北方領土訪問記
北方領土（国後島・択捉島・色丹島・歯舞群島）は日本固有の領土ですが、昭和20年以来ロシアによる不法占拠が続いており、自由に行き来することが出来ません。一方ロシアの法律に従ってビザを取得して訪問することは日本の立場を損ねることになります。
平成3年に「領土問題が解決されるまでの間、相互理解増進をもって問題解決に寄与することを目的とし、いずれの法的立場も犯さない理解のもとにパスポート・ビザなしで北方領土を訪問する」枠組みが出来ました。今回、この枠組みの中で国後・択捉の２島を訪問してきました。
６月２８日(木)
根室市内で一泊した後、北方領土研修センターに移動し、団員の皆さんと顔合わせ、その後事前研修をうけ、市内スーパーで買い出しのあと、「えとぴりかⅡ」号に乗船。
今年新たに就航したえとぴりかⅡの船内はなかなか快適。4人部屋の客室は広いとは言えないが十分なスペースがあり、お風呂やトイレも気持ち良く使える。
夕刻、海上保安庁巡視船の伴走を受けて根室港を出港、
最初の夕食は船内で。海はべた凪で、快適な航海で国後島、古釜布（フルカマップ）港停泊地には10時過ぎには到着していた。2時間の時差があるので早々に就寝。
６月２９日（金）国後島
朝6時（現地時間8時）より朝食。艀の到着を待って入域手続の後、2班に分かれて艀に乗り国後島に上陸。
古釜布港には沈船がそのまま放置されており、港湾整備は劣悪な状態。航路の状態も不明。えとぴりか号の喫水は3.8mとそれほど深くないが、それでも着岸は難しい。
上陸後、住民の用意した４WDに分乗して「友好の家」に移動。その後市庁舎へ表敬訪問。
幼稚園の視察。無邪気な子供たちの笑顔にいやされる。
０-２歳は基本的に過程で育児できるように育児休暇制度が整っている。幼稚園が足りず、待機児童が約２００人おり、現在新たな幼稚園を（１２０人）を建設中。
また別の幼稚園も見たがこちらは修復工事中で夏休み。
日本人墓地は地元の方々により丁寧に草刈りがされており、感謝です。終戦までにこの地で命を落とされた方々に対し合掌。
博物館：とても博物館とは思えないアパートのような玄関口から半地下におりてゆくと、国後の歴史を展示した博物館。しかし展示の状況はあまり整理されているとは言い難く、考古の土器から日本人が戦中まで使っていた食器まで一緒に並べられている。
下水処理場：繰りる発展計画により街の下水道整備をすすめており、下水処理場が2014年完成予定。３棟あり処理能力は合わせて１日１トンと。ん？？？ちょっと少なすぎませんか？
視察と言っても上屋の外から見るだけ。外部から電線は来ておらず（地中を通っているようでもなし）。コンピュータ制御というが、勿論コンピュータは設置されておらず。果たして工事は進んでいるのだろうか。
建設中の港湾施設（事務所）をこれも外から視察。昨年も視察に来た参加者の印象では昨年から進んでいないと。新築中というよりむしろ傷んできているようにさえ見える。
住宅建設現場や教会の建設現場は車上より視察。
２年前のメドベージェフ大統領（当時）の訪問によりロシア国教会の建設（地元では「大統領の教会」と呼んでいるそうな）は実際労働者も動いており建設進行中。ただそのほかについてはあまり動いているようには見受けられない。
視察を終えて「友好の家」に戻り市幹部を交えて夕食会。
ハンバーグにマッシュポテト。マスを野菜と共にオーブンで焼いたもの。など。食べやすいものが多い。
その後エトピリカ号に帰船。出港
就寝中に船は海の難所と言われた国後水道を通り択捉島に向かう。揺れは全く気にならず目も覚めなかったが、内岡港に到着した時の投錨などの音でいったん目を覚ましてしまった。
６月３０日（土）択捉島１日目
５時起床。天気は良好海も凪いだまま。朝食の後上陸手続きを待つ。この港にある艀は小型で１２人しか乗れないので、全員が上陸完了するまで予定以上の時間を要した。
内岡港にも沈船が放置されている。
市内の芸術学校講堂で市幹部を表敬面談。時間が押していたのでさらっと。特に質疑がメドベージェフ首相の訪問可能性と日ロ関係への悪影響などに及ぶと、地方行政府の問題ではないとして具体的には何も答えず面談打ち切り。ただ話の節々には中央政府高官の訪問は北方領土への関心の高さを示すものとして歓迎している様子が感じられる。
