生まれた時から’そんな奴’などいない。それが悪い方向であれ、良い方向であれ、’そういう人’になったのには、それだけの理由がきっとあるはずでしょう。マ内官でさえも、それなりの理由があるのでしょう。でも、いくら何でもこれはないでしょう。マ・チョンジャ、その悪い人のために、今までのあらゆる努力を水の泡にしてしまった。キムヒョンが苦労してくださったことまでも全て。
他の何よりもそれが、最も悔しくて辛く感じられた。歯を食いしばったラオンの目に、涙が溢れた。
***
「キムヒョン!」
日課を終えて、資善堂へと戻って来たラオンは癖のようにビョンヨンを探した。しかし、大梁の上は、がらんとしていた。最近ビョンヨンは、資善堂をよく留守にした。何か仕事があってそうなのだろうとは思うものの、がらんとした居室に戻ると、なんだか物足りなかった。人のいる場は狭くとも、自分の席は大きいという言葉がぴったりだった。ビョンヨンがいる時は、寝ている間にでも自分の正体がばれはしないかと、戦々恐々だというのに。このように実際に見えなくなると、この大きな資善堂がもっと大きくて、どこかがらんと穴が開いているように感じられた。
それでも、朝起きてみるといつも大梁の上にいる人だから、今日もきっと帰っては来るのだろう。
「今日はキムヒョンを捕まえて、マ・チョンジャの愚痴をたくさん言いたかったのに。」
ラオンは残念な顔で小さく愚痴をこぼした。しかし、すぐに、こんな風に愚痴る時間すらないことを思い出した。マ・チョンジャの悪戯に、この間までの努力が砂の城のように崩れ去った。ビョンヨンが奮発して注釈までつけてくれたことすら、無駄になってしまった。そのことを思い出すと、自然に拳をぎゅっと握りしめた。ラオンは、気持ちを切り替えて、部屋の片隅に積まれている書籍を開いた。
精神一到何事不成。
この一行を希望の光にしたまま、ラオンは初めの文章を一つ一つ考え始めた。
そうしてどれくらい経っただろう?子正(チャジョン:午前零時)を過ぎた時刻、ラオンは家族と会わなければという必死の覚悟で依然として本に食い入るようにしていた。
「チッチッ。」
後ろからいきなり舌打ちが聞こえてきた。
キムヒョンだ!キムヒョンが帰って来た!
嬉しい気持ちでラオンが、頭をくるっと回した。そうしたら・・・・。
「どなた・・・・・でしょうか?」
ビョンヨンがいるべきその場所に、なぜだか老人が一人、立っていた。見慣れない老人の姿に、ラオンはしばらく瞳をくるくるとさせた。
誰かしら?確かに知っているようなんだけど・・・?誰・・・・・!
ふとラオンの瞳が大きくなった。
「貴人のお爺さん(クィインオルシン)ではありませんか?」
ラオンはぜんまいのようにぱっと立ち上がった。
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貴人のお爺さん・・・・!!!
( ゚д゚)ノシ
オモオモ・・・!!!!