アメリカ横断日記 Episode 42 ~Luckey Quarter~



Luckey Quarter:幸運の25セント硬貨
スティーブン・キングの短編小説
ベッドの枕に置かれた封筒
中には祝福の手紙
「君はついてるな!」
と25セント硬貨
チップとも呼べない少額すぎるそのコインが
ホテルのメイドにもたらした幸運とは…

聡明な方ならお気付きかもしれないが
幸運:Luckyであり
Luckeyはスペル違いなのである
だがこれは原作者S・キングが好む
嗜好のアナグラムになっているのだ

Lack:従者、召使、欠如、へつらい
このLackの形容詞が
Lackey:欠如した
という意味を持ち
小説内でこれらの意味が複雑にストーリーを構成する

Lackey:欠如した
Lucky:幸運の
との造語で
『Luckey』となるのだ
決して私のスペルミスではありません

S・キング:アメリカの小説家
ジャンルはホラーであるにもかかわらず
舞台は主にアメリカのごく平凡な町で
具体的な固有名詞をはじめとした
詳細な日常描写を執拗に行うのが特徴
しかし代表作には
「スタンド・バイ・ミー」
「シャイニング」
「ショーシャンクの空に」
「グリーンマイル」
といったホラー要素の少ない作品がヒットしているが
あくまで大ドンデン返しを好む
時に万人受けしない
非商業的作品もあるが
それもファンにとっては
S・キングらしい作品なのである

今Episodeの〆で
実質的に帰路へと舞台は進みます
崩壊したWTCの跡地に
もっと高いタワーを建てるという
何とも
「馬鹿が付くほどの負けず嫌い」
な国民的発想…

そのWTC跡地で
ライダーブーツに古焼けたジーンズ
黒いベロアジャケットを身に纏った
ひとりの「馬鹿が付くほどの負けず嫌い」な日本人は
大きく振りかぶって
日本とアメリカの
2枚のコインを
誰よりも遠くへ投げ入れます
どこまでも澄んだ青空に
放物線を描き
はためかせたジャケットの裾が
その後姿を映えさせます
大都会マンハッタンの中心地
ウォール街で見えるはずのない
青い空を背景にして…

最後になりましたが
これがタイトルの由来です
この「コイン」です
アメリカの硬貨
¢25
これが
『幸福の25セント硬貨』
の意味を持ちます

『鷲が刻まれた白銅と
桜が刻まれた白銅を握り締める・・・・。
もう掌は痛くない。
ここで握った金網の痺れはもうない。
「馬鹿が付く程の負けず嫌い」が
力いっぱい投げたコインは
誰が投げたコインよりも遠くに消えていったんだ…。』