君の深いところに響いている 25




まーくんってさ。

本当にあからさまだったよね。



会話の中で、オレが女の子に興味があるような言い方をしたら、すごくショックを受けたような顔してさ。



その日以来、まーくんはオレを避けるようになった。目も合わせてくんないの。



あれはひどかったな。



いろいろ悩んでるってのはわかってたけどさ、淋しかったし、哀しかった。




オレが同じ人種じゃないって思ったら、急に恋愛対象から外すって、ひどすぎない?



ああ、オレへの想いって、その程度だったんだって。



ヨコとかざぽんがすごく心配してさ。


オレに、何かあったのか、とか聞いてくるわけよ。



だからオレは、すっげえ哀しそうな顔して、まーくんからしばらく遊びに行けないって言われた、って言ってやった。



そしたら2人はすぐに動いてくれたみたいだね。


オレに告白するためにデートに誘ってくれて嬉しかったよ。



あの夜にしたキスは一生忘れない。

海の見える公園。

キラキラと輝く夜景。

オレの頬を撫でる潮風。

柔らかい唇の感触。

まーくんの温もり。



俺の気持ち知ってた? 


ってまーくんに聞かれた時、


どっちでもよかったかな


なんて答えたけど、



告白されて、抱きしめられて、キスして思ったよ。



この人を独占したいって。

オレだけのものにしたいって。

誰にも渡したくないって。



だって。



ずっと、ずっと、ずっと好きだったんだから。



初めて会った時からずっと。




自分の好きな人が、自分を好きになってくれる。



こんな幸福感を知ったら、もう離れられないよ。



初めて体を重ねた夜、すごくすごく幸せだったよ。



あなたから愛が伝わって来て、あったかくて大きなものに包み込まれているような気がした。オレもありったけの愛を伝えた。



それなのに、まーくんは、



でも、カズは自由だ、俺の愛でカズを縛るつもりはない、なんて言い出してさ。



何言ってんだろって思ったよ。



オレの気持ちなんて全然わかってなくてさ。



あなたを捕まえたのはオレの方。

オレの方なんだよ。

絶対に離さないんだから。



そう言ったら、まーくんも、オレのこと絶対に離さないって言ってくれたね。



あの日から、あなたは変わったね。

あの朝、窓辺に立って、朝日を浴びるあなたがすごく眩しくて、オレは目を細めた。


光の中に立つあなたの背中には、翼が見えたような気がした。



あれからまーくんは全然ヘタレなんかじゃなくなって、オレがまーくんを叱ったり励ましたりする必要もなくなった。


オレが、祈るような想いであなたの幸せを願う必要もなくなった。



オレが祈らなくても、心配しなくても、あなたはもう大丈夫だった。



昨日、水族館の近くの海辺をふたりで歩いて、海を眺めた時、あまりにもその景色がキレイで。


心から思ったよ。


ずっとあなたと、これから先もこんな風に、同じ景色を見たいって。


あなたとオレが見ている風景は、美しい世界そのもの。


あなたと一緒なら、世界は美しい。



帰りの車の中で、“愛し合う”っていうオレの表現が好きだって言ってくれたね。


オレも好きだよ。一方的じゃない感じが。



オレはあなたの守護天使にも、救世主にも、恩人にもなりたくないって言って来たけど、あなたはオレの守護天使で、救世主で、恩人だったと思う。



そう。オレたちは、お互いに救い、救われて来たんだ。



そしてお互いに恋をして、お互いに愛を知った。



その愛は、お互いの深い深いところに響いている。



内緒にしてたこと、知られたくないこと、いっぱいあったけど。


嘘ばっかりついてあなたに近づいたけど。


あなたを好き過ぎて、引かれちゃうようなこともいっぱいしたけど。




こんなオレでも、



あなたのそばにいてもいいですか?



そして。



あなたに、そばにいて欲しいです。