「こんなことはいけないのに、こんなことはいけないのに・・・・私、いるようでいないように、静かに生きようとしてきましたが、ふとしたはずみで世子邸下の御心まで揺さぶってしまったようなのです。」
錯覚の沼に完全に陥ってしまったチャン内官が泣きごとを並べ立てた。ラオンは、両目を丸くしておずおずと上目遣いに見上げた。
「もしかして・・ですよ。チャン内官様が何か勘違いをされていることはないですか?」
「私の直感では間違いないです。」
「では、本当に世子邸下がチャン内官様を?」
「どうやらそのようなのです。」
「ですが、邸下は何が悲しくて・・・。世子邸下は本当にそのような方だとおっしゃるのですか?」
全く信じられなくて、ラオンはもう一度チャン内官へと聞いた。
「一度や二度、関心を示されただけならば、私とて何も言うことはないのです。毎日です。世子邸下の寝所を掃除し始めて以来、本当によく私の日常について細かく尋ねておいでなので、言うのです。」
「そうなのですね。他の方でもなく、世子邸下だとは。チャン内官様、本当にお悩みの多いことでしょう。」
「悩みは多い・・多いでしょう。いくら君主は無恥(ムチ)だとは言っても、昔から、王君が女性に陥れば国が傾き、宦官に陥れば歴史を揺るがせることになるではないですか。これをどうしなければならないのでしょう。」
理解できるというように、ラオンが頷いた。
「本当に困惑されることでしょう。私が知っている方も、趣向がそちらで、本当に困惑しました。」
ラオンはヨンを思い浮かべた。
花草書生。独特の趣向でなければ、本当に完璧な男なのに。どうやら、世子邸下も、やはり花草書生のように、特別な趣向をお持ちになる方のようね。そしたら、思いの外そういう男が結構いるのね?
「ところで、ホン内官。ちょっと前に見た時は表情が優れなかったようですが・・。」
「お伺いしたいことがあり、チャン内官様を探していたところでした。」
「私をですか?」
「はい。今日、偶然に、宮殿に入る前の知り合いに会うことができたのです。」
「そうなのですね?」
「おかげで、私の母と妹の様子を知ることもできました。」
「あぁ、そう言えば、ホン内官には年老いた母上と妹がいると言ってましたね。」
「はい。この世に信じられる人も、頼れる人も、私しかいない人たちです。私がこのように宮殿に入って出ることもできず、私の母とタニが心配で仕方ありません。その上、今日、タニの顔色がとても悪いと聞いて・・。」
「そんなにも心配ならば、家へ一度行ってみてはだめなのですか?」
何がそんなに心配なのかという癖のチャン内官が言った。
「行ってみることができるのですか?」
瞬間、ラオンの声が高まった。
「もちろんでしょう。通符(トンプ)さえあれないつでも宮殿を出入りすることができますよ。そうでなければ、宮殿の外に住む出入番内侍たちがどうやって宮殿を出入りすることができますか。そうでしょう?」
チャン内官の言葉でラオンの胸が期待感で踊りはじめた。
「だから・・通符(トンプ)さえあれば、いつでも宮殿を出入りできるということですね?」
「その通りです。」
「その通符、どこへ行けば頂くことができますか?」
「なぜですか?ホン内官ももらうのですか?」
「はい。宮殿の外へ必ず出て行かなければならないのです。」
「しかし・・・・・。」
「しかし?」
「残念なことに、ホン内官のような召喚内侍たちは、王様の特別な命があった時だけ、通符をもらうことができるのですよ。」
「はい?王様の特別な命ですか?」
「そう。」
「でも、王様は私をご存じであるはずがないので、特別な命などいただけるはずがありません。」
たくさん期待をしていたラオンは、その分気が抜けてしまった。
「そんなにがっかりしないでください。特別な命の他にも、通符を頂く方法がありますから。」
「その方法はどんなものですか?」
再び耳をぴんと立てたラオンは、目を輝かせた。
「何、そんなに難しいことではない。簡単にもらうことのできる方法ですよ。」
「ですから、その、簡単な方法とは、どうしたらいいのですか?」
「すぐに召喚内侍たちに、講經(カンギョン)があるじゃないですか。」
「はい。今月末にあります。」
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変なところで途切れてすみません・・・(x_x;)
早くラオンがヨンやビョンヨンと会ってほしいです♪(笑)
この人の登場が案外先で(笑)必死に訳すすめますね♪(ㆁωㆁ*)