その後各グループに分かれて家庭訪問。
私たちの訪問先は行政監査局長の女性、イリーナさん。先日は息子さんとともに秋田県を訪問したとのこと。質素ながら、中はきれいにリフォームされたアパートで手作り料理で歓待していただいた。
その後の住民との文化交流会も和やかに行われ、夕方、船に戻った。
今回のビザなし交流では毎晩船に戻って泊るスケジュール。何故ホームビジットではなくホームステイ出来ないのかとの質問には答えようがない。安全上の理由とか団体行動とか、キャパが限られている等だろうが、「島民との交流促進を通じて領土返還に資する」ことが目的なら、少人数でも無理のない範囲でステイするようにすべきだろう。
７月１日（日）択捉島２日目
択捉での2日目は紗那の日本人墓地の清掃とお参り。団の中にはここにご先祖の墓地がある旧島民の方もおられた。ここも日本人のふるさとなのだ。
しかし、紗那の町では昔郵便局として使われていた日本家屋が廃墟と化し、水産会事務所であったところはさら地になっていた。
日本人が生活していた証左が消されようとしている。
1999年に日本から贈られたディーゼル発電機は既に稼働しておらず、
一方、別飛（べっとぶ）ではクリル発展計画のもとで１５００KWのディーゼル発電所が立ち上がっている。
立派な幼稚園も新築されている。
ロシア政府は近年北方領土を含めたサハリン地域の開発を進めていることが目に見えてわかり、住民側も期待を膨らませている。こうした住民感情に対して我が国は対抗手段がとれていない。
ギドロストロイ社の水産加工場ではさけますを年間25,000MT処理している。住民の65%が雇用など何らかの関係を持っており 会社の作った体育館は住民・旅行者にも開放されている。
労働者用の住宅建設も進んでおり、まさに企業城下町の様相。
湾内では韓国業者が港湾整備にあたっている。
街中の商店には食料品など十分な商品がならぶ
バス停にとまるトラックのような乗合バス
牧歌的な風景の残る択捉島だが着実にロシア化が進んでいる。
内岡港から見る夕陽
平成3年に「領土問題が解決されるまでの間、相互理解増進をもって問題解決に寄与することを目的とし、いずれの法的立場も犯さない理解のもとにパスポート・ビザなしで北方領土を訪問する」枠組みが出来ました。今回、この枠組みの中で国後・択捉の２島を訪問してきました。
６月２８日(木)
根室市内で一泊した後、北方領土研修センターに移動し、団員の皆さんと顔合わせ、その後事前研修をうけ、市内スーパーで買い出しのあと、「えとぴりかⅡ」号に乗船。
今年新たに就航したえとぴりかⅡの船内はなかなか快適。4人部屋の客室は広いとは言えないが十分なスペースがあり、お風呂やトイレも気持ち良く使える。
夕刻、海上保安庁巡視船の伴走を受けて根室港を出港、
最初の夕食は船内で。海はべた凪で、快適な航海で国後島、古釜布（フルカマップ）港停泊地には10時過ぎには到着していた。2時間の時差があるので早々に就寝。
６月２９日（金）国後島
朝6時（現地時間8時）より朝食。艀の到着を待って入域手続の後、2班に分かれて艀に乗り国後島に上陸。
古釜布港には沈船がそのまま放置されており、港湾整備は劣悪な状態。航路の状態も不明。えとぴりか号の喫水は3.8mとそれほど深くないが、それでも着岸は難しい。
上陸後、住民の用意した４WDに分乗して「友好の家」に移動。その後市庁舎へ表敬訪問。
幼稚園の視察。無邪気な子供たちの笑顔にいやされる。
０-２歳は基本的に過程で育児できるように育児休暇制度が整っている。幼稚園が足りず、待機児童が約２００人おり、現在新たな幼稚園を（１２０人）を建設中。
また別の幼稚園も見たがこちらは修復工事中で夏休み。
日本人墓地は地元の方々により丁寧に草刈りがされており、感謝です。終戦までにこの地で命を落とされた方々に対し合掌。
博物館：とても博物館とは思えないアパートのような玄関口から半地下におりてゆくと、国後の歴史を展示した博物館。しかし展示の状況はあまり整理されているとは言い難く、考古の土器から日本人が戦中まで使っていた食器まで一緒に並べられている。
