なぜ突然朝鮮学校無償化手続き再開? | 衆議院議員 岸 信夫 オフィシャルブログ「の・ぶ・ろ・ぐ」Powered by Ameba

なぜ突然朝鮮学校無償化手続き再開?

なぜ突然朝鮮学校無償化手続き再開?

作成: 岸信夫 日時: 2011年9月6日 18:20

 菅前総理は何故辞任を翌日に控えた8月29日に斯様な指示を文科大臣に行ったのでしょうか。理由は明白、それだけの義理があったと考えるのが妥当でしょう。

 そもそも高校無償化について我々は反対してきました。教育に対する考え方、義務教育との関係、私学との不公平感など。しかしこれは民主党のマニフェストの目玉として国会で押し切られたのです。これも民主主義といえばそうなのですが、この無償化を朝鮮学校にまで適用することには全く納得がゆくものではありません。

 文科省は本件を外交問題ではなく、教育の問題として粛々と手続きすべきなどと言っていますが、

なぜ反日教育を行っている学校に対して、補助をしなければならないのでしょうか。

【情勢は延坪島砲撃以前に戻ったのか】

 そもそも昨年 延坪島(ヨンビョンド)砲撃事件を受けて審査手続きをストップした事自体、本件が政治・外交問題であることを物語っていますが、この度の手続き再開にあたって、菅氏は「延坪島砲撃以前の状態に戻った」と判断したのです。

 そうでしょうか? 延坪島砲撃について、北朝鮮は当事国である韓国に対して何の謝罪もおこなっていない。さらに8月20日には新たな砲撃が行われた。被害がなかったといえども、決して延坪島砲撃以前に戻ったなどと言える状況でないことは明らかです。政府は、山谷えり子議員の質問主意書に対して「北朝鮮が砲撃に匹敵するような軍事力を用いた行動を取っていないことから、事態は砲撃以前の状況に戻ったと総合的に判断できるに至った」との答弁書を閣議決定したそうです。「総合的に判断」とは、南北対話や六者協議への最近の期待感などのことを斟酌したのでしょうが、韓国をはじめ関係各国は了解しているとは思えず、むしろ誤ったメッセージになる事が危惧されます。

 北朝鮮の瀬戸際外交は常に関係諸国との緊張度合を高めたり、緩めたりすることにより功を手に入れてきました。この度も砲撃により(それ以前には北朝鮮による韓国哨戒艦「天安」撃沈事件もあった)極度の緊張状態を作りだしたあと、関係修復の素振りを見せることで国際社会から譲歩を引き出そうとしているのです。緊張度合いは「延坪島」以前のレベル(総合的には)と判断するのかもしれませんが、砲撃したこと、それにより韓国の国民が死傷していることの事実が消えるものではないのです。当事者の了解なくして日本が北朝鮮に対する措置を緩和することはあってはならないことでしょう。

【なぜこのタイミングで?】

 松本前外務大臣は8月30日の記者会見で「今の状況の認識という意味では、総理と私(外務大臣)、そして政府として認識を共有したということに立って、そのような判断が行われたのだと、指示が行われたと思っております」「情勢の分析であるとか、対外的に発表させていただくまでの手続きなどの確認等々も含めれば、数日間でこれはできる話ではありませんので、しっかり時間をかけて議論をしていく中で発表する日が昨日に至ったものだと理解をしております」と述べている。歯切れが悪い。外務大臣はたまたま発表が29日になったとしているが、29日に発表したこと自体は事前に話があったわけでもなく、唐突であったということでしょう。「思っております」「理解しております」という言い回しがこのことを示しています。情勢分析について外務大臣の立場として総理に報告していたかもしれない(このことは外務官僚からの答弁では確認できないが)。しかし韓国や米国などと協議したあとは見られないことからも、このタイミングで指示を出すことについて事前に連絡はなかったと想像されます。中野拉致担当大臣が反対表明をしたことからも閣内調整が行われなかったことは明白です。

 一方、高木文科大臣は「新しい体制を迎えるにあたって、自ら(菅首相)として、それに決着をつけるつもりだったのだろう」と述べています。ということは自分がやったということを残したかったから駆け込みで押し込んだということです。

 我々は民主党の無駄づかい4K政策の見直しを求めて来た結果3党合意により見直しが確約され、それを受けて特例公債法を認めたわけです。菅氏がやったことは特例公債法の成立後に4kの一部である高校無償化の一環としての朝鮮学校無償化への道筋を再び付けたということです。彼には公党間の「信義」などより北朝鮮との関係のほうが大事だったということです。

 野田内閣は保守寄りとの見方も多いようですが、この度の人事をみていても全くそうは思えません。まずこの問題をどうさばくつもりか、次の国会でも追及してゆかねばなりません。