そうだ、雪が降っていた夢を見た。

寝室を出たところにある結露した窓から見えるぼやけた景色は妙に明るく、布団を出たばかりの霧がかった思考を彩っていた。時刻は分からないが、家族は皆寝床に就いているから深夜であるはずなのに外は明るく『もしかしたら雪が積もっているのかもしれない』という期待感を生み出して、私の手は自然とクレセント錠へと伸びていた。

外気は冷たかった。住宅街の雪景色なんて高が知れているだろうに、空から下りてくる牡丹雪とかろうじて道路が見えなくなる程度に積もった白は、私の心を捉えるに十分な景色だった。こんなに見慣れた場所だというのに、白く染っただけでなんだか感動してしまったんだ。

ーああ、外に行こう。

そう思ったところでその景色は途絶えてしまって、朝が来た。ベッド脇の窓をちらりと覗くと案の定、雪なんていなかった。