外交防衛員会 | 衆議院議員 岸 信夫 オフィシャルブログ「の・ぶ・ろ・ぐ」Powered by Ameba

外交防衛員会


山口県選出 参議院議員 岸 信夫 オフィシャルブログ「の・ぶ・ろ・ぐ」Powered by Ameba-2010.09.28 外交防衛委員会・質問①

本日行われた外交防衛委員会で中国漁船事案について質問しました。

97日に中国が尖閣諸島の我が国領海内で中国漁船が海保巡視船に衝突してきた事件。論点は大きく2点あり、一つは釈放にあたり政治がどのように介入したのか、もう1点はこの間の外交における問題です。

まず、検察に対する政治判断がどのようになされたか。

我が国固有の領土である尖閣諸島周辺の領海内での公務執行妨害に対し逮捕したこ検察の方針は当然と考える。しかし「処分保留のまま釈放」の決定がなされたことに対しては大きな疑問が生じている。法と証拠により粛々と処理するとしていたにもかかわらず、24日の釈放にあたって、那覇地検がその理由として挙げたのは、

‐巡視船「みずき」の損傷は直ちに航行に支障が生じる程度のものではない

‐「みずき」乗組員が負傷するなどの被害の発生はない

‐計画性等は認められない

‐被疑者には我が国における前科等なし

我が国国民への影響や今後の日中関係

前原外務大臣は国交大臣であった時に犯行時のビデオ映像を見て、人命にかかわる悪質な行為と認めている。悪質な犯行であったにも関わらず、なぜ那覇地検が日中関係にまで配慮して拘留期限前に容疑者を釈放するのか。急な方向転換について政治の意向があったのではないか。

このことについて官房長官は「那覇地検」独自の判断としているが、釈放決定の前日には地検から外務省にたいし、日中関係の説明を求めており、外務省は官邸と打ち合わせの上担当者を派遣している。この説明が釈放決定を方向付けたことは間違いないが、そこに官邸の意向があったのではないか。

刑訴法248条において「犯罪後の情況により」「公訴を提起しないことができる」ということを根拠としているが検察が日中関係を「情況」と判断するのは明らかに行き過ぎの政治に対する越権行為ではないか、ということだ。高度な政治判断がなされたということであればそれは政治家が責任を取るべきであって、いち地検に押し付けるべきものではない。

次に外交の問題である。

この事件が国内法に基づく公務執行妨害であっても、これにより中国が外交問題として取り上げてくることは当然予想でき、政府は先回りをすべきところだが、当初から楽観視していたフシもある。中国が恫喝ともいえるような圧力をエスカレートさせるなかで、日本からは「冷静な対応」をもとめるだけだったが、実際には中国は冷静に情勢を判断していた。レアアースは7月から輸出枠を絞ってきていたが、ここにきて実質的な輸出禁止とすることで産業界に揺さぶりをかけ、日本人4人を拘束することで、感情的に釈放を認めさせる雰囲気をつくり、一方で国連の舞台で温家宝首相が公然と釈放要求をすることで中国国内世論をまとめつつ、国際社会にたいして尖閣における中国の権利主張を展開している。尖閣を我が国固有の領土として、クリントン国務長官から日米安保5条適用の言質をとっただけでは十分とは言えず、いかに国際世論を味方につけてゆくか、そのための布石を打ってゆくことが必要であるにもかかわらず、すべてが後手後手に回っている感が否めない。

中国漁船の犯行が明らかとなるビデオを早期に公開すれば国際世論にたいするインパクトは大きかったであろうことは想像に難くない。

海上保安庁は当初ビデオ公開に前向きで、前原(当時の)国交大臣もビデオを見ておきながら、これを公開しなかったのは官邸の意向といわれている。刑訴法47条を根拠に公開を控えたというが、47条では同時に、「公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。」としている。国益に資するための公開はこれに勝る「公益」はないであろう。そうした判断をしないまま20日以上を経過し、その間中国側に言われるだけ言われ、あたかも中国側の圧力に屈したように船長を釈放し、その後も賠償請求をされ、日本人拘束事件についても解決していない。

水面下での様々な交渉は当然していたこととは思うが、それが結果に表れていないのだ。ようやく政府はビデオ公開を検討しているが、タイミングを失しては効果も激減なのだ。

参議院外交防衛委員会9月28日質疑ビデオ