久しぶりに一年前のブログ記事を見た。
「真っ赤な爪」というお題を元に短編を書いていて、振り返って読むと、なんとも荒々しい感情で書いた気がする...と思い出した。
一年前。
そうか、確かに気持ちは沈みがちで荒々しかった気がしなくもない。



ちなみに、今日は散歩中に開花した桜を見た。ソメイヨシノ。
荒々しいどころか、「あ、桜」とどこか桜色の気持ちになって和んだ。
今なら、どんな物語にするだろう。と、また書いてみよう。




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「#真っ赤な爪 2」


深紅の薔薇を絶やさないよう、一輪挿しに生け続けて数年。
荒々しく、彼の家に深紅の口紅で気持ちを書き残したあの日から、彼は絶え間なくわたしに深紅の薔薇を贈り続けてくれる。
わたしは、真っ赤な爪は卒業した。
真っ赤な爪に、真っ赤な口紅が似合う大人の女性に憧れていた数年前、そんな女性が彼の隣には似合うと思っていて、だから背伸びだと分かってはいたけれど、真っ赤なマニュキュアをいつもデパートに行っては、ドラッグストアに行っては、化粧品売り場を見かけては、いつも見ていた。赤といっても、色んな赤があるのだな。と、オレンジに近い赤から、黒に近い赤から、たくさんの赤を見た。

大人の彼の隣には、大人のお洒落な女性が似合うと思っていた。
でも彼は、違うよ。と言った。
僕の隣にいて欲しいのは、そういう女性じゃない。
優しく頭を撫でてくれながら深紅の薔薇をわたしに差し出す彼は、その深紅の薔薇がさらに彼を引き立て、まるで映画のワンシーンを見ているような彼の眼差しに、このまま夢に落ちて覚めなくてもいいと、醒めない甘い夢を欲した。

真っ赤な爪は卒業した。
けれど、今でも真っ赤なマニュキュアは部屋のインテリアのひとつになっている。