下水処理場：繰りる発展計画により街の下水道整備をすすめており、下水処理場が2014年完成予定。３棟あり処理能力は合わせて１日１トンと。ん？？？ちょっと少なすぎませんか？
視察と言っても上屋の外から見るだけ。外部から電線は来ておらず（地中を通っているようでもなし）。コンピュータ制御というが、勿論コンピュータは設置されておらず。果たして工事は進んでいるのだろうか。
建設中の港湾施設（事務所）をこれも外から視察。昨年も視察に来た参加者の印象では昨年から進んでいないと。新築中というよりむしろ傷んできているようにさえ見える。
住宅建設現場や教会の建設現場は車上より視察。
２年前のメドベージェフ大統領（当時）の訪問によりロシア国教会の建設（地元では「大統領の教会」と呼んでいるそうな）は実際労働者も動いており建設進行中。ただそのほかについてはあまり動いているようには見受けられない。
視察を終えて「友好の家」に戻り市幹部を交えて夕食会。
ハンバーグにマッシュポテト。マスを野菜と共にオーブンで焼いたもの。など。食べやすいものが多い。
その後エトピリカ号に帰船。出港
就寝中に船は海の難所と言われた国後水道を通り択捉島に向かう。揺れは全く気にならず目も覚めなかったが、内岡港に到着した時の投錨などの音でいったん目を覚ましてしまった。
６月３０日（土）択捉島１日目
５時起床。天気は良好海も凪いだまま。朝食の後上陸手続きを待つ。この港にある艀は小型で１２人しか乗れないので、全員が上陸完了するまで予定以上の時間を要した。
内岡港にも沈船が放置されている。
市内の芸術学校講堂で市幹部を表敬面談。時間が押していたのでさらっと。特に質疑がメドベージェフ首相の訪問可能性と日ロ関係への悪影響などに及ぶと、地方行政府の問題ではないとして具体的には何も答えず面談打ち切り。ただ話の節々には中央政府高官の訪問は北方領土への関心の高さを示すものとして歓迎している様子が感じられる。
その後各グループに分かれて家庭訪問。
私たちの訪問先は行政監査局長の女性、イリーナさん。先日は息子さんとともに秋田県を訪問したとのこと。質素ながら、中はきれいにリフォームされたアパートで手作り料理で歓待していただいた。
その後の住民との文化交流会も和やかに行われ、夕方、船に戻った。
今回のビザなし交流では毎晩船に戻って泊るスケジュール。何故ホームビジットではなくホームステイ出来ないのかとの質問には答えようがない。安全上の理由とか団体行動とか、キャパが限られている等だろうが、「島民との交流促進を通じて領土返還に資する」ことが目的なら、少人数でも無理のない範囲でステイするようにすべきだろう。
７月１日（日）択捉島２日目
択捉での2日目は紗那の日本人墓地の清掃とお参り。団の中にはここにご先祖の墓地がある旧島民の方もおられた。ここも日本人のふるさとなのだ。
しかし、紗那の町では昔郵便局として使われていた日本家屋が廃墟と化し、水産会事務所であったところはさら地になっていた。
日本人が生活していた証左が消されようとしている。
1999年に日本から贈られたディーゼル発電機は既に稼働しておらず、
一方、別飛（べっとぶ）ではクリル発展計画のもとで１５００KWのディーゼル発電所が立ち上がっている。
立派な幼稚園も新築されている。
ロシア政府は近年北方領土を含めたサハリン地域の開発を進めていることが目に見えてわかり、住民側も期待を膨らませている。こうした住民感情に対して我が国は対抗手段がとれていない。
ギドロストロイ社の水産加工場ではさけますを年間25,000MT処理している。住民の65%が雇用など何らかの関係を持っており 会社の作った体育館は住民・旅行者にも開放されている。
労働者用の住宅建設も進んでおり、まさに企業城下町の様相。
湾内では韓国業者が港湾整備にあたっている。
街中の商店には食料品など十分な商品がならぶ
バス停にとまるトラックのような乗合バス
牧歌的な風景の残る択捉島だが着実にロシア化が進んでいる。
内岡港から見る夕陽
