宴の席は夜遅くまで続いた。肉付きの良い清国の使臣たち(サシンドゥル)は絶えずに出され続ける食事を食べ続けた。その中でもただ一人、ヨンだけは、王世子(ワンセジャ)の威厳を忘れなかった。皇帝(ファンジェ)の勅使だという理由で偉そうに振る舞っている使臣たち(サシンドゥル)の頭、モク太監(テガム:清国宦官の頭)でさえも、王世子(ワンセジャ)ヨンの前ではスッポンの首のように縮こまっていた。その姿に、ラオンは、巨大な壁で囲っているように自然と安心した。ヨンがいれば、世の中で怖いものはないように、邪魔する者はなかった。
しかし、その頼もしい壁の、ちょっとした欠点のせいで、ラオンは休む暇もなかった。ソヤン公主(コンジュ)以降も、使臣たちと共に来た数多くの女人たちがヨンへと近づいてきたせいだった。ソヤン公主(コンジュ)ほどではないが、他も高貴な身分な女人たちだった。女人たちの接近は様々だった。時には、内密に伝える情報があるからと、静かな場所で二人きりで会うことを求めて来た。ヨンはそんな静かな場所へは自身の腹心とも言える、チェ内官を代わりに送ろうと伝えることで拒否の意思を伝えた。中には涙で訴える女人もいた。しかし氷壁のような男は、その悲し気な涙の前にもびくともしなかった。彼女たちに対するヨンの姿勢はずっと一貫していた。
ようやくソヤン公主(コンジュ)へと見せた王らしく強固な態度が少しは理解できた。王世子(ワンセジャ)ヨンは、この国の国本(ククポン)様であると同時に、象徴的な存在だった。彼の小さな行い一つまでも、大きな意味になってしまい、たったひとつも、簡単に考えて軽く行動することなどできなかった。ふと、ヨンを見つめるラオンの瞳が深くなった。最も高いところにいるために、最も孤独な存在、それがまさにヨンだった。王世子(ワンセジャ)の威厳と尊厳で自らを武装したまま、一度も崩すことなく、剛直な姿勢で壇上に座っている彼の姿は・・・
人間(インガン)じゃないみたい。人(サラム)がどうしたら、あんな風に一度も乱れることなくいられるの?恐ろしい方だわ。
ラオンが無意識に首をふるふると横に振った時だった。
くるる。唐突な音が腹の中から聞こえてきた。考えて見たら、王世子を輔弼するという重圧感で一日中水一口すら口にできていなかった。長い間一つの場所に立ち続けているので、脚もぱんぱんだった。人じゃないみたいな王世子(ワンセジャ)を輔弼するためには、自分はあまりにも平凡すぎることをうっかり忘れていた。急に、飢えと疲れが押し寄せて来た。
あぁ、お水一口でも飲めたら他に願うものはないわ。
乾いた唇を舌先で湿らせたラオンが、額にかいた汗を手の甲で拭った時だった。
「とてもお疲れの様ですね(マニ ヒムドゥシン モヤンイグンニョ)。こちらの茶など一杯召し上がってください(ヨギ チャラド ハン ジャン ハシチオ)。」
「はい。ありがとうございます(コマプスムニダ)。」
ラオンは思わずお茶を受け取るなり飲んだ。
ところで、あら?どなたが私にお茶をくださったの?
遅れてわいた疑問に、振り返った。
「あぁ!」
ラオンの口から小さな悲鳴が漏れた。清秀な顔いっぱいに、柔らかな笑みを浮かべた男・・・他でもない、ユンソンだった。
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どんな女人の前でも態度を崩さない人間じゃないみたいな王世子、イ・ヨン。
いつもの自分の前と違うその様子に(ギャップ!大事♡♡)
見つめるラオンの目も変わる!??
(注:心の中のラオンで(笑))
人間じゃないように崩れないヨンに対して、
お腹まで鳴っちゃったラオン・・。
考えたら水一口も飲めてなかった!!
お水が飲みたいと願ったその瞬間に、
その願いを叶えるかのようにさり気なく出されたお茶。
出した男はもちろん・・・?
笑顔の素敵なユンソンです♡
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そうそう!!すっかり遅くなりました!
依然、コメントで聞かれたのですが・・・
原作で、中殿はヨンの実母であり、領事政の娘です☆
ドラマとは全く違う設定なので、戸惑いますね。。。解説が遅くなりすみませんでした!