環境信者のEVシフトは不可能!

結論から言えば環境信者が夢想する2050年でのEVシフトはほぼ不可能と言って差し支えない。

環境信者が夢想するEVシフトは2150年でさえ達成できない可能性も十分にある。

当分の間は内燃機関は生き残ることになる。

 エネルギー密度の差

ガソリンは1lあたり36MJのエネルギーを有し、重量は0.783kgとなる。

対して一般的なリチウムイオン電池は1kgあたり430KJのエネルギーを有する。

つまり1kgあたりのエネルギー量が約100倍違うわけである。そしてそれが今後一気に10倍まで縮小する見込みは無い。

話題の全個体電池をもってしても無理である。

 

 単純効率

効率を計算するにあたって以下のパラメータ―を設定する。

補足するが各種パラメーターは計算しやすくするため現実の最新数値を反映しているわけでは無いことに注意してほしい。

 

モーター効率:80%

エンジン効率:40%

電力価格:25円/kWh

ガソリン価格:250円

 

同じエネルギーを得る場合においては電力もガソリンもほぼ同等でありコストに大きな差異は生じない。

しかし同じ駆動力を得る場合は電力とモーターの方がおよそ2倍優位になる。

これは重量制限のない工場動力で電力とモーターが主流になっている現状と合致する。

 

 増大因子

乗り物において軽ければ軽いほど効率が高くなることは体感的に理解できると思う。

義務教育で習う運動エネルギーは0.5×質量×速度(変化)^2なので質量が半分になればエネルギーは半分で済む、簡単なことだ。

軽いことは効率が高いと覚えてほしい。

 

ここで増大因子(Growth Factor)という言葉を紹介したい。

ある乗り物に対して航続距離を増やしたいとする。まずは燃料や電池を多く積む。そうするとフレームの強度が足りなくなるので補強する。重量が増える。増えた重量をカバーするためエンジンやモーターを強化する。さらに重量が増える。増加した重量で効率が減ったのでもっと多くの燃料や電池を積む。という堂々巡りが発生して雪だるま式に重量が増えていく事態が起こる。

これが増大因子である。

1kgの装備を追加するためにその十数倍の重量が増加するのは当たり前、重量制限の厳しい航空機に至っては数百倍という数値すらあり得るのだ。ただでさえ重い電池を追加すれば凄まじい勢いで効率が低下していくことになるわけだ。

結果として重量でハンデを持つEVはICE車と同じ性能を得ようとすると重くなり、非効率になり、高くなるわけだ。

 

だがこれを逆転させてみよう。

1kgの装備を削減すれば十数倍の重量を削減できるわけだ。結果、凄まじい勢いで効率は向上する。

太ったらダメならダイエット勝負だ。

 

 削れる物が多いEV

レシプロ内燃機関は原理上、無制限に小さく軽くできない。燃焼に耐えるシリンダーは頑健でなければならないし、容積が減れば冷却損失が拡大して効率が落ちる。排ガス浄化設備は省略できない。

対して電池とモーターは自在にサイズや出力を変えられる。手のひらの上に乗るようなホビードローンさえある。しかもモーターはサイズを変えても効率がさほど変動しない。

つまり特定の需要を満たす小さな乗り物においてEVは現時点でもICEに対して真正面から優位性を持っているのだ。

 

 セカンドカーのEVシフト

解決策は簡単である。従来の軽自動車が担っていたセカンドカーの需要を小型軽量高効率EVへ切り替えるのだ。

セカンドカーはその性質上、従来のICE車と組み合わせて運用する。それ故に全般的な需要をカバーする必要はない。

ターゲットは小さく軽く、高効率。削れる物は徹底的に削る。

乗員は2名、重量は500kg以下、最大速度70km/hで高速利用不可、バッテリーは10kWhで航続距離100km程度。

小さく軽いからフレームなどの製造コストは小さい、出力も軽自動車よりはるかに小さくて済むから安い汎用モーターが使える、バッテリー容量も小さいから電池コストも小さい。140万円切りは決して不可能な数値ではないだろう。

出先の充電設備の整備なんて必要ない。こんなEVで遠出なんてしない。長距離移動は組み合わせるICE車で行えば良い。

普段の充電は防水コードリールで100Vで充電すれば夜間8時間で実用レベルでカバーできる。

高い熱や圧力にさらされる部品は無いので車検は3年に1度で十分。収める重量税も軽いから安い。重いEVではない、むしろ一般的なICE車より軽いから道路へのダメージも少ないため走行税の導入理由も消滅する。

 

しかし、これでは普及はしないだろう。50万円を足して軽自動車にした方ができることが多いからだ。

だから二つの対策を打つ。

一つが軽自動車への車庫証明の追加だ。当初の目的である安価なファーストカーへの回帰である。

二つ目がセカンドEVへのコストメリットの追加だ。具体的には自動車税、軽自動車と同じマイクロカーの分類ではなく、新分類として8000~6000円に設定し、普通自動車と組み合わせて運用する場合は恒久免税とすることだ。

コストメリットが100万円を超えればセカンドEVは定着の可能性が見えてくる。

 

 財政への影響

セカンドEVが普及すればガソリン需要が収縮しガソリン税収は減ることは間違いない。だが並行して道路へのダメージが減少することで道路支出も減少する。同時に可処分所得が上昇し、海外への国富の流出が減少することは確実だ。一般財源化したガソリン税を使って景気対策するよりもこちらの方が国富の流出が少ない分だけ効果が高いことは明白だろう。

道路財政というミクロな視点では悪化が見られるが、日本経済というマクロな視点では良化にシフトする可能性は低くない。

 

 完全なEVシフトを仮定する

環境信者が夢想するEVシフトには革新的な新技術の実用化が必要だ。それは容易な物ではない。

過去を振り返ってみると一つ、革新的な新技術の実用化によって内燃機関を完全に捨て去った乗り物が存在する。

それこそが原子力潜水艦だ。

原子炉によってこの乗り物は内燃機関を捨て去り、海中で無限の航続距離を得た。

 

それに倣うなら内燃機関の脱却は革新的な原子力電池の実用化かもしれない。

重量200kgで3kWの電力を化石燃料と同等以下のコストで20年発電し続けられるなら内燃機関を完全に駆逐することも夢ではないだろう。それが21世紀中に実用化できるかは神様のみが知っている。