マ・チョンジャが召喚内侍たちを率いて行ったところは、宮殿の武器庫だった。武器庫の前には、十台ほどの台車が置かれていた。そして台車の中には、武器庫に運ばなければならない槍が山積みにされていた。
「皆何をしているのだ?一時間以内に武器庫の中の武器を整理して、台車にある槍も全て中へ移しておくように。」
マ・チョンジャがきょとんと立っている召喚内侍たちを急かした。
宮殿のあらゆる雑用を引き受けることが内侍たちの主な業務だという事は、すでに分かっていた。しかし、その、あらゆる辛い仕事の中でも、大変で、危険で、汚い仕事に呼ばれて行くのは、教育場で不通を受けた召喚内侍たちだった。昨日は宮殿楼閣にいる鳥の糞掃除をしろと言われたが、今日は武器庫を掃除して、新たに仕入れた槍を中に運んでおく。埃が分厚く溜まった武器庫を見ながら、召喚内侍たちは泣きべそをかいた。
「なぜそんな顔をする?それほど悔しかったら、お前たちも通をもらえばこのようなことをしなくてすむのではないか?」
皮肉ったマ・チョンジャは、ラオンに向かって目を光らせた。
「油を売っている奴がいたらただではおかないからな。必ず一時間後に戻る。その時までに仕事を終えていなければ、お前たち、ひどい目に合うからな。」
しっかりと脅したマ・チョンジャは、わざとラオンの肩をぽんと叩いて庭先へと消えた。叩かれた肩が少しずきずきした。
「あのチョンジャの野郎(ケ(犬)チョンジャ)見たか。」
彼の後ろ姿に向けて、トギが低く悪態をついた。
「君、大丈夫か?」
「大丈夫です。早く運びましょう。もしも時間内に仕事を終わらせられなかったら、またどんな雷が落ちるかもしれないじゃないですか?」
ラオンは袖を捲りあげて、埃の立ち込める武器庫を掃除し始めた。
そうやってどれほど経っただろうか?武器庫掃除を終えて、新たに仕入れた槍を移している時だった。
「サンノムじゃないか?」
馴染みの名前が聞こえてきた時、ラオンは、最初聞き間違えだと思った。
「ほら、サンノム。」
ポンッ、肩を叩く強い力に、ラオンは顔を振り向かせた。険しい印象に、長いひげを生やした男が目に入った。
「チョンおじさん?(チョンソバンアジョッシ;チョン旦那おじさん(笑)日本語に直訳だと分からなくなりますね(笑)一.雲従街サンノムで出てきます)」
泮村(バンチョン)で鍛冶屋をするチョン旦那だった。
「本当におじさんですか?」
「そっちの方こそ俺が知ってるサンノムなのか?」
チョン旦那は分厚い手の甲でしきりに目を擦りながら聞いた。
「はい!おじさん。サンノムです。」
「や~、サンノム!(アイゴ~、サンノミ)お前がいなくなって、雲従街(ウンジョンガ)の人たちがどんだけ寂しがったのか知ってるか?ところで、なんで内侍になったんだ?」
「いえ、ちょっとそうなったのです。お元気でしたか?」
「俺は元気だろう。そう言うお前は?元気だったのか?誰も虐めてくる奴はいないか?」
チョン旦那が険しい顔で周囲を見回すと、わざと大きな声で言った。
「そんな人はいませんよ。」
いるなんて言うと、本当に誰かの胸ぐらでも掴みそうな勢いに、ラオンは急いでチョン旦那を静かな場所へと連れて行った。聞きたいことがあったのだ。
「チョンおじさん(チョンソバンアジョッシ)、もしかして、私の母に会われたことがありますか?」
もしかしてと聞いたことだったが、意外な返事が聞こえてきた。
「あるどころか・・。」
「はい?どういう意味ですか?私の母に会われたことがあるのですか?」
「サンノム、お前の母上、先月からク爺の煙草屋に出て仕事を始めたんだぞ。」
「私の母がク爺様の煙草のお店でですか?何があったのでしょう?いえ、それよりうちのタニがどうだから母が仕事に出ているのでしょう?うちのタニの病気は快方に向かっているのでしょうか?」
一気に吹き出したラオンの問いに、チョンの旦那はしばらく呆然とした表情を見せた。間抜けな顔に、目だけがぱちくりしたチョンの旦那が言った。
「一つずつ聞いてくれ。息が切れそうだ。」
言葉ではそう言ったが、ラオンの気持ちは理解して余るものだった。しばらく人の好い笑顔で笑っていたチョンの旦那は、ラオンの質問に、一つ一つ答え始めた。
「お前があんなにも突然消えて、三日も経たずに雲従街の人たちがク爺に散々せがんだんだよ。サンノム、お前を探せって。耐えて耐えたク爺がお前の家を探しに行ったんだ。そこでお前の母上に会って、サンノム、お前が妹の治療費のために家を離れたことも知ったんだ。ク爺が言うには、お前の母上と妹が暮らす様子がとても疲れて見えたと。それでお前の母上に適当な仕事を用意してくれたようだぞ。」
「ク爺様がですか・・・・?」
ラオンの目をたちまちじわりとした水気が覆った。
「感謝しますと、この御恩は決して忘れませんとお伝えください。」
「今までお前のおかげで商売がかなり潤っていたようだ。だからそんな負担に思うな。」
「ところでおじさん、もしかしてうちのタニの近況はご存じないですか?」
「なんで知らないわけがある?お前の母上についてク爺の煙草屋で一緒に来ているのを何度も見たことがあるのに。」
「そうなのですか?ではうちのタニ、そんなにも歩き回ってもいいほど体力が回復したと言うことですか?」
「そんな内情を俺が知ってるわけないだろ?でも、だ、こんなこと言っていいか分からんのだが。」
「なんですか?」
「サンノム、お前の妹のことだ。」
「はい。うちのタニがどうしました?」
「顔色があまり良くない。」
「え?」
「すぐ死ぬ人のように顔色がとても灰色なのだ。その上、棒みたいに細くって、一人前のこともできないようだと女房が言っていた。」
「タニがそうだと言うのですか?」
すとん、ラオンは心臓が深い奈落の底に落ちた気分だった。
「おじさん、お願いがひとつだけあります。」
「なんだ?サンノムの願いなら、命を懸けて頼みだけでなく全部きいてやるぞ。」
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久しぶりの『サンノム』という名前。
離れているお母さんとタニの様子を聞けて、やっぱり切ないですよね・・。
ところで昨日はキム・ウビン君の癌のニュースがショックでなんか何もする気になれませんでした・・。
すみません・・
『むやみに切なくて』・・思い出しちゃうと・・本当に早く良くなってほしいです!(`;ω;´)*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
シンミナちゃんが、治療をきちんと受けられるよう彼を手伝っているって、言ったようですね。
堂々としていてカッコいい!!WOW!Korea
本当に、こういう時に世間関係なく力になってあげていると堂々と発表できる関係、素敵ですね!