「その時のことでしたら、間違いなく事故でした。花草書生もその時そうおっしゃらなかったですか?それがただ突発的な事故だと。」
一瞬、ヨンの表情が一変した。彼の顔に満ちていた悪戯な笑みが消え、代わりに寂しげな微笑だけが残った。
「本当に覚えていないようだな。」
突然、彼の姿が砂のように消えていった。
「花草書生(ファッチョソセン)?」
驚いたラオンは、周囲を見回した。
その時、再び一筋の風が吹いてきた。花草書生の姿が薄れた代わりに、他の人の姿が浮かび上がった。大梁の上に上がったまま、チッチッと舌を打つ男。
「面倒な奴(サンガシン ニョソク)。」
「キムヒョン!」
どうしていきなりキムヒョンが現れたのかしら?
疑問が浮かびながらも、ラオンは嬉しそうに彼を呼んだ。その瞬間、一筋の風が吹いてきて、ビョンヨンの姿さえも、分散させてしまった。
「キムヒョン?」
すごく驚いたラオンが周囲をきょろきょろと見回した瞬間、風に散ったヨンとビョンヨンが、華やかな花びらとなって彼女を柔らかく包んだ。
***
「キムヒョン!花草書生(ファッチョソセン)!」
ラオンは目を大きく開いた。眠気で朦朧としたままの視線で、彼女はぼんやりと天井を見つめた。がらんとした大梁が目に入った。彼女の全身をふんわりと包んでくれた華やかな花びらは、どこにも見えなかった。
「あぁ、少し居眠りをしちゃったみたい。」
手の甲で涙をぬぐいながら、ラオンは思い切りあくびをした。
「ふぁぁぁ・・・・・・ふぁっ!」
「やっと起きたのか?」
思い切り伸びをした瞬間、どうしたことか、向こう側からいきなり乳白色(ユベクセク)の顔が突き出した。花草書生だった。ラオンは、身の毛のよだつほど美しいその顔を暫く眺めてみた。そうしてから、両手で目をこすった。
「まだ寝ぼけてるのかな?」
「寝言がひどいのだな。」
あ!夢じゃなかった。本物の花草書生だった。
ようやくどういう状況なのか分かった。講經(カンギョン)試験の勉強を準備して、勉強している途中でちょっと居眠りをしてしまい、その間に花草書生が資善堂を訪れて来たのね、などと考えながら目だけを瞬かせたラオンは、満面の笑みを浮かべた。
「お久しぶりにお会いしますね。」
久しぶりに会う花草書生だった。ちょっと前に夢で彼を見たところだったので、嬉しさは一層さらに大きかった。
それなのに・・・。私、花草書生!なんて寝言を言ってなかった?
ラオンはヨンへと振り返って聞いた。
「もしかして・・・・いつ来られたのですか?」
「お前が、『お前のキムヒョン』と私を恋しがって探している時から。」
ヨンが平然とした顔で答えた。
「・・・・・・・!」
よりによってそんな時にそんな夢を見るなんて。
隠れられる穴があったら入りたい気持ちで、ラオンは頭を垂れた。しかし、そんなラオンの気持ちなど分かるはずがないように、背後に近づいたヨンは、腕を伸ばして机の上の書物を指さした。
「この文章・・・・。」
「はい?」
「この文章の意味解釈が間違っている。」
「そうなのですか?」
頭を下げたままだったラオンが、頭を持ち上げた。
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久しくいらっしゃらなかったのに・・そんな夢を見ているときに来なくても~~~~~!!!!
『お前のキムヒョン』と、私を、恋しがっていたぞ?
『お前のキムヒョン』とな。
↑
まだひっかかってるキムヒョンとの関係(笑)