九.満月の晩(4) | のあのあlife

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『雲が描いた月明かり(구르미 그린 달빛)』に史上最強にどハマリしてしまい♡2017年も自分の勉強兼ねて原作小説を翻訳しつつ、パク・ボゴム君とキム・ユジョンちゃんのボユカップル、密かに熱烈に応援中です~♡(笑)
2021年4月、またこのブログ再開します☆

「人であれ…幽霊であれ・・・女人が泣くのは嫌なのです。彼女たちが泣いている姿を見ると、ここが痛いんです。」

ラオンは左の胸を手のひらで押さえた。

「さっき泣いていたあの少女、私が必ず探し出します。探して、その涙を止めます。」

「・・・・・。」

「花草書生(ファッチョソセン)の仰るように見つけるのは難しいかもしれません。でも誰か・・・きっと、知っている人もいるでしょう。」

念をおしたように、ラオンは一人呟いた。

楼閣が再び静寂に包まれた。その静寂の中心にいるラオンが、居心地が悪いように頭の後ろを掻きながら話題を変えた。

「ところで、ここは本当に美しいです。」

ラオンの言葉に、二人の男の視線が、一斉に楼閣の外に向かった。乳白色の月の光を目いっぱい浴びた蓮池には、至る所に、大きなハコベ(クンビョルコッ)が咲いていた。日中はただ、必要のない雑草と変わりない花であるだけなのに、月夜に咲いている小さな花は、まるで、数千個の空の星が、地面に落ちたように、夢幻のような美しさを誘った。

「このように荒廃してしまう前は、宮殿の中でも片手で選ばれるほどに美しい庭園だったそうだ。」

「そうなのですか?」

月夜が描いた美しい風景に魂を奪われていたラオンが、綺麗な目でヨンを見上げると、言葉を続けた。

「捨てられていてよかったです。」

「どういう意味だ?」

「そうじゃなかったら、私がこのような贅沢をどうして受けられたでしょう?」

「贅沢?」

「はい。贅沢でしょう。贅沢も贅沢、このような贅沢がどこにありましょうか?頭の上には、美しい月の光が煌々とこぼれて、地面の上には、星の光のような花が満開になれば、ここが天国でなく何だと言うのでしょう?それだけでしょうか?両側には、麗しい友たちがいるのですから、私は生涯、これよりもさらに贅沢なことはないでしょう。」

「友だと?お前と私がいつのまに友になったのだ?」

ヨンは、自分を指して友と称するラオンを、深い目でじっと見つめた。

「祖父がおっしゃるには・・・。」

ラオンが、習慣のように人差し指を立てた。

「会うと心が楽しくて、別れた後にまた会いたいという人がいるのなら、そのような者を、『友』と呼ぶのだとおっしゃいました。」

「私と会って楽しいのか?」

「正直に申し上げましょうか?それとも、聞こえのいい鼻歌をお聞かせしましょうか?」

「正直なことを聞くのもいいものだろう。」

「初めてお会いした時は、少し慌てたりもしましたが、一緒にいてみると、少しは楽しかったと思います。」

本音を無礼にも表すラオンの答えに、ヨンは、口元にうっすらと笑みを漏らした。その気持ちは、ヨンもやはり同じだった。その者と会うことが楽しいのかはまだ分からなかったが、見守る面白さは確かにあった。その小さな者をせわしくからかうのも面白いし、ふと、その拳ぐらいの頭の中にはどんな考えが入っているのだろうと、気になりもした。

友だと・・・・?友と言うのだろう。こんなにも面白い奴ならば、宦官たちとはどんなものなのだろう。嬉々たる気持ちで、友となりかねないところだった。

「こんなにもいい夜にこれは欠かせないだろう。」

ラオンを見ていたヨンが、突然袖から小さな瓢箪壺(ホリビョン)を一つ、取り出した。

「何ですか?」

瓢箪壺を受け取ったラオンが、壺の栓を抜いた。たちまち、ツンと打つぴりっとした香りが、鼻を刺してきた。なじみ深い香りに、ラオンが、知った風に話した。

「碧香酒(ビョクヒャンチュ)のようですね。」

「碧香酒を知っているとは、お前もかなりの酒党なようだな。」

ヨンの早合点に、ラオンが低く笑いを噴出した。

「亡くなった父が好きだったお酒だと聞いていました。お父さんの忌日(キイル)には、母が欠かさず拵えていたものです。」

「お父上はお酒を楽しむことができる方だったのだな。美しい月夜にいい友と共にするには、碧香酒ほど良いものはない。」

ヨンの袂から、今度は木で作った酒杯が出てきた。たちまち、たぽたぽと杯に酒の注がれる音が聞こえてきた。

「一杯やろう。」

ラオンの顎の下に、酒のなみなみと注がれた杯が近づいてきた。

ラオンは、杯とヨンを交互に見ながらぴたっと動きを止めた。満月の月夜、良い友と交わって、美しい風景を肴にするお酒の一杯だ。悪くはない。ただ・・・・ラオンが酒に弱いということが問題だと言うならば、問題だった。

目の前で揺れる杯を見て、ラオンは緊張した。自分でも気づかぬうちに、背をぴんと伸ばして、口の中でよだれをごくっと飲み込んだ。なかなか手を伸ばしてこない彼女の姿に、ヨンが目を細めた。

「お前・・・・もしや、酒が飲めないのか?」

「ははっ。まさかでしょう。男がどうして酒一杯飲めないことがありましょうか?」

「ならばなぜそんなにも緊張しているのだ?」

「緊張なんて!嬉しくてこうなんですよ。とても嬉しくて・・・・。」

「確かに、たとえ今は内侍になったとはいえ、お前も厳然な男だったはず。男で生まれて酒の一杯も飲めなければ、それがどうして男と言えるのか。」

「ははは。そうでしょう。」

ラオンは大げさに笑うと、酒杯を強引に奪った。

このままこうして進まなければ何か疑いがもたれるかもしれない。そうだ。飲もう!これくらいちょっとのお酒を飲むだけなのがそんなに大変なことなの?

ラオンは一気に酒杯を口の中へと流し込んだ。たちまち、ひりひりとする香りが口の中いっぱいに広がり、ぴりっとした辛みが、首元へと染み込んだ。ところが・・・。

甘い?

思ったよりも、お酒の味が甘かった。舌先に残ったぴりっとした辛みもまずくはなかった。一気に酒杯を空けたラオンは、ヨンへともう一度腕を伸ばした。

「もう一杯ください!」

 

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遅くなりました☆

 

あと一頁分で次の章です~☆いってきま~す☆