塀越しに、陽気な曲の音が聞こえてきた。音楽が高まっていくほど、ラオンのため息もまた、深まっていった。いつの間にか時間は半時間を過ぎていた。この半時間の間、ラオンは自分たちが鳥だと勘違いしている山鶏を捕獲するために奮闘した。しかし、これまでに取れた山鶏はわずか一羽だけ。決して、ラオンが非力で出た結果ではなかった。思ったよりも山鶏の動きは敏捷だったのだ。それに対して、ラオンが持つ装備は、お粗末きわまりなかった。
本来、山鶏は専門職人たちが網や罠をしかけて捕まえるくらい、捕えにくい奴らだった。そんな奴らを、ラオンが一人で、それも、鶏を殺す刀をたった一つだけ持って、一羽でもなく、百羽も捕えよというのは、最初から到底話にならない話だった。
「大変だ。」
このままでは百羽どころか、十羽も捕えられそうになかった。過ぎていく時間が惜しくて仕方がなかった。
「鶏や~、鶏や、どうしたらお前の兄弟を捕まえられるの?」
ラオンが唯一捕まえた一羽と目を合わせて真剣に聞いた。それでも鶏は、自分の保身のために親兄弟は売れないとばかりに半分目を開いたまま、コッコ、コッコと鳴くだけだった。
「もう。やれるまでやってみよう。」
ラオンがまた身体を起こした。こうなった以上、死ななくても気絶しそうだった。袖を捲ると、草むらに低く伏せた。山鶏を捕まえるために野山を駆けずり回ったせいで、みすぼらしい恰好は言葉にできないほどだった。顔や手の甲は、木の枝でひっかいた小さな傷がいっぱいだった。しかし、そんな細かい傷を気にしている暇はなかった。一羽でも多く捕まえるため、ラオンは身体を精一杯低くして機会を待った。
そうしてどれくらい経っただろうか?ラオンの目の前に、警戒心を緩めた鶏が一羽近づいてきた。一瞬、彼女は息を止めた。
もうちょっとこっちに、もうちょっと・・・。
そうやって忍耐を持って待っているうち、奴との距離は、いつの間にか手を伸ばせば触れられるほどに近づいた。ラオンは、最後に気を整えながら、息を飲みこんだ。
いち。
ココココッ。
に。
コココッ。
さん!
心の中で数を数えたラオンは、両手を前に突き出したまま、鶏に向かって全身で飛びついた。しかし・・・・・結果は、失敗。空に向かって力強く飛躍したラオンは、すっと身体を伸ばしたまま、地面へと広がった。
ドサッ。
「あっ・・・!」
ラオンは床に顔をつけたまま動かなくなった。いや、動けるはずがなかった。
「もう無理よ。死んでも無理。」
自暴自棄になった彼女はもうなるようになれという気持ちだった。
「杖刑10発ぐらい・・・そうよ!何がそうなのよ!まさか死ななきゃいけないの?」
ラオンは仰向けに空に向かって寝返りをうちながら、大声でわめいた。すぐに声に元気がなくなった。
「死にはしないだろうけど、痛いだろうな・・。」
こんな時、どんな願いでも聞いてくれる鬼の棍棒が一つあったらどんなにいいだろう・・。
「あぁ・・。誰かあいつらを百羽捕まえてさえくれたら、魂でも売るのに。」
両腕で両目を覆いながら、ラオンが呟いた。
その時だった。
「本当か?」
意外な声に、ラオンは目を隠していた両腕をゆっくりと外した。
「本当にこいつらを捕まえたら、魂を売るのか?」
この声!まさか・・・・・私の切実な願いを聞いた天が地面に舞い降りてこられたの?でも、日差しの間から見えるあの顔は・・・。
「キムヒョン!」
「じゃあこれでお前の魂は俺の物になったってことか?」
特有の何でもない風にそう言ったビョンヨンが、肩に背負っていたものを投げつけた。黒い包みの中で羽ばたくあれは!ラオンをやきもきさせて逃げ回った鳥、じゃなくて、自分たちを鳥だと勘違いしていた、鶏たちだった。
「キムヒョン!」
ぜんまいのように跳ねながら身体を起こしたラオンが、ビョンヨンの両手を掴んだ。枯れていたラオンの顔に、天の華のように華やかな笑顔の華が満開になった。
「・・・・・・。」
瞬間、暑い夏の日差しに目を突かれた人のように、ビョンヨンはひりひりとする目を閉じてしまった。
そうしてどれくらい経ったのか?しばらくラオンに掴まれたまま呆然としていたビョンヨンは、はっとして握られていた手をさっと振り切った。背を向けた彼の口からは、いつしか習慣になってしまった一言が、漏れ出てきた。
「面倒な奴。」
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このシーン、ピンチを救ってくれたのは、ビョンヨンでした♪
しかし・・・魂売っちゃったんです。ラオン。ここで。ビョンヨンに。
のあはこの場面でまずビョンヨン派に転んで・・また、別の場面でヨンに戻り、また別の場面では、ユンソンになり・・と、これから延々と悩み続けるのです・・(笑)( ´艸`)4巻はもう、なので切なくて仕方ないんですが・・。(´;ω;`)ブワッ。この二人を考えると・・。
なんやかんやで面倒を見てくれるビョンヨン、本当にかっこいいです!!これからも、本当に、カッコいいんです!!