”が機能したのではないだろうか。

 

今季の活躍。燕党として来季も是非!と願わずにはいられない。

が、他球団も手をこまねいて、黙って指を咥えているハズがない。

ライバルチームはきっちり対策を立て、今季とは違った攻めをしてくるだろう。

 

その包囲網を突破できた時。福本豊さんや柴田勲さんのような、

常勝軍団を代表するような1番打者として球史に名が刻まれる選手になる。

塩見選手はいま、NPB12球団の1番打者(候補も含めて)の中で、間違いなく、そのレジェンドの聖域に最短距離にいる。筆者は日本シリーズの激闘を観て、その確信を一層強く持ったのだった。

 

野球ロスが今日から始まるが。。。

ストーブリーグが本格化。

野球好きにオフなど訪れようなずもないのである。。。