パチン。
音がする。
ハッと我にかえり視線を手元に戻す。ずいぶんぬくぬくとした王様がいる。
「お鍋、食べたい」
「王様の今夜のディナーは、お鍋だって」
ぬくぬくとした王様を外に連れ出したくて、その場所を探す。
「でも、今日はクリスマスだよ」
「ん〜…」
「チキンが食べたい」
「んー…」
今、きっと君の返事は空返事だ。なんとなく声が聞こえているだけだろう。君の頭は今、盤上のことでいっぱいのはずで。
「将来住む家は、煙突が欲しいな」
ぬくぬくした王様のお家の頭に、わたしのお家のエントツを作る。
「ん〜〜…持久戦…」
やっぱり、木材で出来たアレがいい、これが欲しいねと言いながら駒を進める。
「王手」
「王手は言わなくていいんだよ」
「王手」
「だから」
「王手」
「ねぇ」
「王手」
視線をあげると、君はジッとわたしを見ていた。